新卒採用がますます激化する昨今、多くの企業が「内定者フォロー」に力を注いでいます。内定者の辞退防止や入社後の成長・定着へつなげることを目的としていますが、どのような方針で、どんな施策を行えば良いのかに悩んでいる企業も多いようです。そこで今回は、「GLOBIS 学び放題」を活用し、内定者に自律的な学びの機会を提供することで、成果を上げている三菱UFJ信託銀行の取り組みにフォーカス。同社が「内定者フォロー」を重視する理由や「GLOBIS 学び放題」の導入背景、その効果などを人事部採用・キャリアグループの設樂美帆さんと本山早葵さんにうかがいました。
モチベーションアップと教育の二軸で「内定者フォロー」に取り組む
まずは、お二人の業務内容をお教えください。
設樂:私は採用・キャリアグループに所属し、人財育成・研修を担当しています。職位・階層別研修のほか、自己啓発研修や各種資格の取得支援などの企画・運営を行っています。
本山:私も採用・キャリアグループに所属し、採用業務を担当しています。内定者の入社までのサポートを主に担当しており入社に向けた事務手続きや内定者研修を企画・推進しています。
貴社の「内定者フォロー」の目的や方針についてお聞かせください。
本山:主な目的は二つあります。一つは、当社に入社するにあたってのモチベーションを高めること。もう一つは、入社後スムーズに第一歩を踏み始められるよう、その下準備・マインドセットを内定者のうちに行ってもらうことです。この二軸で動いています。
「内定者フォロー」は、以前から積極的に行ってきました。社員になる大切な方たちなので、手厚く、期待を込めて取り組みを進めています。特に近年は、就職活動の開始時期がどんどん前倒しになっています。その分、入社までの期間が長くなり、学生は緊張感を維持するのが難しい状況です。定期的に様子を見ながら、しっかりとフォローするように配慮しています。
昨今では、内定を辞退する学生が増えているというニュースも見聞きします。内定者のモチベーションを上げることで当社へ入ることへの期待を高められれば、辞退を防止できるという思いもあります。
どのような「内定者フォロー」施策を行っているのでしょうか。
本山:外部の事業会社との連携では、三つの施策を進めています。「GLOBIS 学び放題」とPCスクールへの通学支援、オンライン英会話サービスです。例年、PCスキルと英会話を学びたいという内定者からの声は多いため、PCスクールへの通学支援、オンライン英会話サービスに関しては、かなり前から取り組んでいます。
これらと並行して、社内施策も二つあります。一つは、内定者プロジェクト。内定者が社会人になる前に、働き方の基本を疑似体験する企画です。参加者を公募し、チームに分かれて、当社の採用活動における自社イベントの一部を企画したり、次の就活生に向けた動画制作を行ってもらったりしています。内定者同士の関係を築く機会にもなっており、今年は80人以上が参加してくれました。
もう一つは、入社前フォローアップ研修です。昨年からオンラインで実施しています。入社目前となるタイミングで内定者が不安に思っていることを共有しあうとともに、入社後に研修を担当する講師がチームに入り社会人の先輩としてビジネスマナーなどをアドバイスすることで、不安を解消しています。
内定者や社員の学ぶ意欲に応える最適なプラットフォームと判断
なぜ、内定者フォローに「GLOBIS 学び放題」を導入されたのでしょうか。
本山:2019年12月に「GLOBIS 学び放題 フレッシャーズ」という内定者向けのeラーニングサービスを初めて(※「GLOBIS 学び放題 フレッシャーズ」は、現在は「GLOBIS 学び放題」に統合されている)導入しました。それまでは、内定者には課題図書として、信託銀行の役割や業務を学ぶ『信託入門』と、社会人としての基本的なビジネスマナーを理解する『ビジネスマナーパスポート』、『数字練習帳』の三点をセットで渡していました。ただ、意欲的に読んでいるか、内容を理解できているのかを、把握しづらい面がありました。
この課題を解決したいと思っていたときに、グロービスから提案されたのが「フレッシャーズ」でした。誰がどのコンテンツをどれくらいのペースで視聴しているかが全てわかるとのことだったので、それを基に人事としてサポートの計画を立案できると考え、導入することを決めました。
加えて、何でもスマートフォンで情報を収集する時代になったことも、導入の背景にありました。それまでもパソコンを活用した社内研修はありましたが、「フレッシャーズ」であれば常時持ち歩けるスマートフォンを使って、いつでもどこでも受講できるので、メリットは大きいと判断しました。
