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テクノロジーの進化で「働き方」と「人事」の未来はどう変わるか

  • 大久保 幸夫氏(株式会社リクルート 専門役員 兼 リクルートワークス研究所 所長)
  • 井上 智洋氏(駒澤大学 経済学部 准教授)
  • 源田 泰之氏(ソフトバンク株式会社 人事本部 副本部長 兼 採用・人材開発統括部 統括部長 兼 未来人材推進室 室長)
TECH DAYパネルセッション [TF]2020.01.07 掲載
講演写真

AIやビッグデータなどのテクノロジーの進化はさらに加速している。これに伴い、人事のあり方や役割も変わりつつある。AIに精通した経済学者である駒澤大学の井上氏、ソフトバンクの人事本部 副本部長で採用・人材開発などを統括する源田氏を迎え、リクルートワークス研究所代表の大久保氏の司会で、「働き方」と「人事」の未来がどうなっていくのかを議論した。

プロフィール
大久保 幸夫氏( 株式会社リクルート 専門役員 兼 リクルートワークス研究所 所長)
大久保 幸夫 プロフィール写真

(おおくぼ ゆきお)1983年、株式会社リクルートに入社。人材総合サービス事業部企画室長、地域活性事業部長を経て1999年にリクルートワークス研究所を立ち上げ、所長に就任。2010年~2012年、内閣府参与を兼任。2011年、専門役員就任。現在、財務省アドバイザー、文部科学省中央教育審議会生涯学習分科会委員、一般社団法人産業ソーシャルワーカー協会理事、一般社団法人人材サービス産業協議会理事なども務める。働き方改革やマネジメント改革、ダイバーシティ経営などの研究を進め、著書に『働き方改革 個を活かすマネジメント』『マネジャーのための人材育成スキル』(日本経済新聞出版社)などがある。


井上 智洋氏( 駒澤大学 経済学部 准教授)
井上 智洋 プロフィール写真

(いのうえ ともひろ)駒澤大学経済学部准教授、早稲田大学非常勤講師、慶應義塾大学SFC研究所上席研究員、AI社会論研究会共同発起人。博士(経済学)。慶應義塾大学環境情報学部卒業。2011年に早稲田大学大学院経済学研究科で博士号を取得。早稲田大学政治経済学部助教、駒澤大学経済学部講師を経て、2017年より同大学准教授。専門はマクロ経済学。最近は人工知能が経済に与える影響について論じることが多い。著書に『新しいJavaの教科書』『人工知能と経済の未来』『ヘリコプターマネー』『人工超知能』『AI時代の新・ベーシックインカム論』『純粋機械化経済』などがある。


源田 泰之氏( ソフトバンク株式会社 人事本部 副本部長 兼 採用・人材開発統括部 統括部長 兼 未来人材推進室 室長)
源田 泰之 プロフィール写真

(げんだ やすゆき)1998年入社。営業を経験後、2008年より現職。グループ社員向けの研修機関であるソフトバンクユニバーシティおよび後継者育成機関のソフトバンクアカデミア、新規事業提案制度(ソフトバンクイノベンチャー)の責任者。SBイノベンチャー・取締役を務める。孫正義が私財を投じ設立した、公益財団法人孫正義育英財団の事務局長。育英財団では、高い志と異能を持つ若者が才能を開花できる環境を提供、未来を創る人材を支援。教育機関でのキャリア講義や人材育成の講演実績など多数。


大久保氏によるプレゼンテーション:
日本に合ったやり方で、HRテクノロジーの進化を模索すべき

冒頭、大久保氏は「HRテクノロジーでは、日本は後進国。そうしたなか、本セッションでは人事はどう向き合っていけばいのか、どのあたりで使えるのか、どんな未来を映し出そうとしているのかについて議論したい」と切り出した。

「世界的に見ても、HRテクノロジーはほとんどが採用におけるプロセスで利用されています。『大量採用』『より効率的な採用』『より優秀な人材の採用』が基本的なコンセプトとなっています」

しかし日本では、むしろその周辺でテクノロジーを求めるニーズが発生していると大久保氏はいう。背景にあるのは、働き方改革や人手不足だ。

「重要な概念はタスクマネジメントです。どんな仕事を行っているのかをタスクに分解して、一部を廃止したり、プロセスを自動化したり、マルチ化や組み替えたりしていくことがメインとなっていて、それを助けるためにさまざまなところでテクノロジーが使われています。加えて、今は複雑かつ多様な人材ポートフォリオを活用しなくてはいけないので、マッチングでもテクノロジーのニーズがあります」

