目指すのは三つの“C”――Change、Challenge、Create
人財を通じて改革を推進する「レナウン元気塾」の挑戦
川口 輝裕さん(管理本部 人事部 人材開発課 課長)
篠崎 巳奈さん(管理本部 人事部 人材開発課)
アパレルは人なり。人が変わらなければ会社は変わらない――。1世紀以上の歴史を誇るファッション業界の老舗レナウンではここ数年、ビジネス環境の激変を受けて大胆な改革が進められています。その大きな柱の一つが「人材開発」。組織再編や人員削減といった改革の“痛み”を乗り越え、現場のモチベーションを回復させるためにも、“人材を人財に変える”育成プログラムの強化や、従業員が常にワクワクして働ける職場環境の整備は必須でした。そうした諸施策を「レナウン元気塾」として体系化された人事部人材開発課の川口輝裕課長と篠崎巳奈さんに、多岐にわたる育成メニューのねらいと取り組み状況についてお話をうかがいました。
- 川口 輝裕さん
- 管理本部 人事部 人材開発課 課長
(かわぐち・てるひろ)●1981年レナウン入社、1988年商品企画部にてレディスの企画を担当する。2003年人事部研修室に異動し人材育成を担当。経営統合から合併を経て2009年より現職。「レナウン元気塾」の推進を始め人財化戦略の実現を目指している。
- 篠崎 巳奈さん
- 管理本部 人事部 人材開発課
(しのざき・みな)●1990年レナウン入社、ライセンスブランド営業、レディス企画・ライセンスブランドのVMD(ビジュアルマーチャンダイザー)、バイヤー、企画を経て、2008年の9月より人事部へ異動、2009年2月より人材開発課。ポジティブアクション実現に向け社内横断プロジェクト「yeye plus」を推進している。
「人材」を「人財」に変えていく――新生レナウンの船出
「となりの人事部」で繊維・アパレル業界の企業にお話をうかがうのは、実は今回が初めてです。常に新しい流行を先取りしている業界というイメージがありますが、一方で産業としての歴史は非常に長い。御社も創業110年を迎えられました。
川口:1902年に大阪で繊維卸売業として始まりましたから、レナウンの歴史はそのまま日本のアパレルの歴史と重なるといっても過言ではありません。業界のイメージは華やかかもしれませんが、実際の現場は「仕事は先輩の背中を見て学べ」というような、昔気質の考え方や風潮が残っていたりします。ただ歴史ある企業であっても、いえ、歴史ある企業だからこそ変わっていかなければいけない。当社はいま、これまでに培われた品質や信頼といった財産を守りながらも、決して過去に固執せず、新たな創造に挑戦しようとしています。それには、一にも二にも“人づくり”。チャレンジングな人材を採用し、サポートしたいというのが経営陣とわれわれ人材開発スタッフの思いです。
変化といえば、御社のここ数年は企業統合に組織の再編、さらには中国企業との資本業務提携と、体制面でも激動の時期という印象です。
川口:70年に新しく設立したグループ会社のダーバンと旧レナウンで、持ち株会社のレナウンダーバンホールディングスを設立したのが2004年。06年にはこの持ち株会社を存続会社として先の二つの会社を吸収合併し、社名を改めて株式会社レナウンとしたわけです。旧レナウンとダーバンは同じグループ会社ではありましたが、それぞれ一部上場企業として独自の経営路線を歩んできたこともあり、このたびの統合で初めて一つとなりました。
“新生レナウン”のスタートというわけですね。
川口:ご存知のとおり、業界の市況は非常に厳しいので、決して順風満帆な船出というわけではありません。不採算ブランドの撤退や売り場の集約、人員削減など、大幅な構造改革にも踏み切りました。そうしたなか、09年からは中期経営方針「RMAP-アールマップ」の柱の一つとして人材育成プログラムの強化を謳い、「レナウン元気塾」と総称されるさまざまな階層別・テーマ別の諸施策に取り組んでいます。当社はもとより装置産業ではありませんから、まさに人が頼り。人材こそ最重要の経営資源という認識は、これまで脈々と受け継がれていました。そこにもう一歩踏み込んでいきたいんですね。一人ひとりの能力を活かし、人材の価値を高める――われわれは“人材を人財に変える”とよく言いますが、組織としてそういう機会をもっと効果的・効率的に創り出し、経営上の目に見える成果にまでつなげていきたいと思っています。
中国企業との資本業務提携のインパクトは人事面で何か現れていますか。人材の傾向や特徴の違いを実感しているなど…。
川口:国が違えば人も違います。それは当然のこととして想定していますが、本格的に直面するのはこれからでしょうね。今後の中国展開を目指して設立した合弁会社「北京レナウン」が営業を開始していますが、現在は日本から“先遣隊”となるスタッフが出向している段階で、こちらの人事部門が携わることはまだ多くありません。ただビジネス自体はもう動き出しているので、早晩、現地でも国内でも人員拡充に向けて取り組むことになるでしょう。