設樂:当社では、社員の自律的なキャリア形成を支援しています。その意味でも、多様なコンテンツの中から自分に必要なものを選んで受講できるプラットフォームであることは、当社の人財育成のスタンスにフィットしていたと思います。
本山:内定者の興味がある範囲や、「ここを伸ばしたい」という分野は多様です。また、当社の業務の幅はかなり広く、金融とひとくくりに言っても、部署によって仕事内容は大きく異なります。「GLOBIS 学び放題」はコンテンツが豊富なので、それぞれの部署で必要な知識やスキルを学べることに加え、本人の意欲次第でさらに多くのことを学べるという点で、最適なサービスだと判断しました。
内定者に研修機会を提供する重要性についてもお聞かせください。
本山:入社した後は業務の習得や、資格取得に多くの時間を取られてしまいます。その準備のため、比較的余裕がある内定者の時間を使わない手はありません。内定者のうちから入社後の資格取得に前倒して取り組んでもらいたいと考え、研修機会を提供しています。
21年度からは全社員への公募施策においても「GLOBIS 学び放題」を導入されているとのことですが、内定者以外にも導入しようとお考えになった理由をお聞かせください。
設樂:社内でも、もともと多くの研修を行っていますが、業務知識やスキルの習得を目的としたり、職位・階層別研修のように役割理解を目的としたりするものがメインとなります。変化のスピードが加速するいま、ビジネススキルを幅広く学んだり、世の中の動きを知り知見を広げたりすることも重要だと考え、コンテンツの幅が広く、いつでも自由に学べる「GLOBIS 学び放題」を2021年4月から導入しました。
また、当時、社内でもそうしたニーズは寄せられていたので導入の反響は大きく、初回は約1,000人が受講しました。
内定者の興味や不安に合わせてコンテンツをアレンジ
コンテンツの相対表を基に、「カスタムラーニングパス」を作成されたそうですが、その狙いやプロセスについてお聞かせください。また、内定者それぞれに合わせたコンテンツをどのように選定されているのでしょうか。
本山:グロービスが新入社員や若手社員向けに設定しているラーニングパス(目的別にパッケージ化したコース群の総称)は、社会人の第一歩として学んでほしいことが網羅されているので、素晴らしいと思います。まずは、それらを基礎要件として受講してほしいのですが、それに加えて、その年の内定者に合ったものも追加したいと考え、グロービスが提供している「ラーニングパス」を編集し、当社独自の「カスタムラーニングパス」を作成することにしました。今年も内定者に、不安なこと、知りたいことをヒアリングし、プログラムを追加しています。
その「カスタムラーニングパス」を学び終えたら、内定者自身で何でも自由に選べる枠も設けており、内定者の興味に応じた学びも推奨しています。
「GLOBIS 学び放題」に対する内定者の利用状況をお聞かせください。内定者全体の半分ぐらいが利用されているそうですが、どのような動機で利用されているのでしょうか。
本山:今年度は、内定者のうち110人が利用しました。あくまでも任意で応募しているので、全員というわけにはいきません。内定者のなかには、留学中の人や、全く違うことに没頭したいという人もいるからです。入社に向けて自発的に自己研さんをしてほしいと思っているので、「言われたからやる」といった姿勢にならないよう、自らが「これを学びたい」と思ってくれるようにサポートしていきたいですね。
それだけに、内定者がどんな動機で利用しているのかを、常にリサーチしています。私たちは日頃から「GLOBIS 学び放題」の魅力を伝えていますが、内定者に最も響いたのは10月1日の内定式に合わせて実施した、入社にあたっての心構えのコンテンツでした。「入社するまでに社会人としての基本は身に付けておいたほうが良い」と強調したことで、動き出した内定者は多かったようです。
利用されている内定者の感想、反応はいかがですか。
本山:毎年、内定者には二段階でアンケートを取っています。留意しているのは、不安なことがないかです。今年は特に、「PCスキルやデジタルスキル、DXの知識が足りない」「大学ではオンラインでの情報処理をしたことがない」という声が目立ちました。「そもそもロジカルシンキングに不安がある」との声もありました。実際、そうしたコンテンツの受講者数は多かったですね。
「手軽に勉強できるのでしっかりと活用している」「隙間時間や移動時間、寝る前の時間などでも利用できるので便利だ」という声が寄せられています。希望に沿ったコンテンツを提供できていて、それを受講してもらえているという手応えを感じています。
効果測定は難しいが、「学ぶ姿勢」は着実に根付いている
