支給予定日より前に退職届を提出した場合の賞与支給に関して
いつも大変お世話になっております。
標題の件、次のような場合における賞与支給につきまして、
『賃金規程』に減額規定を明記することにより、不支給は無理にしても、
せめて減額措置を講じることはできないか、ということをお尋ねする次第でございます。
【前提要件】
1.『就業規則』には、既に「支給日在籍要件」が明記されております。
2. 支給日よりも前に、自己都合による「退職届」を提出しておりますが、
肝心の退職日は、支給日よりも後の月末日付になっております。
3. 当該従業員は、賞与支給日までに年次有給休暇を全て使い切って
おり、有休残日数は残っていないことに加えまして、
出勤もしておらず、勤怠上、本人に帰責性ある「私用欠勤」で
何とか支給日まで在籍期間のみ引き伸ばしている状態です。
※ 明らかに賞与を受給した後すぐに退職することを狙った行為です。
本来であれば、すぐに「退職届」を受理せずに本人と話し合い、
有休消化しきった日付で退職してもらう方向に持っていくのがよいのだと
思います。
ただ、本人との話し合いが平行線をたどった場合、民法上、提出した翌日を初日として2週間が経過した日には、一方的に退職が確定してしまいます。
そこで、冒頭のようなせめてもの減額措置がとれないものかと思う次第でございます。
減額措置は法律上、問題ありますでしょうか。
ご多用の中、誠に恐縮でございますが、ご教授賜りたく、よろしくお願い申し上げます。
投稿日:2025/09/12 13:41 ID:QA-0158190
- とっちゃさん
- 長野県/精密機器(企業規模 101~300人)
この相談に関連するQ&A
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
賞与規定に記載された、
賞与の目的、決定方法、計算内容によります。
投稿日:2025/09/12 16:32 ID:QA-0158203
相談者より
いつもお世話になっております。
言葉足らずで大変失礼致しました。支給目的及び計算方法等につきましては,現状以下の通りとなっており,概して一般的なとりわけ変哲のないものだと思われます。
* 会社の業績に応じ,各人の能力,勤務成績
及び勤務態度等を査定し,その結果を考慮
して支給する。
* 支給日に在籍する従業員に支給する。
ただし勤続3カ月未満の者又は就業規則に
定める懲戒処分を受けた者若しくは休職して
いる者に対し,支給しないことがある。
具体的な計算式までは明記しておりませんが,
実際には次のように計算しております。
(査定期間中の本人の基本給)× 人事評価から
算出された支給率 × 出勤率
この度お尋ねした内容について,言い換えますと,(Q1)例えば『賃金規程』上に「退職予定者は非退職予定者と区別して計算する」ですとか「退職予定者は賞与を減額することがある」と規定すること自体に違法性があるかどうか,また,(Q2)仮にこのように明記することにより減額が
可能であった場合,それを施行する上での留意点および減額可能とされる金額についてでございます。
何卒よろしくご教授お願い申し上げます。
投稿日:2025/09/15 08:44 ID:QA-0158242大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1. 法律上の前提
賞与は「賃金」ではあるが、性質は会社の裁量性が強い(業績連動や評価反映など)。
ただし、支給要件や算定方法が就業規則・賃金規程等に明記されている場合、そのルールに拘束される(労基法第89条・第90条の趣旨)。
また、裁判例でも「支給日在籍要件」を有効とするものが多数(最判平成9年3月27日、その他下級審判例)。
2. 現状整理
就業規則に「支給日在籍要件」を明記 → 本人は支給日まで在籍しているため、形式的には要件充足。
退職届は提出済み → 「支給日直後に辞める」意図は明らか。
有休はすべて消化済み → 支給日まで出勤実績ゼロで「欠勤延命状態」。
3. 減額措置の可能性
(1) 法律上の制約
賞与の減額・不支給規定は、合理的かつ明確である必要がある。
「勤務成績不良」「欠勤日数が多い場合は減額」等の定めは、一般的に有効とされる。
ただし「退職予定者は減額」だけだと、労働契約法第16条(解雇権濫用法理の類推)や均衡・合理性の観点から無効とされるリスクあり。
(2) 実務上の工夫
「賞与算定期間中の出勤日数」「勤務成績」等の客観的要素を減額事由に含めておくと有効性が高まる。
逆に「退職届を出したら自動的に減額」という規定は恣意的と見なされやすい。
4. 実務対応の選択肢
減額規定を設ける
賃金規程に「賞与は会社の業績・勤務成績・勤務態度等を勘案して支給額を決定する」旨を明記。
さらに「賞与算定期間中に無断欠勤や長期欠勤がある場合は減額対象」と規定しておく。
この場合、今回のように「支給日直前まで欠勤状態」の従業員について、合理的な減額を可能とする。
在籍要件+評価反映の併用
支給日在籍要件を維持しつつ、「支給額は勤務成績等に基づく」ことを明示。
実際に出勤実績ゼロで勤務評価も低いとして、支給額を大幅減額またはゼロ評価とする運用が可能。
今後の対応(予防)
