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昇給額が少なくなった新賃金制度は不利益変更になるでしょうか

現在、数名の社員から新賃金制度で昇給額が旧制度よりも減ったのは、不利益変更ではないか、ということを言われており、どのように回答することが適切か悩んでおり、質問させて頂きました。

まず背景を説明させて頂きます。

弊社は、決算期は1~12月、社員数が約200人の会社で、不満を言っているのは、勤続年数が10年以上のベテラン社員数名です。

弊社は昨年度(2012年1月~12月)に等級制度、評価制度、賃金制度を改定しました。
等級制度の改定は、各等級の役割定義を実態に合わせた上で、呼称を変えただけで、
等級の段階数は変更なく、全社員は旧制度と同じ等級に移行しています。この際、月例給、賞与ともに旧制度と同じ額で移行しており、この点では不利益変更になることはないと考えております。

次に、評価制度は、評価項目と評価基準を改定し、より適切な評価ができるようにしました。ここでいう適切とは、旧制度では、全社員がB評価(標準)を取り、C評価がつくことがなかった為、メリハリのある制度運用を目指し改定しました。
その結果、2012年度は、ここ数年出ていなかったC評価の社員がでました。ちなみに、不満を言っているのは、このC評価となった社員です。

次に、賃金制度は、今の安定志向から脱却し、全社員が自分が成長することに対して、今以上に挑戦することを促すために、B評価(標準)の際の昇給は旧制度並としつつ、A評価では旧制度以上の昇給額、C評価では旧制度以下の昇給額としました。C評価は昇給なしという意見も社内にありましたが、それはやりすぎということで、額は減らすが昇給させる、ということで決定しました。

そして、昨年度の評価が1月に確定し、賃金改定を3月に予定しています。
当然、新制度に移行した後ですので、評価結果に対する昇給額も新制度を適用することを考えていまいた。
ところが、前述のC評価となった社員から、旧制度では昇給が3000円あったにもかかわらず、今回1200円に下がったのは、不利益変更ではないのか。新制度は会社が言ってきたことで、自分は新制度とすることを了解したわけではない。個別の同意もないのに、旧制度ではもらえるはずだった昇給額がもらえないのは不当だと不満を言ってきています。

確かに個別の同意書はありませんが、全社員への説明会は行なっており、社員代表との合意も得ています。会社としては、対応に問題なく、昨年度の評価に対する昇給額は新制度を適用すべきと考えています。

しかし、相手もそれなりに勉強してきているようで、制度移行直後は現行並みに調整すべきという事例を持って話しをしています。
(実は、どちらかというと、C評価をつけた上司との関係がこじれていることがきっかけで、不満を言っている面も強いようなのですが・・・)

長くなりましたが、皆さんのお知恵を借りたい点は、弊社のように昨年度評価制度、賃金制度を改定して導入した場合で、昨年度の評価結果に対して、新賃金制度の昇給額を適用することは、貰える額が減ったということで不利益変更になるのでしょうか。
・もともと本人がもらっていた賃金を減らしているわけではありません。
・賃金を下げているわけでもなく、額は少なくなりましたが昇給はします。
・本人がB評価であれば旧制度並、A評価なら旧制度以上に昇給するチャンスはあります。
これでも不利益変更だとして、移行直後は、旧制度並の昇給をしてあげないといけないのでしょうか。

皆様、よろしくお願い致します。

投稿日:2013/02/15 16:19 ID:QA-0053355

新米人担さん
神奈川県/情報処理・ソフトウェア(企業規模 101~300人)

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プロフェッショナル・人事会員からの回答

全回答3

プロフェッショナルからの回答

服部 康一
服部 康一
服部賃金労務サポートオフィス代表

お答えいたします

ご利用頂き有難うございます。

御相談の件ですが、現行給与より減額がなくとも、旧制度よりも同じ評価ランクで比較した際昇給額が減る場合にはやはり労働条件の不利益変更となります。これまでつけられることがなかったC評価になったことで昇給額が減ったのであれば問題ございませんが、同じC評価であるにもかかわらず新制度の方が昇給額が少ないということですので、不利益な条件となることは明らかです。

しかしながら、御社の変更内容を拝見しますと、給与自体の減額が無い事及び評価内容によっては旧制度を上回る場合がある事に加えまして、労使間できちんと協議もされているとの事ですので、労働契約法第10条「使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。」に該当する可能性が十分にあるものと考えられます。

従いまして、労働条件の不利益変更であっても従業員全員の個別同意を必要とする程の重大性は無いものと通常考えられるでしょう。

但し、御社事情の詳細を知りえないこの場で確答までは出来かねますので、対応に不安があるようでしたらお近くの弁護士または社労士等で労務問題に精通した専門家に直接御相談された上で解決を図られることをお勧めいたします。