「GLOBIS 学び放題」導入後、内定者フォローの成果にはどのような変化が見られましたか。
本山:内定者フォローの成果を試す機会はなかなかありませんが、社会人の基本スキルは上達していると感じます。導入前は、書類の書き方や電話口での対応などが不安な内定者もいましたが、導入後は、内定者の多くが社会人らしく振る舞えるようになってきています。
意識の変化という意味では、もう一点感じていることがあります。「GLOBIS 学び放題」で社会人としての基礎、自分が不安なテーマを勉強し終えた内定者の中には、「この資格も前倒しで取って良いですか」と問い合わせてくる人もいます。入口の不安が解消されたことによって、ワンランク上を目指す学習意欲がかきたてられているのでしょう。学ぶ姿勢が身に付いた結果だと思っています。
内定者が早い段階から「GLOBIS 学び放題」のようなコンテンツを活用して学びを深めていくことのメリットは何でしょうか。
本山:入社してからも、勉強はずっと続きます。しかも勉強しなければならない領域は広く、とても深いため、知的基盤づくりは大変重要です。好奇心を豊かにしながら「自分には何が足りないのか」「何を学んでいけば次の一歩を踏み出せるのか」と考え、幅広い選択肢の中から自分の目で見て選ぶ機会を提供することが今後も必要だと考えています。
そもそも、社会人としての基本となるスキルを入社後に学び始めるようでは遅いと思います。入社したら、それどころではありません。信託銀行員・プロフェッショナルとして求められる専門性を磨き続けるために、一歩も二歩も先のスキル習得に進まなければいけないからです。それだけに、内定者の段階で「GLOBIS 学び放題」を通じて知識やスキルは身に付けておいてほしい。内定者本人に心の余裕ができますし、負担も軽減されます。二重の意味で、早くから学びを深めていくことが重要だと考えています。
自律的に学ぶ社員をいかに増やしていくか。課題は尽きない
内定者フォローや人財育成に関して、何か課題はありますか。
本山:継続的に学び続けることが大切だと話しましたが、内定者といってもまだ学生なので、私たちが何も言わなくても自発的に取り組んでくれるわけではありません。「有益なコンテンツがあるので受講してください」と言われるだけでしっかりと学ぶ人もいれば、一つ二つ受講して止まってしまう人もいます。そのため、フォローをしっかりしなければなりません。
設樂:自律的な学びへの課題は、社員も同じだと感じます。「GLOBIS 学び放題」を導入して3年が経過しましたが、受講したことがない社員もいます。もちろん「GLOBIS 学び放題」だけが学びのツールではありませんが、キャリアパスのイメージを示し、考え・相談する機会をつくり、それを実現するためになにが必要かと考えてもらうことで、自律的に学ぶ社員を増やしたいと考えています。
人的資本の充実に向けて、自律的な学びを支援
貴社の今後の「内定者フォロー」や人財育成の展望についてお聞かせください。
本山:「内定者フォロー」は、内定者たちがスムーズに当社の一員になれるようにするための取り組みです。これから時代は目まぐるしく変わっていき、新入社員に求められるものもどんどん変わっていくと思います。また、内定者たちのニーズも変化していくはずです。そのため、内定者に提供するラインアップをしっかりと備えておかなければなりません。
「GLOBIS 学び放題」で提供されているコンテンツは、時代に合わせて見直されており、まさに今必要なアイテムを勧めてくれます。当社の一員になってもらうにあたって「これも知っておいてほしい」といった点も考えながら、内定者たちのニーズにあったコンテンツを柔軟に提供していきたいですね。それらを自発的に学んでもらうための支援にも取り組んでいきたいと考えています。
設樂:当社の目指す姿は、信託機能などを生かして社会課題を解決する新たな商品・サービスを創出すること、DXによる金融インフラを構築、新しい顧客体験を創出し、強い事業基盤を確立することです。
これらを実現するためには、人財が必要です。社会課題や法人・個人のお客さまの課題を解決できる人的資本をより充実させていくことが、当社における人財育成の展望であると考えます。必要なことは二つです。一つ目は、「信託銀行員・プロフェッショナルとして求められる知識やスキル、専門性を有していること」。二つ目は、「会社や仕事に対する自律的な貢献意欲が高いこと」です。
社員の自律的なキャリア形成と自己実現をサポートするため、継続的な学びの機会を提供していく。そのための取り組みの一つが「GLOBIS 学び放題」なのです。
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