中間管理職の基本給みなし残業20時間含み入れ解除について
お世話になります。
弊社では係長と課長職には基本給に20時間の残業代見合い分を含み入れて
給与設定しております。
残業が20時間を超過した場合は、超過分を支払い、逆に所定労働時間のみ
で残業を全くしなくても控除をせずに支払っております。
現状、部署により大きく乖離が発生しており、不満に繋がっていることもあり、この制度を取りやめることを検討しております。
以下を前提として、制度設計しております。
①20時間分を控除するので、基本給は減額となる。
②基本給が減額となっても、主任職の基本給を下回らず、
制度上違和感はない。
③新制度では、課長職も残業代を支給する。
20時間の残業をしていなかった者からは不利益変更と言われる可能性もあり、
それらを含め、これらの制度導入するにあたってリスクや不備があれば、ご教示頂きたく存じ上げます。
投稿日:2025/12/03 09:39 ID:QA-0161493
- メーカー人事課さん
- 兵庫県/輸送機器・自動車(企業規模 501~1000人)
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本Q&Aは法的な助言・診断を行うものではなく、専門家による一般的な情報提供を目的としています。
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具体的な事案については、必ずご自身の責任で弁護士・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1.結論
中間管理職の「基本給に20時間分の残業代を含める制度」を廃止し、
(1)基本給を20時間分控除して減額し、
(2)今後は実労働時間に応じて残業代を支払う
という制度への変更は 法的に導入可能 です。
ただし、
一部の管理職(これまで残業をほとんどしていなかった職員)にとっては 実質的な賃金減額=不利益変更
労契法8条・9条の観点から、個別同意の取得または合理的理由+周知手続が必要
という点には十分留意が必要です。
2.変更の法的論点(もっとも重要)
(1)不利益変更に該当するか?
今回の変更は以下の点で 不利益変更に該当する可能性が高い
基本給が減額される(20時間分相当の減額)
残業をほとんどしていない人は収入が純減する
労働条件の重要部分(賃金体系)の変更
→ 裁判例でも、固定残業代の廃止=不利益変更 と判断される傾向があります(例:名古屋自動車学校事件ほか)。
3.会社が取るべき対応(必須)
(1)ベストは「本人同意の取得」
不利益変更で最も安全なのは、
個別の書面同意をとること
これにより労契法9条の争点を排除できます。
(2)同意を得られない場合(就業規則変更による対応)
同意が得られない従業員がいた場合に備えて、
以下の点を満たす必要があります。
●合理性の根拠を明確にする
部署間で残業実態の乖離が大きい
固定残業代制度が職務実態に合わず、公平性に欠ける
管理職の評価制度と残業制度の整合性確保
実態として20時間の残業を想定できない部署が増えている
→これら「会社側の必要性」をきちんと説明資料に落とし込むことが大切です。
●代償措置の検討(合理性を補強)
以下のような措置があると合理性が高まります。
基本給減額を 一時的に緩和する経過措置(例:1年かけて段階的に減額)
職務手当・役職手当の見直し
評価制度の改善をセットで実施
※「主任を下回らないよう調整済み」は合理性を補強する要素になります。
●周知手続と説明会
労契法改正の重要点は
説明の丁寧さが裁判で非常に重視される点。
全管理職向け説明会
個別相談窓口の設置
書面での詳細説明
変更理由を明確に示した資料の配布
4.制度廃止後の運用上の注意
(1)固定残業代の削除は就業規則の大改訂レベル
賃金規程の変更
36協定・残業管理方法の見直し
(管理職でも残業代が発生するため)
(2)管理監督者性のない課長への残業代支給は正しい運用
労基法上、
名称が課長でも
実態が「管理監督者」に該当しない限り
残業代は本来支払う必要があります。
今回の制度変更は法的整合性が高い改善です。
(3)トラブル防止のポイント
従業員から想定される主張は以下:
「以前は20時間残業しなくても給与が維持されたのに減額されるのは不利益」
「会社の都合なのに補償はないのか」
→対応策
経過措置
説明会開催
新制度の公平性・合理性の説明強化
5.総合的アドバイス
結論
制度変更は十分に可能ですが、
個別同意の取得を基本方針にする
同意の得られない場合に備えて、合理性を高める制度設計・資料作成が必須
経過措置・代償措置を用意することで紛争リスクが大きく軽減
となります。
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/12/03 11:45 ID:QA-0161501
相談者より
ご回答頂きまして、ありがとうございます。
投稿日:2025/12/03 12:24 ID:QA-0161505大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
対応
人事制度の根幹であり、貴社の経営方針ですので、経営者としてどう考えるかに拠ると思います。本スキームは、これまでの勤務時間本位の課長職に、成果給的側面を強化するという方針とお見受けします。
単に制度導入だけなら、経過措置を十分とることと社員教育で個別同意、不利益変更でも導入可能と思います。
大事なのは、そうした大きな人事政策変更に現場課長が付いてこれるかどうかで、またその課長を管理評価する上位管理職の管理能力も、より高度なものになります。
勤務時間以外の評価体制と評価能力がカギでしょう。
投稿日:2025/12/03 11:57 ID:QA-0161502
相談者より
ご回答頂きまして、ありがとうございました。
投稿日:2025/12/08 07:18 ID:QA-0161670参考になった
本Q&Aは法的な助言・診断を行うものではなく、専門家による一般的な情報提供を目的としています。
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