失敗できない人材採用
企業の選考基準は「学歴重視」に――?
景気不透明な時代の採用事情 中途採用でも「学歴重視」になってしまう
中途採用の場合、学歴よりもキャリアを重視した選考が行われるというイメージが強い。キャリアに差がついていて当然の中途採用では、即戦力となれる実力の有無こそが最大の評価ポイントになると考えるのはごく自然なことだろう。しかし、最近の書類選考の結果を見ていると「学歴でふるいをかけているのでは?」としか思えないことがよくある。景気の先行きが見えない中、採用も保守的になってきているのだろうか。
上位校出身=ハイポテンシャル?
「このたびは候補者を推薦していただき、ありがとうございました。書類選考を行いましたので、その結果をご連絡申し上げます」
A社から送られてきた書類選考の結果を告げるメールを見て、私は思わず「やっぱりそうなるのか」とつぶやいていた。社会人経験が少なくてもいいという、いわゆる第二新卒も含む層の営業職募集。数名の候補者の資料を見てもらったのだが、書類選考の結果は、有名大学卒の人材がすべて合格、それ以外の大学の出身者はすべて不合格になっていたからだ。
「これまでのご経験などを総合的に判断し…」
選考理由は漠然としか書いてないが、キャリアといっても3、4年しかない人材ばかりを紹介しているので、そう大きな違いがあるわけでもない。前職も大体同じくらいのレベルの企業であり、大企業や有名企業に勤務していたという人材もいない。
「やはり学歴は、選考時に重視されるポイントなのでしょうか」
同じような選考結果が何度か続いたので、私はA社が人材紹介会社向けに開いた募集内容の説明会で、そんな質問をぶつけてみた。
「それだけがすべてではないのですが…」とA社の採用担当者。「結果的に学歴重視になっている現状は否定できません」
同席していた他の人材紹介会社の担当者も「やっぱりそうなのか」といった表情で話を聞いている。
「ご存知だと思いますが、少子化と大学進学率の上昇が同時に進んだ結果、大学生全体の学力が落ちてきています。弊社で募集している若手営業職の場合、社会人になってからの経験値にはあまり差がありませんので、少しでもポテンシャルの高そうな人材、つまり上位校出身者を中心に選抜を進める傾向があります」
景気の先行きが不透明ということもあり、採用数を最小限に絞り込む「厳選採用」が一般的だ。余裕がないから失敗できないという配慮も働くのだろう。
「もちろん、上位校出身でなくても、社会人になってからの実績が素晴らしい人材がいれば、ぜひご紹介ください。別枠で検討いたします」
そう言われても、入社3、4年で華々しい実績をあげるのは、ごく一部のベンチャー企業ぐらいでしか無理な話。ベンチャーで働くような人材は、もともと大手企業とは方向性が違う。