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人生100年時代の働き方にどう向き合うべきか?

<協賛:株式会社SmartHR>
  • 大室 正志氏(大室産業医事務所 代表)
  • 米山 侑志氏(経済産業省 産業人材政策室 室長補佐)
  • 中村 成博氏(株式会社Gentle 代表取締役 / 株式会社絶好調 取締役)
  • 宮田 昇始氏(株式会社SmartHR 代表取締役CEO)
東京パネルセッション [K]2019.12.24 掲載
株式会社SmartHR講演写真

終身雇用や年功序列の崩壊、「人生100年時代」の到来などの影響で、企業の人事戦略や個人のキャリア設計は大きな転換期を迎えている。これからの時代、働き方はどうなるのか。官民それぞれの立場から、「ライフステージの変化と多様な働き方」「働き方の規制緩和」「副業・兼業」「HRテクノロジー活用」などの観点から、「人生100年時代」の働き方について語り合った。

プロフィール
大室 正志氏( 大室産業医事務所 代表)
大室 正志 プロフィール写真

(おおむろ まさし)産業医科大学医学部医学科卒業。専門は産業医学実務。産業医科大学産業医実務修練コース修了。ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社統括産業医、医療法人社団同友会産業保健部門を経て現職。
メンタルヘルス対策、インフルエンザ対策、生活習慣病対策など企業における健康リスク低減に従事。現在約30社の産業医業務に従事。社会医学系専門医・指導医。著書「産業医が見る過労自殺企業の内側」(集英社新書)


米山 侑志氏( 経済産業省 産業人材政策室 室長補佐)
米山 侑志 プロフィール写真

(よねやま ゆうじ)2011年東京大学教育学部総合教育科学科卒後、経済産業省入省。
東日本大震災後の経済産業省において、被災中小企業支援、原子力政策、福島第一原発廃炉、石油天然ガス政策、安全保障、各種法令立案・審査等に従事。省内でも珍しい教育学部卒キャリアをアピールし、2018年6月に異動、本職に着任。働き方改革推進、リカレント教育拡充、兼業・副業促進等を担当。


中村 成博氏( 株式会社Gentle 代表取締役 / 株式会社絶好調 取締役)
中村 成博 プロフィール写真

(なかむら まさひろ)日本マクドナルドで自らが考案した、従業員のモチベーションアップを図るマネジメント手法は、本部を通じて全店に紹介された実績を持つ。
コンサルティング会社では、この考え・手法をあらゆる業種・業態においても、その効果をみずから実証。経営者・店長に広め、その実効性は評価が高く、多くの方々の支持と共感を得ている。


宮田 昇始氏( 株式会社SmartHR 代表取締役CEO)
宮田 昇始 プロフィール写真

(みやた しょうじ)株式会社SmartHRの代表取締役CEO。2013年に株式会社KUFU(現SmartHR)を創業。2015年に自身の闘病経験をもとにしたクラウド人事労務ソフト「SmartHR」を公開。利用企業数は公開後3年半で26,000社を突破。2019年1月には確定拠出年金や保険を駆使して「お金の不安」を解消し、いわゆる老後2,000万円問題の解決を目指す「SmartHR Insurance」を、同4月には「会議」における非合理の解消を目指す「SmartMeeting」を設立した。


「人生100年時代」の働き方をどう捉えるか

日本では、人口減少傾向が続いている。現在の人口は約1億2000万人だが、2050年は9000万人へ減少。さらに2065年には、9000万人を割り込むと予想されている。加えて高齢化率が上昇、生産性年齢で見ると50%を超える水準に達し、人手不足が恒常的に続くことになる。

まずは経済産業省の米山氏が、「人生100年時代の働き方」について概略を語った。

「近い将来、AIに多くの仕事が取って替わられるという事態が予測されています。アメリカでは、低スキルと高スキルの仕事が増えている、という調査結果も出ています。対人サービス職と専門技術職の両極化が起きる、ということです。実際、日本でもそうした傾向が見られます。今後、高スキルの人材をどのように伸ばしていくかが、企業にとって大きな課題となっています」

