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『労政時報』調査記事
「人口減少」と「団塊の世代の大量定年」は
企業の人事戦略にどのような影響を与えるか?

国立社会保障・人口問題研究所の2002年1月の推計では、日本の総人口は「2006年をピークに減少していく」と見込まれています。しかし昨年8月に発表された厚生労働省の「人口動態推計」(2005年上半期)では、統計開始以来、初めて減少を示し、もうすでに日本の人口が減少し始めているという可能性も出てきました。しかも、2007年からは「団塊の世代」が定年退職を迎え始めることになり、大挙して職場を去っていく事態も起きます。このような「人口減少時代」の到来は、企業の人事戦略にどのような影響を与えるでしょうか。その影響を食い止めるために企業はどんな対策を講じているのか。昨年7月から8月にかけて労務行政研究所が行った調査から探ってみます(注参照)。

約70%の企業が「人事戦略に影響あり」と懸念している

団塊の世代と呼ばれるのは1947~49年に生まれた805万7000人。2000年の国勢調査でも688万6000人、全人口の5.4%にあたりますが、現在、企業の正社員の中ではどれくらいの割合を占めているのでしょうか。

今回の調査に回答した企業のうち、94.7%の企業が「団塊の世代の正社員がいる」と回答しました。そうした企業に、正社員に団塊の世代が占める割合を尋ねたところ(図(1)参照)、「5~10%未満」が最も多く35.0%。次いで「0~5%未満」が34.2%、「10~15%未満」が19.7%となっています。平均すると、「正社員の7.9%が団塊世代」という結果になりました。

図(1) 「団塊の世代」の正社員はどれくらいいるのか?


表(2) 「自己申告制度」を導入したのはいつ?
表(1) 「団塊の世代」の正社員はどれくらいいるのか?
0~5%未満
5~10 〃
10~15 〃
15~20 〃
20~25 〃
25~30 〃
30%以上

それだけの割合を占める団塊世代が来年から退職し始め、また日本の全人口も減少していくとなると、これから企業の人事面に影響が出ることはないでしょうか。

図(2)をごらんください。これは「人口減少・大量定年時代」の到来によって、「自社の人事戦略上に懸念される問題があるか」を尋ねた結果ですが、懸念される問題が「あり」とする企業が67.2%と7割近くに上っています。その一方で、「なし」は20.6%にとどまっています。

図(2) 人事戦略で懸念される問題はあるか?


表(2) 人事戦略で懸念される問題はあるか?


この結果を詳しく、回答企業の規模別に見てみると、規模が大きいほど、問題が「あり」とする回答割合が高くなっています。「1000人以上」では77.6%の企業で「あり」としているのに対し、「300人未満」では52.4%にとどまりました。逆に、「300人未満」では、問題が「なし」とする企業が31.0%と3割を超えています。

定年延長や再雇用で「人材の確保」の問題に対処している

人口減少と団塊世代の大量退職によって、人事戦略上「問題があり」とする企業は、具体的にどの分野に問題が出てくると懸念しているのでしょうか。

図(3)をごらんください。ほとんどの企業(90.9%)が挙げているのが「人材の確保・活用」の分野です。「技能伝承への対応」(60.2%)がこれに続き、そのほかの具体的な各分野でも、半数前後の企業が問題を認識しています。

図(3) 人事戦略でどんな問題が懸念されているか?(複数回答)


表(2) 「自己申告制度」を導入したのはいつ?
表(3) 人事戦略でどんな問題が懸念されているか?(複数回答)
人材の確保・活用
(人材不足への対応)
若年労働者の定着率アップ
技能伝承への対応
処遇制度の見直し
就業環境の見直しその他
その他

では、そのような問題の分野について、企業はどのような対応策を講じているのでしょうか。

図(4)をごらんください。これは、問題が「人材の確保・活用」の分野の対応策(もしくは基本的な方向)ですが、その中でも「定年延長や再雇用で高年齢者を活用」が77.5%と、最も多くなっています。「中途採用を増やす」(56.3%)、「新卒採用を増やす」(47.5%)が続き、これらの3つの対応策を講じる企業が目立っています。

図(4) 「人材の確保・活用」の問題への対応策(複数回答)


表(2) 「自己申告制度」を導入したのはいつ?
表(4) 「人材の確保・活用」の問題への対応策(複数回答)
新卒採用を増やす
中途採用を増やす
女性社員の活用
障害者の活用
定年延長や再雇用で高年齢者を活用
派遣・パートなど非正社員の活用
外国人の活用
業務の外注化で対応
労働生産性の向上・ 作業能率低下の防止
その他

「女性社員の活用」の対応策を講じている企業は28.7%です。しかし面白いのは、「1000人未満」でこの対応策を講じている企業が2割弱にとどまるのに対し、「1000人以上」になると4割を超えています。同様に、「派遣・パートなど非正規社員の活用」の対応策を講じる企業は33.8%です。でも、「300人未満」でこの対応策を講じている企業が1割程度にとどまるのに対し、「300人以上」の企業では3~4割以上となっています。

「技能伝承」への対応策は熟練者を引き留めること

では、問題が「技能伝承への対応」の場合の対応策(もしくは基本的な方向)はどうでしょうか。図(5)をごらんください。 圧倒的に多い対応策は「熟練技能者を定年延長・再雇用などにより継続雇用」することで、84.9%の企業がこの策を考えています。次いで「伝承すべき技能・ノウハウの文書化・データベース化」(41.5%)となっています。

図(5) 「技能継承」の問題への対応策(複数回答)


表(5) 「技能継承」の問題への対応策(複数回答)
表(2) 「自己申告制度」を導入したのはいつ?
熟練技能者を定年延長・
再雇用などにより継続雇用
伝承すべき技能・ノウハウの
文書化・データベース化
有望な若年技能者の選抜教育
高度技能・ノウハウが
不要になるよう製造工程などを変更
高度技能者の処遇の充実
その他
わからない

問題が「処遇制度の見直し」の場合は、「賃金制度の見直し」(70.2%)、「退職金・年金制度の見直し」(61.7%)を挙げる回答が目立っています(図(6)参照)。また、「組織のフラット化」を講じる企業は31.9%ですが、詳しく見ると、企業の規模が大きいほど回答の割合が高くなっています。1000人以上の企業で「組織のフラット化」の対応をするところは47.6%。しかし300~999人の企業では25.0%、300人未満の企業では10.0%です。

図(6) 「処遇制度の見直し」の問題への対応策(複数回答)


表(2) 「自己申告制度」を導入したのはいつ?
表(6) 「処遇制度の見直し」の問題への対応策(複数回答)
賃金制度の見直し
組織のフラット化
(組織体系や等級制度の見直し)
役職定年制の廃止・見直し
退職金・年金制度の見直し
福利厚生制度の見直し
その他
わからない

注)
ここでは、労務行政研究所が2005年7月29日から8月19日にかけて、企業の実務担当者を対象に行ったメール調査の結果を基にして、「日本の人事部」編集部が記事を作成しました。同調査は「人口減少・大量定年時代が人事戦略に与える影響」と題されたもので、より詳細な内容は同研究所発行の『労政時報 第3666号』(2005年11月25日)に掲載されています。
同調査の回答数131人(回答率14.3%)。回答は1社につき1人。集計に当たっては便宜上、「人」ではなく「社」で表記しています。
図(1)(2)『労政時報 第3666号』に掲載のものを転載させていただきました。また図(3)(4)(5)(6)は、調査結果を基に「日本の人事部」編集部が作成しました。

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