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データ活用により人財育成のあり方を変革する
実践にフォーカスした育成へ

<協賛:株式会社ウーシア>
  • 伊藤 羊一氏(ヤフー株式会社 Yahoo!アカデミア学長)
  • 北垣 武文氏(株式会社ウーシア 代表取締役CEO)
  • 小杉 俊哉氏(慶應義塾大学大学院 理工学研究科 特任教授)
TECH DAYパネルセッション [TB]2019.12.24 掲載
株式会社ウーシア講演写真

研修のやりっぱなし問題は、いまだに解決されていない。学びを実践するには、適切な振り返りとビフォーアフターにおける周囲のフォローが重要だ。そこに人事データをどう組み合わせていけばいいのか。Yahoo!アカデミアの伊藤氏、ウーシアの北垣氏、慶應義塾大学大学院の小杉氏が、これからの人財育成のあり方について議論した。

プロフィール
伊藤 羊一氏( ヤフー株式会社 Yahoo!アカデミア学長)
伊藤 羊一 プロフィール写真

(いとう よういち)日本興業銀行からプラス株式会社に転じ、ジョインテックスカンパニーにて物流・マーケティング・事業再編などを担当。2012年より執行役員ヴァイスプレジデントとして事業全般を統括。2015年ヤフー株式会社に転じ、Yahoo!アカデミア学長として、次世代リーダー育成を行う。グロービス経営大学院客員教授、株式会社ウェイウェイ代表取締役として、ヤフー外でも幅広くリーダー開発、インキュベーションサポートに活動する。著書『1分で話せ』は34万部を超えるベストセラーに。最新作『0秒で動け』。


北垣 武文氏( 株式会社ウーシア 代表取締役CEO)
北垣 武文 プロフィール写真

(きたがき たけふみ)損害保険、コンサルティング業界での勤務を経て、経営学修士、同博士課程単位取得。2002年より教育研修業界に身を置きながら、さまざまな教育コンテンツの開発、企業での導入に関わっている。BBT経営大学院教授、早稲田大学商学研究科非常勤講師。


小杉 俊哉氏( 慶應義塾大学大学院 理工学研究科 特任教授)
小杉 俊哉 プロフィール写真

(こすぎ としや)早稲田大学法学部卒業。マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院修士課程修了。日本電気株式会社、マッキンゼー・アンド・カンパニー インク、ユニデン株式会社人事総務部長、アップルコンピュータ株式会社人事総務本部長を経て独立。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科准教授を経て現職。元立命館大学大学院テクノロジー・マネジメント研究科 客員教授。専門は、人事・組織、キャリア・リーダーシップ開発。著書に、『職業としてのプロ経営者』、『起業家のように企業で働く』(クロスメディア・パブリッシング)、『リーダーシップ 3.0-カリスマから支援者へ』(祥伝社新書)など。


研修が成長のきっかけになると「思っていない人」が多すぎる

小杉:アインシュタインの言葉に「何かを学ぶためには、自分で体験する以上にいい方法はない」というのがあります。人の学びでは70:20:10の法則が有名です。人は70%の直接経験、20%の他者の指導やアドバイス、10%の読書や研修から学んでいるというものです。では、データ活用が進みつつある人材育成の現場では、どうしていけばいいのか。最初に伊藤さんの取り組みをお聞かせいただけますか。

伊藤:私はYahoo!アカデミアでリーダー育成を行っています。毎年100名を選抜し、次世代の役員や部長を育成しています。研修で教壇に立つほか、外部でも講演する機会があり、昨年1年間で297回、人前に登壇しています。そこで思うのは、多くの研修はやりっぱなしを前提にしていないか、ということです。研修が成長のきっかけになると思っていない人が多すぎるんですね。ただ研修をやって、実務に戻ると忘れている。やりっぱなしの研修では10%の学びにも達していないのではないかと、特に最近は強く思っています。