退職届の扱いについては「有休消化と合わせた退職日調整」をルール化。
退職希望者が「支給日まで粘る」ケースを避けるため、「賞与算定期間における勤務実績を考慮する」旨を就業規則に入れておく。
5. リスク
既存規程に減額事由がない状態で、今回だけ恣意的に減額すると、不払いの労基署指摘・労働審判リスクあり。
減額を行うなら、あくまで「欠勤による勤務成績不良」等の客観的理由に基づいて」説明する必要。
6. まとめ(結論)
現行規程に減額事由がなければ、支給日在籍要件だけでは減額は難しい。
将来的には「算定期間中の出勤状況・勤務成績を考慮して支給額を決定する」と明記すれば、今回のようなケースで減額可能。
今回については、形式的には支給要件を満たしているため、減額はリスクが高い。やるとすれば「欠勤による勤務評価の反映」という枠組みを根拠にするのが現実的。
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/09/12 17:26 ID:QA-0158207
相談者より
いつも大変お世話になっております。
ご多用の中,とても詳細にご回答賜り,感謝申し上げます。
例えば,既に明記されている「支給日在籍要件」に加え,「退職予定者」とそれ以外の者とを別の計算式にして運用することは可能でしょうか。
具体的には,「退職予定者」には一定の減額率(勤続年数,支給日までの勤務態度等を総合的に勘案します)を最後に乗じるなどの方法によります。
重ね重ねのお尋ねで誠に恐縮でございますが,何卒ご教授お願い申し上げます。
投稿日:2025/09/15 08:53 ID:QA-0158243大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
退職をすることを理由に減額することは、不合理と言えます。
一方、貴社の人事評価において、勤怠を評価事項と位置付けているのであれば、
正当な人事評価結果として、賞与金額を減額することは可能です。
但し、減額幅が社会通念上、不当に大きいと判断されると、権利濫用とみなされ
無効となる可能性もあります。減額は、勤怠不良の度合いに見合った、合理的な
範囲にとどめていただく方が無難ではあります。
なお、貴社の人事評価基準として、勤怠事項があり、勤怠不良による減額幅が
基準として明確に定められ、周知されている状態があれば、大幅な減額も可能と
言えます。
投稿日:2025/09/12 17:33 ID:QA-0158208
相談者より
いつも大変お世話になっております。
ご多用の中,早速ご回答賜りまして,感謝申し上げます。重ね重ねのお尋ねになってしまい,誠に恐縮ではございますが,・「減額幅が社会通念上、不当に大きいと判断される金額」とは,どの程度だと理解するのが無難でしょうか。・また,「支給日在籍要件」は弊社の場合,既に明記されておりますので,これに加え,仮に支給日在籍要件を満たしても,支給日までに退職する意思を表明している者とそれ以外の通常の者とでは計算方法を別にして,当該退職予定者については,一定の減額を行うことは可能でしょうか。
お手数をお掛け致しますが,よろしくご教授賜りたく,何卒お願い申し上げます。
投稿日:2025/09/15 09:14 ID:QA-0158244大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
対応
給与規定によります。賞与支給要件が明確に規定されているなら、その要件を変えることは不合理です。
勤怠状況などが賞与に反映される旨記載されていれば、欠勤を理由に評価を下げることも可能です。
投稿日:2025/09/12 19:51 ID:QA-0158217
相談者より
いつも大変お世話になっております。
今回もご多用の中、ご返信いただきまして、どうもありがとうございました。初心に帰り規定整備の重要性を再認識した次第です。無駄なリスクを回避することを前提に、過去の事案についても勉強してみたいと思います。
どうもありがとうございました。
投稿日:2025/09/18 08:08 ID:QA-0158391大変参考になった
人事会員からの回答
- オフィスみらいさん
- 大阪府/その他業種
月末日付で退職届が提出され、御社も受理した以上は、月末退職で労使双方が合意したということになります。
ですから、前提要件3にあるような状態であっても、私用欠勤に伴う欠勤控除の点は別にして、月末退職までは雇用契約は存続するわけですから、賞与を受給した後すぐに退職することを狙った行為であることが見え見えであったとしても、防ぐ手立てはなく、また、法違反となるわけでもございません。
すぐに「退職届」を受理せずに本人と話し合い、有休消化しきった日付で退職してもらう方向に持っていくのが理想的だとはいっても、この期に及んで本人が話し合いに応じるとは思えません。
明確な減額事由もないのに減額措置を取ることなどできません。
今回の事案を将来への教訓とし、割り切るのが寛容かと存じます。
投稿日:2025/09/13 07:11 ID:QA-0158223
相談者より
お世話になります。
お忙しい中、ご返信いただきまして、どうもありがとうございました。ご指摘の通り、下手な対応をして想定外のリスクを被るより、法的にも双方の心情的にも中庸をとるのが、適切と判断いたします。
