職場のモヤモヤ解決図鑑【第32回】
研修の学びを仕事に生かすため、上司が部下にできるフォロー[前編を読む]
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。昔思い描いていた理想の社会人像より、ずいぶんあくせくしてない? 働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!
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山下 健悟(やました けんご)
関東圏のメーカー課長職45歳。20人ほど部下がいる。部下がもっと働きやすく、活躍できるチームを目指し、試行錯誤の日々。
先日研修を受講した部下の大林さんの様子をみながら、山下さんはまた悩んでいます。大林さんは研修に参加したものの、その後の仕事が忙しく、研修内容を振り返る時間も、実務に生かす余裕もないようです。「やりっぱなし」「受講して満足」で終わらないため、上司にはどのようなフォローができるのでしょうか。
研修の最大の目的は、業績向上につなげること
社員の中長期的な学びと成長の機会を提供することが重要だと考えて、企業では研修を実施します。それなのに部下からは「受講しました」という報告だけで、その効果が見られないようでは、上司も満足しないでしょう。研修を受講した部下に期待したいのは、学んだことを業務で実践することと、業績の向上につなげること。研修での学びを最大限に生かしてもらうには、どうすればいいのでしょうか。
上司が職場できる研修前・研修後のフォロー
【研修前】部下の研修内容と参加目的を把握しよう
研修を受ける目的を部下とすり合わせていなければ、研修後にフォローすることができません。また、部下が研修に参加することすら知らないといった管理職の態度は「研修自体を職場が重視していない」というメッセージを暗に発してしまいます。
事前に部下が参加する研修を把握し、その目的を押さえておくことが重要です。「今日はタスクマネジメントの研修だね。〇〇に向けてがんばってね」などと一言かけられるだけでも、部下は上司からの期待を感じられるものです。
研修前にできること
- 部下の参加する研修を把握しておく
- 研修前に一言かける
- 研修日程をメールでリマインドする際は、日時だけではなく内容や研修の目的も記載しておく
研修前だけでなく日頃から行っておくこと
- 評価面談や目標設定面談で、部下の抱える課題を確認しておく
- 課題だけではなく、「こんなふうに成長・活躍してほしい」という期待感を伝えておく
【研修後】学んだ内容を振り返り活かせる機会を作ろう
「研修が役立った」と部下が実感するには、学びを実践する機会が欠かせません。部下が研修に参加したあと、身に着けた学びをすぐに活用できる機会があれば万々歳です。しかし、研修で得た知識やスキルが、すぐに役立つわけではないというケースも多々あるでしょう。そのような場合でも「学ぶ」→「実務で使う」→「振り返る」→「気づく」という流れを部下が経験できるよう、上司のフォローが必要です。
上司ができることの一つは「学びを振り返る機会を作ること」。つまり、継続した問いを設定し、部下本人が自分の行動に変化が生まれたかどうかを振り返れるようにするのです。
たとえば、タスクマネジメントの研修を受けた部下に対しては、評価面談の際に「仕事の効率化のために工夫した点」に触れてみます。もちろん、これは研修前の目的のすり合わせがあってこそ生きるものです。研修前に設定した目標を部下自身が思い出すことで、「学びっぱなし」を避けることにつながります。
部下のモチベーションをあげるフィードバックのコツ
目の前の仕事で必要なスキルを学んだにもかかわらず、まったく活用されていないというケースもあるでしょう。部下の「できない点」を指摘するフィードバックでは、モチベーションの低下につながらないように以下の点に気を配る必要があります。
フィードバックのコツ
- 設定されていた目標と足りてない部分を確認する
- どの行動・どのプロセスを改善するべきか具体的に挙げる
- 改善点を明らかにしたあとは、とるべき行動について部下との話し合いで決める
- その話し合った内容が、実現可能なものか慎重に見極める
- フィードバックの内容は客観的事実に基づいて行う
- 【参考】
- フィードバック|日本の人事部
研修が部下の自律的な学びを促す場になっているか
研修は、部下の自律的な学びのために欠かせないものです。学びがすぐに仕事に生かせるかどうかに限らず、将来的な部分も含めて、「自らの役に立っている」という実感があるからこそ、部下も研修に身が入ります。
部下からの「こんな仕事をしてみたい」という希望を、研修でのスキルアップを活用し後押しすることも上司の役割の一つです。年次や経験だけに縛られずにチャレンジできる場が、積極的な学びの姿勢を促します。
【まとめ】
- 研修前に部下が参加する研修の目的や内容を把握する
- 研修前に、部下にも研修の目的や期待を言語化することでモチベーションアップになる
- 研修後は、定期的に研修の目標と達成度合いを振り返る機会を設けよう
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!