研修はやり方次第で、実務での経験と同等の効果が望めると思います。そのためには、どうすればいいのか。一言で言えば、ちゃんと振り返りをする、ということに尽きます。でもそれだけではダメで、すぐに実務で使ってみる。振り返って気づく。それを常にやり続ける。このサイクルを回せれば、研修は意味があると思います。研修と実務は常にセットなのです。そして実務を経験したら、もう一度問題意識をもって研修を行う。こうしたサイクルが大事だと思います。私は研修そのものよりも、ビフォーアフターに多くのエネルギーを割いています。

講演写真

小杉:書籍『研修開発入門「研修転移」の理論と実践』(中原淳他著)には、研修のフォローアップについてこんな調査結果が紹介されています。「従業員は研修で学んだ内容の10%程度しか現場で実践できていない」「研修直後には、受講者の47%が、研修で学んだ内容を職場で実践すると考えているが、その割合が半年後は12%、1年後は9%には減少していた」。要するに研修は手段なのに、目的になってしまっている。また、書籍『部下の強みを引き出す経験学習リーダーシップ』(松尾睦著)では、経験学習のサイクルを適切に回すことの大切さが書かれています。「経験する→内省する→教訓を引き出す→再利用可能な状態にする→再び経験する」というサイクルです。こういうことを、意図的に設計する必要があります。人材開発を行う人は現場でどう実践されるかを意識したうえで設計し、結果を見届けなければいけません。

伊藤:極論すれば、研修のコンテンツそのものよりもそこでの気づきが大事かもしれません。Yahoo!アカデミアでは、著名なフランス料理店に行って、シェフがラタテューユをつくるところを見て、気づきを得るセッションをやったことがあります。さまざまなものから気づきを得る、ということをを大切にしています。単に振り返るだけではなく、自分の仕事においてどんな意味があるかと内省し、そこから教訓(気づき)を得る。そう考えれば何でも研修の題材になると思います。

研修のビフォーアフターで周囲がいかに絡むかで成果は変わる

小杉:次に、北垣さんの取り組みをお聞かせいただけますか。

北垣:私たちは研修フォローアップのアプリケーション「Core」の運営などを行っています。私は年間100回ほど教壇に立っていますが、受講者の皆さんは、今できていないから、理解が足りていないからこそ学びにきているわけで、学びを現場で実践に移すことが大事ではないでしょうか。ですから、研修の学びをいかに現場に持ち帰り、現場で試すことのできる体制作り、仕組みづくりが大事だと思います。研修フォローアップ事業においても、この点を大切にしています。研修のやりっぱなしは人事が非常に気にする問題ですが、なかなか社員一人ひとりの学びの定着をみていくことは難しい。上司に絡んでもらうことが一つのキーになるのではないかと思います。ただ、研修について調査してみると、研修内容が実践と合っていないこともあり、受講生と上司の目線を合わせることが今は大事なのだと思います。

講演写真

小杉:お二人とも研修のビフォーが大事だと言われますが、特に上司が研修の前後でどのように接し、学びをいかに実践に反映させるかは大変重要ですね。

伊藤:ビフォーは大事ですね。職場と上司の協力をいかに取り付けるか。私たちもこのことを明確に実践しました。やり方は二つあって、一つは研修を継続しているとそのうち卒業生が上司になるので、協力的になります。二つ目は、事前に上司とアカデミアのメンバーとで1on1の面談を行い、Yahoo!アカデミアで何を狙ってどんなことをやるのかを伝えます。地方拠点にも出向いて実施内容を説明しましたが、大きく変わりましたね。これまでも上司は研修が大事だとわかっていましたが、内容を知らないと協力しづらかった。内容をきちんと伝えることで、進んで協力してくれました。

北垣:私たちも、研修の中身を上司に伝えています。すると部下が研修から戻ったときに、上司は部下が何を学んできたかがわかるので、その内容が互いのコミュニケーションの材料となります。内容を知ることは、研修後の関係性にも大きく影響しています。

今後の注目は人財育成データ。テキストマイニングで何かが分かる

小杉:採用現場は今、デジタル化が進んでいます。しかし、採用後の人財育成はというと、昔とほとんど変わらずにアナログのままです。企業にはデジタルネイティブも入社してきていますし、これから人事は人事データのみならず人財育成データを総合的に分析し、予測や意思決定に役立てる、データ・ドリブンの考え方を取り入れる必要があります。人財育成のデータ活用は、どこまで進んでいますか。

