退職金を前払いするには
社員が外部金融機関の住宅融資の返済のため、在職中に退職金で住宅融資の一部返済をし、月々の返済負担を軽くしたいとの申出がありました。当社では退職金の前借の制度がありません。特例措置として対応は出来るものでしょうか。また出来る場合税金の扱い、その後の退職金の算定など注意すべき点を教えてください。
投稿日:2009/10/05 11:17 ID:QA-0017687
- *****さん
- 東京都/証券(企業規模 1001~3000人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
- 冨田 正幸
- 冨田社会保険労務士事務所 東京都社会保険労務士会 所長
Re
特別の事情などで退職金を元本とした前払いは可能ですが、その場合、どういった形でそのお金を捻出するかになると思います。(前払いを可とするには、退職金規程などでその時由を記載して、その際の支給額の取り扱いを記載しておけば可能となります)
社内留保金を原資として内部積み立てているものを取り崩すのか?借り入れを会社で行うのか?になるかと思いますが、いずれにしても前払いをした分、会社として、退職金の積み立てに際する影響は出てきます。(内部積み立てをしたとしても、その分、得られるであろう利息などは無くなるわけですし)
また、上記のような住宅融資の一部返済を理由にすると他の社員が追随をすることも考えられます。当然、住宅ローンを前倒しにして完済してしまえば、社員も利息は払わなくても済むわけですし、変動金利等利用していれば、変動金利が高くなる前に完済したいという社員は増えるわけで、その場合、全てに対応したら会社として退職金の原資をすぐ確保できるか考えなければなりません。
一般的には、自己破産等、特別の事情での前払いをするかと思いますが、これを特例と認めた場合、住宅ローンは多くの社員が抱えているわけで、他の事情も勘案されたほうがよろしいかと思います。
また、前払いをした場合、やはり退職時の支給額の満額とするよりも上記の利息もしくは、得られるであろう分は、支払い額から差し引くかされておくべきでしょう。
さらに退職金を元本とした社内融資も規程等に盛り込むことで可能にはなりますが、その場合、住宅ローン減税は適用されませんし、また会社としても制度を導入するにあたり資金面を含めさまざまな準備をしていく必要があります。
なお、従業員側もこの退職金として先に会社から退職金の前払いをうけても、これは所得税であり、通常の税率がかかるので、退職金として支給を受けた場合の税額控除は認められないので、当然、税金から見ても実際もらえる額よりは少なくなります。
以上ご参考にしていただけましたらと思います
投稿日:2009/10/05 15:38 ID:QA-0017690
相談者より
投稿日:2009/10/05 15:38 ID:QA-0036920大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご質問にお答えいたします。
上記施策を実施するとした場合には、前払退職金と前借退職金と一般的に2通りの考え方があります。
前払退職金は、今現在退職したと仮定して金額を算出し、その算出金額を上限に給与又は賞与として支給するという方法です。つまり、将来受け取る分を在籍中でありながらその一部を前倒しして受け取るということになり、在籍中に会社から一部支給される何がしかの報酬(給与)として取り扱われることになります。この場合の受取額は、退職所得ではなく給与所得となり社会保険や課税の対象になります。
これに対して、前借退職金は、本人と会社が金銭貸借契約を締結して将来退職する際に受給する退職金額の一部を前借として本人に支給し、将来退職する際の退職金で退職金支給分と前借分を差し引き相殺するという方法です。この場合の前借分の金額については、現在退職したとして算出した退職金額を上限に設定することが一般的です。この取扱いとしては、あくまでも退職金の前借ですので会社からの借金ということになり、将来の退職時に前借分を返済するということになります。つまり借金ですので、課税や社会保険の問題は、前者のような話にはなりません。
いずれの方法においてもメリットデメリットがあります。
検討する際には、
1.お金の捻出方法をどうするのか。
2.制度ではない特例措置として実施するため、今後他の従業員の利用について申し出があった場合など、その対応をどうするのか。
3.税制等含め費用処理の方法が違うため、そのどこに着眼して実施したらよいか。
この3点を鑑み、検討されることをお勧めいたします。
投稿日:2009/10/05 17:41 ID:QA-0017692
相談者より
投稿日:2009/10/05 17:41 ID:QA-0036921大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
- 川勝 民雄
- 川勝研究所 代表者
社内融資制度の導入が条件
■ ご相談の特定の社員からの申し出は、個別の特例措置として対応するべき性質のものではありません。まず会社として、住宅取得資金や住宅増改築資金、教育資金などのための、多額・長期・低利融資制度を、福利厚生施策とし、導入する方針を固められることが先決です。制度化するお積りがなければ、断るのが筋だと思います。
■ 社内融資制度では、相殺予約条項の金銭消費貸借契約を交わしている場合が多く見受けられます。相殺予約条項の効果は、返済が未完了の時点で退職した場合には、貸付金残高と退職金を相殺することが出来ます。制度としての貸付行為であれば、全社員に対する公平性が保証されますし、税の扱いも明快になります。
■ 以上を踏まえ、ご質問への回答は次の通りです。
▼ 質問 ② ⇒ 冒頭に申し上げたように、制度に基づかない特例措置は行うべきではありません。
▼ 質問 ① および ③ ⇒ 社内融資制度の導入事例には事欠きません。原資調達、税制、運営費用なども、制度設計の段階で当然確認、決定していかなければならない問題です。先ずは、取引銀行を含め、専門家にご相談されることをお勧めします。
投稿日:2009/10/06 09:18 ID:QA-0017699
相談者より
投稿日:2009/10/06 09:18 ID:QA-0036926参考になった
プロフェッショナルからの回答
- 川勝 民雄
- 川勝研究所 代表者
社内融資制度の導入が条件(追記)
最初の回答で、ご質問3点に関するコメントは、ご相談者の直接のご質問事項ではありませんでした。失礼しました。但し、私共の意見としては、正しい措置であることには変りございません。
投稿日:2009/10/06 09:25 ID:QA-0017700
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
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