大変参考になりました。どうもありがとうございました。
投稿日:2025/09/18 08:04 ID:QA-0158390大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、就業規則の現行賞与の定めに基づいて支給される事が必要です。
従いまして、事情がどのようであれ減額措置については根拠が無い為不可といえます。
ちなみに、通常の場合賞与とは過去の勤務分の対価として支給される性質ものですし、そうであれば退職日が支給日の直後となるような場合でもむしろ満額支給されるのが当然の措置ともいえるでしょう。
投稿日:2025/09/13 18:42 ID:QA-0158235
相談者より
いつも大変お世話になっております。
今回におきましても、ご多用の中、ご教授賜り感謝申し上げます。
どのような状況におかれましても、法令遵守がまず第一であることは揺るがせようもない要件ですので、このことを肝に銘じながら、くれぐれも軽率な対応をしないよう心掛けたいと思います。
どうもありがとうございました。
投稿日:2025/09/18 08:14 ID:QA-0158393大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
勤務(履行)期間に応じた支給
以下、回答いたします。
(1)民法では、次のように、既履行分の報酬請求権が保障されています。
(履行の割合に応じた報酬)
第六百二十四条の二 労働者は、次に掲げる場合には、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
二 雇用が履行の中途で終了したとき。
(2)賞与は報酬(賃金)であることから、上記(1)を踏まえれば、賞与は、勤務期間(履行期間の長さ)に応じて請求がなされるものであると考えられます。
(3)一方、一般に、「支給日在籍要件」は、上記(2)の特約として、支給日に在籍していない場合には、賞与を全額不支給とするものであると考えられます。
(4)「支給日在籍要件」の背景には、「将来の勤務への期待」があると考えられます。しかし、当該要件については、今回のように実質的に機能しないことがあり、また、「労働者の退職の自由」や「職業選択の自由」と必ずしも整合的ではない側面があるように認識されます。
(5)そうであるならば、上記(2)を勘案し、「支給日在籍要件」の効果について、当該要件を満たさない場合には、全額不支給とするのではなく、(実質の)勤務期間に応じて支給することが合理的であると認識されます。今回のケースであれば、これによって結果として減額になると考えられます。
(6)この場合、就業規則の変更が必要となりますが、労働契約法第10条の要件を満たすことは十分可能であると認識されます。
(労働契約法)
第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。
投稿日:2025/09/13 19:58 ID:QA-0158239
相談者より
お世話になります。
ご多用の中、ご返信賜りまして感謝申し上げます。
ご教授賜りました中の(4)については、大変よい勉強となりました。一つの事案に対しましても、複数の側面から整合性を検討することの重要性を認識させていただいたと思います。
どうもありがとうございました。
投稿日:2025/09/18 08:19 ID:QA-0158396大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
追加のご質問にご回答申し上げます。
追加のご質問をいただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
考え方や規定等につきましては、ご説明申し上げました通りです。
追加のご質問
「既に明記されている「支給日在籍要件」に加え,「退職予定者」とそれ以外の者とを別の計算式にして運用することは可能でしょうか。
具体的には,「退職予定者」には一定の減額率(勤続年数,支給日までの勤務態度等を総合的に勘案します)を最後に乗じるなどの方法によります。」
につきましての最終の判断は、所轄の労働基準監督署が行うものと存じます。
つきましては、本ご質問は、所轄の労働基準監督署の監督官にご確認されることをお勧め申し上げます。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/09/15 09:28 ID:QA-0158245
相談者より
大変お世話になっております。
ご多用の中、複数回に渡りご教授賜りまして、心より感謝申し上げます。
ご回答賜りました内容、承知致しました。結果、意図しない所で法を踏み外すことのないよう注意して参ります。
どうもありがとうございました。
投稿日:2025/09/18 08:23 ID:QA-0158398大変参考になった
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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