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伊藤:3年前に人事関連のデータの活用にトライしたのですが、いきなりデータ分析をガンガンやる、ということは1年で挫折しました。人事データには、三つの大きな「不都合な真実」があることがわかったのです。一つ目は「バラバラ」。データが場所も形式もバラバラに存在している。例えばあるデータはデータベースに、あるデータはエクセルで保管されている、といった具合です。二つ目は「グチャグチャ」。性別の表記が男だったり男性だったりMだったり、大学名の呼び方で正式名称もあれば略称もあり、と統一されていない。三つ目は「マチマチ」。データの連続性、継続性がなく、例えば評価の基準も年ごとで違っていたりします。

それで、これはこの状態でデータ分析をしても意味がないことに気づいて、分析をストップし、半年間データベースを揃えることに注力しました。結果として、さまざまなデータが自動的にたまる仕組みができたので、分析はこれからガンガンやっていきます。こんな話を他社ですると「うちもそうなんです」という声が多い。ということは、どの企業もまだやれていない、ということだと思います。では人財育成データはどうかというと、データをためる仕組みはまったくできていません。このままではまずいとウーシアさんの仕組みを取り入れたり、アセスメントをためたり、今は人財育成におけるどの部分のデータをためようかと考えているところです。

北垣:人に関するデータは膨大ですから、目標を定めて育成に限ってデータ集めるというやり方はあると思います。ただ、育成というとこれまでは研修履歴ぐらいしかない。それではどれだけ意味があるのかは不明ですね。例えばリーダーシップ研修を受けても、リーダーのどんな要素を学んだのかが問題です。

伊藤:私は、研修で受講者が発した言葉がキーになるのではないかと思っていたんです。そこで、発言のログすべてを取ろうとしました。しかし、これはさすがに現実的ではない。そこで、個人の振り返りの言葉(気づき)を全部ためていこうと。ウーシアさんの仕組みを使って、研修後の振り返りと日常の業務における振り返りを全部言葉してもらい、それをためているところです。

小杉:それはどのように活用するのですか。

伊藤:あがってきたデータを分析し活用の方法を模索している段階ですが、データを深く分析すると研修が進むと徐々に言葉に変化が見える、個人の特色が見えるという可能性を感じています。

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北垣:私が時間軸での変化と共に今注目しているのは、リーダーの素質を持つ人がどんな語りをしているか、状況をどう見ているか、ということです。経験学習のサイクルをうまく回せているかどうかを解析していくと、発言の分析によって何かが見えるのではないか。特に内省による教訓が引き出せているかは、まさにリーダーとして、そしてビジネスパーソンとして必要な資質だと思います。

小杉:私は今、大学院のプロジェクトで食品会社の文化的融合を研究しています。企業に定着する人としない人で何が違うのか。定期的に本人の思いや周辺の人からのフィードバックを文章にしてもらい、それをためています。テキストマイニングを行い、それぞれどういう言葉を使っているかを見ています。これはまさに学習ですね。

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伊藤:そこには必ず何かあると思いますね。そうしたデータと、僕らの仮説と実際の評価や登用を比較しながら、地道に追い続けるしかないと思います。

北垣:結局、人の学びは70%の経験から個人がどれだけ学べるかということですから、10%の研修も70%の経験を生かすためにどれだけ役立つかという位置づけで考えなければいけない。各々の要素が補完し合えずに切れてしまっていることが問題ですね。

小杉:人事は人事のための人事になりがちで、研修もそういう位置づけになっていないでしょうか。人事部門は企業内で唯一、現場に介入し、現場を巻き込んで変革を起こせる部署だと思います。これからはそういう積極的な姿勢が大事になると思います。

本講演企業

株式会社ウーシアは、学習効果の最大化による企業価値向上、学びの主体者である従業員の方々の自律的で豊かなビジネス・パーソンライフの支援、そして、それをミッションとする人事部門のみなさまと共に、能力開発と人財マネジメントシステムの変革に取り組んでいます。

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