投稿日:2013/02/15 21:44 ID:QA-0053368

相談者より

服部様

早速のご回答ありがとうございます。
丁寧で分かりやすく、大変参考になりました。

もう2点ほどお伺いしてもよろしいでしょうか。
詳細な説明が無い中での質問で、誠に恐縮ですがお教えいただけると幸いです。

1.つくことがなかったC評価、なのですが、
  評価者の評価スキルが問題で、今まで高ぶれしていた評価が、
  評価者が変わった、評価者が再教育を受けて正しく評価をするようになった
  基準を明確にして、評価者が誤解なく正しく評価できるようになった
  場合でも、同じ程度の実績でB評価がC評価になっても、
  会社としては合理的な説明にはならないものでしょうか。
  明らかに今までの評価が間違っていた(高ぶれしていた)というケースも
  あるためです。

2.不利益変更とならない為に、一次的な対応をとる場合ですが、
  初年度だけ、C評価であっても、昇給額を旧制度なみにしてあげてはどうか、
  という一部の部長層からの意見があります。対症療法的には有りかもしれませんが、
  2年目以降のC評価の社員はどうするんだ、という話が残りますし、
  では、初年度のC評価には調整給扱いで、2年くらいは旧制度との差分を払えば、
  というアイデアも、数年後には差分を払わなくなるため、本人は”減った”気分になるとおもいます。
  上記のような、初年度は旧制度と同じ昇給額にしてあげる、または数年は差分を払ってあげる、という対応は、妥当なものでしょうか。それとも、後にC評価となった社員との不公平が生じるので、別の不利益変更を生じさせるものになるのでしょうか。

想定される範囲で結構ですので、ご助言いただきたく、
何卒、よろしくお願いいたします。

投稿日:2013/02/16 11:20 ID:QA-0053375大変参考になった

回答が参考になった 0

プロフェッショナルからの回答

服部 康一
服部 康一
服部賃金労務サポートオフィス代表

再度お答えいたします

こちらこそご返事頂きまして有難うございます。

ご質問の件ですが、前回も申し上げました通り、今回の制度変更の場合ですとどのような経緯があったとしましても、またどのような措置を取られましても不利益変更という事実自体に変わりはございません。

但し、これも先に回答させていただきましたが制度全体の工夫や労使間での協議等によって、たとえ不利益変更であっても合理性があるものとされ従業員の個別同意無くしても法的に認められる場合があるということです。その判断については個別具体的な詳細事情も踏まえないといけませんので、現場を見ていないこの場で確答までは出来かねるということになります。

その上で申し上げるとしますと、1につきましては合理性を高める理由にはなりえるものといえるでしょう。ただそれだけで十分であるとまでは断言できませんし、あくまで労働契約法第10条に示されているような他の要素も含めた総合的な判断となります。

そして、2につきましても調整措置を取ることで不利益の緩和につながるものといえます。(※繰り返しになりますが、不利益変更自体がなくなるわけではありません)調整措置が無くなった時点で減った気分になるのはその通りでしょうが、そうした感情的な議論よりも現時点での不利益を緩和する方策を採る事の方が合理性を高める上で法的には重要な事柄といえます。まじて調整措置が無くなった為に新たに不利益変更が発生する等ということにはなりえません。それ故、こうした減給分の一定のカバーは前向きに行われるべきというのが私共の見解になります。

投稿日:2013/02/16 12:00 ID:QA-0053376

相談者より

ご回答ありがとうございます。大変助かります。

調整給の必要性、支払う方が良いメリットなど理解することができました。
ありがとうございます。

恥ずかしながら、制度変更はもちろんですが、
きっかけは本人とその上司の関係にあるところも大きいので、
調整給の必要性を見極めつつ、総合的に見て全社員にとって公平性が
保てるような対応を考えて行きたいと思います。

法的根拠やリスクについて、服部様のご回答でよく理解出来ました。
ありがとうございました。

投稿日:2013/02/17 10:09 ID:QA-0053388大変参考になった

回答が参考になった 0

プロフェッショナルからの回答

小高 東
小高 東
東 社会保険労務士事務所 代表(特定社会保険労務士) 

ご質問の件

ご質問の件は、文面を拝見する限る、合理的な変更であり、評価についても問題ないであろうとうのが、見解です。
賃金制度改定により、判例で不利益とされるケースは、特段評価はかわらないのに、一方的に基本給が15%下がったなどの場合です。
また、説明会も開催しており、労働者の被る不利益の程度についても、200人中、唯一不満を言っている社員についても1500円アップしているわけですから、(本人は3000円のつもりですが)ほぼないといえます。
C評価について、決して恣意的ではなく、正当に評価したものであれば、そのことを本人に伝え会社は毅然とした態度をとるべきと思われます。

投稿日:2013/02/16 17:16 ID:QA-0053381

相談者より

小高様

御回答有り難うございます。
心強いご助言、大変助かります。

説明会は行なっているものの、特別個別の同意を確認しているわけではないのが、
会社としても、少し弱みを感じている点ではあります。
もちろん、その場で質問を受け付けたり、疑問・不満がある時は遠慮なく、
問い合わせるようには言っているのですが。。。

評価が適切に行われているものであることが、きちんと説明できることも
大事なことだと思いますので、そこをしっかりできるように、
評価者への教育も行なって行きたいと思います。

ありがとうございました。

投稿日:2013/02/17 10:12 ID:QA-0053389参考になった

回答が参考になった 0

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