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キーパーソンが語る“人と組織”

障がい者雇用をはじめとした、
アイエスエフネットが目指す「20大雇用」とは?[1/3ページ]

渡邉 幸義さん

アイエスエフネット代表取締役

株式会社アイエスエフネットは、障がい者やニート、フリーター、高齢者など、働くことに制限のある人々の労働環境を整備していることで知られています。人はそれぞれ、何か「長所」や「強み」を持っていますが、それは働くことに制限のある人たちも同様。同社では、そういった人たちが安心して働ける環境を創造し、その力を十分に引き出していくために、さまざまな取り組みを行っています。人事部にとって関心の高い「障がい者雇用」を中心に、アイエスエフネットが目指している「20大雇用」について、代表取締役・渡邉幸義氏に詳しくお話をうかがいました。


Profile
わたなべ・ゆきよし●1963年静岡県沼津市生まれ。武蔵工業大学(現:東京都市大学)卒業後、日本ディジタルイクイップメント株式会社(現:日本ヒューレット・パッカード株式会社)へ入社。2000年、株式会社アイエスエフネットを創業する。雇用の創造を大義に掲げ、「10大雇用」のもとにニート・フリーター、障がい者、育児や介護従事者、引きこもり、シニア、ボーダーライン(軽度な障がい者で障がい者手帳不所持の方)、DV被害者、難民、ホームレスなど、就労困難者の雇用に積極的に取り組みつつ、利益を上げ続けている。さらに2011年11月より雇用対象を、性同一性障がいの方、犯罪歴のある方、若年性認知症の方など、「20大雇用」へと拡大した。社員数は創業11年で、グループ全体で2000人を突破、全国に19拠点、海外に6ヵ国展開している。著書に『「未来ノート」で道は開ける!』『社員みんながやさしくなった~障がい者が入社してくれて変わったこと~』『社長のメモ』『会社は家族、社長は親(坂本光司氏との共著)』などがある。
『会社は家族、社長は親』



障がい者雇用を始めたきっかけ

「履歴書」を見ないで採用する理由

―― アイエスエフネットを創業されたのは、どのような経緯からですか。

現在、2020年までに障がい者雇用1000人の目標を掲げていますが、これは当社のビジネスモデルであるネットワークエンジニア活用がフィットしたためです。ネットワークがアナログからデジタルに移行したことで、背景となる技術も大きく変わっていきました。ネットワークで世界中が結び付き、その技術を支えるエンジニアが必要となる時代が来るだろうという仮説を立て、2000年にアイエスエフネットを創業しました。しかし、当時はデジタルのネットワークを支えるエンジニアが日本にほとんどいませんでした。「いなければ、作るしかない」という発想でビジネスモデルを考えたわけですが、ネットワークエンジニア市場の需要と供給のバランスを取ろうとして作ったのが、誰でもやる気があればネットワークエンジニアになれる仕組みです。そして5年後には、1000人規模の会社となりました。

―― 当初から「履歴書」を見ないで採用していたそうですね。

なぜ、そんな無謀なことをしたのかというと、新しい技術であるため、求められるスキルの変化も速いからです。今までのスキルがあまり必要でなければ、履歴書は有用ではありません。それよりも本人の未来に対するコミットメント、やる気を見抜くことのほうが重要です。直接本人と会い、やる気があって、私がこれだ!と思う人を採用してきました。その結果分かったことは、履歴書と入社後の本人の成長には関連性がほとんどないということ。現在でも履歴書は見ませんし、興味もありません。

実は、採用後に一人ひとりをいろいろとフォローしていく中で、「あなたは非常に優秀だけれども、いったいどこの出身なの?」と聞くと、「私は引きこもりでした」「フリーターをやっていました」という人が結構多いことがわかりました。

私は、お客様や一緒に働く社員・部下たちに評価される人間こそ、本物だと思っています。お客様や社員・部下のために汗をかける人間です。彼らには、苦労した体験を持っているという共通項があります。人の痛みが分かるのです。だから、その人が引きこもりやフリーターだったとしても、関係はありません。人を思いやる気持ちがあって、行動できる人が重要なのです。実際、そうした人が集まった組織の結束力は、半端ではなく強いのです。当社の場合、誰かが病気になった時には、家に花束と手紙を持って持参するような人間ばかりです。このような社員の行動を目の当たりにした時、就労に困難を伴う人こそ最優先して採用すべきだと思ったのです。

その段階で分かったのが、当社の約30%が就労困難者であったということ。ニート・フリーター、障がい者、ワーキングプアの方、引きこもり、シニアの方などです。

―― その時、渡邉さんに「スイッチ」が入ったのですね。

世間的に就労困難と言われている人たちこそ、当社には必要な人材である。そういう人たちを積極的に採用し、活用していくことに社会的意義が存在する、ということを確信しました。

実際、当社では大変バラエティーに富んだ人たちがいます。一緒に仕事をしていくと、それぞれに個性や特技があって、非常に楽しい。何より、いろいろな人が一つの会社にいたほうが、新たな発想が生まれやすいし、お互いに助け合う仕組みも出来てくる。こういう事実を、履歴書を見ないで採用した後、私自身の体で覚えました。

今では、障がい者をはじめとして、就労に困難な人たちを意識して採用しています。そして、高い給料を払っています。なぜなら、彼らはやる気に満ちていて、チームワークに優れ、当社にとても貢献してくれているからです。


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