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個人の視点で見たとき、キーワードとなるのが「人生100年時代」の到来だと米山氏はいう。

「1961年に年金制度ができたとき、退職してから平均寿命までの期間は十数年でした。しかし今、この期間が大変長くなってきています。現役を引退するまでに貯めた貯蓄と年金でその後の人生を送れるかというと、難しいと言わざるを得ない。令和の時代となった今、終身雇用や専業主婦などを中心とした昭和のライフスタイルが少数派になっています。当時とは比べものにならないほど、現在は人々の生き方、働き方が多様化しています」

企業も大手を中心に、労働生産性を高め、新たなイノベーションを起こしていくための構造改革が求められている。それには、多様化した人材をどのように活用していくかが大きなポイントだ。

新しい時代の人材戦略・働き方とは

ここからは大室氏による司会の下、「新しい時代の人材戦略・働き方」をテーマに、ディスカッションが行われた。大室氏は、働き方改革は単に労働時間を短くすることが目的ではなく、あくまで手段の一つで、元々は日本で労働人口が減少する中で何ができるのかということが背景にあると語る。その上で、メンバーシップ型雇用(年功序列や終身雇用を前提とした職務や勤務地を限定しない雇用管理)からジョブ型雇用(専門性や職務、勤務地を前提に置いた雇用管理)への変換が、日本企業には喫緊の課題であることを強調した。

大室:新しい時代の人材戦略、働き方を考えて、日本企業でもメンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へ変換しようとする動きがあります。ご存じのように、日本の多くの企業では新卒一括採用を行ってきました。自分の会社の仲間となってくれる人を採用して、教育を行います。一方、外国の場合はジョブ型雇用が基本。最初から求めるスキルや賃金を決めて募集を行います。

外国企業の労働者は自分の仕事が終われば帰りますが、日本企業の場合、仲間が職場でまだ働いていたら、自分だけ先に帰るようなことはしません。昔は、同じ釜の飯を食べ、濃密な時間を長く過ごした人が仲間とされていました。そうやって会社へのロイヤルティを高めていったわけですが、SmartHRさんのようなIT企業では、どういう状況なのでしょうか。

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宮田:当社の場合、ジョブ型雇用が前提で、分業がかなり進んでいます。営業でもヒアリングを担当する人、お客さまのところに商談に行く人、サポートを行う人など、業務が分かれています。一方で、会社を好きになるための取り組みも行っています。例えば新入社員が入社して1年経ったタイミングで、皆で少し値段の高い寿司屋に食べに行くイベントや、部活動の活動資金のサポートなどです。現在の社員数は160名ほどですが、部活動が100くらい存在しています。ジョブ型雇用を前提としながらも、このように会社へのロイヤルティを高めるための施策に取り組んでいます。

大室:飲食業のように、バックグラウンドが異なる人が一緒に働く職場では、どのようにして組織をまとめていますか。

中村:私の考え方のベースにあるのは、前職のマクドナルドで歌舞伎町の店舗を任せられたときの経験です。飲食業では人手不足だからといって、途中で店を閉めるわけにはいきません。当時の店舗では24時間営業を行っていましたが、働いている人たちの生産性をどう上げていくのか、どうしたら辞めないで働き続けてくれるのか、といったことが常に課題でした。私が考えた結論は、「今までと同じことをしていたらダメ」ということ。今いる人たちの実情を分析し、より適切に活用していかなくてはなりません。また、新たに採用する場合は、新卒、中途、パートタイムのどの層に力を入れていくのかをしっかりと見極める必要があります。

大室:具体的に、どのようなアプローチを考えたのですか。

中村:働きたいと思う人の状況はさまざまなので、柔軟に対応することです。例えば主婦は、長い時間働くことができません。子どもが学校から帰ってくる時間には家にいたいという人が多いため、時間的な制約を設けてしまうと、マッチングできません。そういう場合は仕事を分業すればいいのです。例えば朝から夕方くらいまでは主婦に任せ、そのあとに社員にバトンタッチする。そうすると、働きたい主婦の雇用創出と、社員の長時間労働の解消を同時に実現できます。これは、シニアの場合も同様です。仕事を分業していくことで、働きたいと思っている人たちの仕事を作っていけばいいのです。

