失敗できない人材採用
企業の選考基準は「学歴重視」に――?
景気不透明な時代の採用事情 中途採用でも「学歴重視」になってしまう

ベテランの選考も、まず「学歴」でふるいにかける

企業の「学歴重視」は、若手に対してだけかというと、そうでもないようだ。

「書類選考の結果、不採用のご連絡をいただいたNさんですが、貴社で求められている経験をほぼすべてお持ちの人材です。どこに問題があったのでしょうか」

年齢不問で経理マネジャーを求めるY社の募集。かなり自信を持って推薦したNさんだったが、あっさり書類選考で不合格になってしまった。思わず、不採用の理由を知りたくて電話をしてしまったのだった。

「たしかにご経験はぴったりなんです。職務経歴書を拝見して、私もすぐにそう思いました。ただ…」とY社の採用担当者。

「ただ…?」

「年齢不問で募集を行っていることもあって、他にも優秀な方が集まってきているんです。面接に進む方だけでも10人近くいそうです。それが、全員Nさんと同じくらいのご経験を持つ『大卒』の方なんです」

Nさんは、キャリアは充実していたが、学歴という面では高校卒業後、簿記の専門学校に1年間通っていただけだ。文字通り現場での叩き上げである。しかし、最新の会計の動向についてもよく勉強しており、Y社の仕事も十分に行えると踏んだのだが…。

「中高年も含めた募集になると、経験豊富な方の応募がとても多いんです。それ自体はありがたい話なのですが、面接を行う役員などの負担も減らさなくてはなりません。ですから、最終選考に進む可能性が低いと思われる方は書類選考でお断りしているのが現状です」

年齢不問の募集は、中途採用全体の中でも数が限られているので、キャリアのある人材が集中してしまうのは事実だ。優秀な人材が多く集まれば、その中から最終面接に進む候補者を選ぶのは難しいだろう。そんな時、学歴は、候補者をふるいにかける上でひとつの基準になっているのだ。

しかし考えてみれば、若手でもベテランでも、学歴を選考基準として重視するということは、人物やキャリア本位の選考をきちんと行う能力が企業にないことを自ら告白しているようなものではないだろうか。

厳選採用が定着したことによって、採用はますます失敗が許されないものになりつつある。「間違いのない選考基準」として学歴が重視されるのは、採用が保守的になってきているからかもしれないな…と私は思った。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「人事辞典「HRペディア」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。

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