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その他にも、出戻り社員の採用などを行っていました。ポイントは、社員が辞めるときに綺麗な辞め方をしていること。退職後も客として来店したり、相談に来たりしているうちに、改めて会社の良さを認識し、再度働きたいと思うようになることもあるからです。そのため、社員が辞めるときの関わり方をとても大切にしていました。

米山:働き方に関する、いろいろな選択肢を提示することが大事だと思います。例えば、兼業や副業。自社だけでなく他社で働くことを認めるのも一つの方法です。また、人手不足のことを考えると、シニアの活用がポイントとなります。現行法では65歳が一つの分岐点となっていますが、健康な高齢者が増えてくるこれからは、シニアの人たちが70歳まで働くためにどのような働き方を提示できるのかが重要です。

大室:まさにダイバーシティが求められている現在、自社の価値観に共感してくれる限りは、年齢・性別などを問わないことが重要ですね。自社の価値観を社外に提示していくことが、より大事になりそうです。

中村:その点で言うと、当社は「感動提供業」であることを前面に打ち出しています。業態としては飲食業ですが、目先の作業ではなく、お客さまに感動を提供していくことをビジョンとして見せていくことが重要だと考えているからです。現在では飲食だけではなく、介護や保育など、他の分野にも事業が広がっています。

大室:ところで近年、副業や兼業、フリーランスなど、いろいろな働き方が可能となっています。さらに、テクノロジーの進歩に伴って、リモートワークなども盛んに行われるようになりました。その結果、働き方の規制緩和が進み、自分で自分の働き方を決められるようになってきています。皆さんの企業では、どのように対応をされていますか。

宮田:IT業界ではエンジニアの取り合いが激しく、リモートワークを認めないと採用できない状況です。ただ一方で、リモートワークを取り入れると生産性が下がるのも事実。そのため当社の場合、1週間に1回という限定的な導入を行っています。生産性を上げるには、会社に来てもらうことが不可欠だと考えているからです。会社に来ることが楽しい、会社のほうが仕事がはかどると感じられるよう、会社に来ることに対するインセンティブをいろいろと考えています。

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米山:マクロ的な視点からも、今後の働き方としてジョブ型に寄っていくことは明らかです。実際、最近のAI人材の採用などを見ても、そうした傾向が出ています。しかし、取るべき施策は均一ではありません。各社の置かれた状況によって、より生産性の高い方法を考えていくことが重要です。

働き方×テクノロジーの可能性

大室:働き方の多様化に関しては、テクノロジーの発達が大きく寄与していると思われます。特にクラウドサービスを利用すると、生産性が高くなると言われていますが、実際にはいかがですか。

宮田:クラウドサービスを使っている会社は、使っていない会社と比較して生産性が30%高いという結果が出ています。クラウドサービスの場合、自動的にアップデートされ、生産性の高い状態が常にキープできるのが大きな特徴と言えます。アメリカでは2,000人以上の企業の場合、1社当たり200以上のクラウドサービスを利用しています。それに比べると日本の企業はまだまだ少なく、生産性にも影響しているように思います。

米山:セキュリティの問題が解消できれば、日本でもクラウドサービスの利用が進んでいくのではないでしょうか。

中村:サービス業の場合、クラウドサービスで効率化していく部分と、人と関わるアナログでやった方がいい部分をしっかりと見極め、棲み分けしていくことが重要だと思います。

宮田:働き方の規制緩和によって、いろいろな働き方が出てきました。その結果、過去の成功事例が使えないという難しい時代になっています。だからこそ、人事はより従業員と向かい合うことが必要であり、今後、長く使えるような制度やシステムを運用していくことが求められます。当社でもクラウドサービスの提供を通じて、企業における効率化の実現を支援していきたいと考えています。

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本講演企業

「SmartHR」は、企業が行う社会保険・雇用保険の手続きを自動化するクラウド人事労務ソフトを提供しています。導入企業数は2万5000社以上、煩雑で時間のかかる労務手続き・労務管理から経営者や人事担当者を解放するサービスです。

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