講演写真

また、働き方改革により、多くの企業が従業員のテレワークを促進している。テレワークを成功させるには、最初にどんな成果を求めているのかを決めるマネジメントがポイントとなる。これができれば、副業を活用し知識や技術をシェアしていけるようになると大久保氏は語る。

「日本は海外と比べて遅れているといっても、海外で行われていることをなぞる必要はありません。日本に合ったやり方のなかでテクノロジーが進化していくことが、日本企業が勝つための方法だと思います」

井上氏によるプレゼンテーション:
従業員が幸福に働ける環境を作ることが、今後の人事の重要な仕事

経済学者の井上氏は、AIが仕事をどのように変えていくかを論じるため、リテールAIの事例を挙げた。AIでどれくらい業務を自動化できるのかを五つの段階で示し、「最終的に目指しているのは、完全無人店舗。小売業界は、かなりAIが進んでいる」と語る。一方、政府も2030年までの物流の完全無人化、2040年までの農林水産業や建設工事の無人化を目標に掲げている。こうした方向に世の中が進んでいるのは間違いないようだ。

すると、「人間の仕事はなくなってしまうのではないか」という議論が出てくるが、井上氏は、「クリエイティビティーとマネジメント、ホスピタリティーに関わる職種は残る」と強調した。

講演写真

次に井上氏が触れたのは、AIが変える人事だ。既にいろいろな罠が潜んでいることが指摘されている。例えば、「緊張する人に不利にできている」「減点方式である」「見かけを重視してしまう」などだ。これらをAIに判断させるという考え方もあるが、過去のデータによってしまうと、どうしても新鮮な判断は難しくなる。

「特にクリエイティビティーを持った人材を選ぶときに、IT任せとはいきません。どうしても人間が直感、感性で判断しなければいけない。そのため、アナログとデジタルをうまく組み合わせることが大事です」

さらに健康経営という概念、特に「幸福管理」というキーワードについても語った。「幸福だけでなく、楽しく働けているかどうかがこれから大切になってくる」というのが井上氏の考えだ。

「従業員が幸福に働ける環境を作ることで、経営者も従業員もWin-Winの関係を築けるようになります。これからの人事の仕事はAIの力を借りて、そのような職場を実現することです」

源田氏によるプレゼンテーション:
データを人にとってプラスに使うことにこだわる

源田氏は、ソフトバンクがどのようにHRテクノロジーを活用しているかについて語った。基本的な姿勢は「まずやってみて、できるかどうかを検証しよう」ということだ。

「大切にしているのは、データの蓄積や整理・分析。また、データを使われる側にメリットがある活用にすることを前提にしています」

現在トライしていることの一つは、ピープルアナリティクスだ。これまでの経験や行動、スキルに、行動特性や性格特性に関するデータを合わせることで、どんなものが出てくるのかの検証に挑んでいる。もう一つは、パルスサーベイの導入だ。

「これらを生かして、将来的には人と人、人と事業とのマッチ度を上げていきたいと考えています。活動データだけでなく、さまざまなデータを組み合わせることで、人材の最適配置の実現などを目指していきます」

他にもソフトバンクでは、採用において、IBMのWatsonを活用したエントリーシートの評価判定や応募者や内定者からの問い合わせ対応でのチャットボットの活用などにより、自動化できる人事担当者の業務は自動化し、応募者との対面でのコミュニケーションなどの本来の採用業務により多くの時間を充てるようにしている。エントリーシートの評価においては、Watsonが不合格だと判断した場合、人事担当者の目で必ずチェックして最終的な合否を判断するようにしているという。

講演写真

さらに、ソフトバンクでは2020年の本社移転に合わせ、新社屋で映像解析、顔認証、ロボットなどの最先端テクノロジーをフル活用していくことを予定している。「それらを通じて得られるデータを生かして、さらに働く環境を良くしていこうと考えています。まだまだデータは足りません。いろいろなことにチャレンジしてデータを取っていき、それをAIなどを活用して分析し、人間ができないことをさらに解決していくのが最終ゴールです」

ディスカッション:
採用選考と健康経営にAIをどう活用するか

大久保:お二人から共通で出た話題がありました。一つは、面接の話です。採用選考ではAIを使った方が良いのでしょうか。

源田:使い方はいろいろあると思いますが、当社は採用選考の初期スクリーニング・エントリーシート評価の補助として利用しています。AIやテクノロジーは効率化に役立ちます。実際、当社でも業務の効率化を実現できています。

井上:AIは画像認識が発達しているので、使うべきです。面接を受ける学生が話している様子を動画で撮影すれば、特徴をAIで判断できます。ただ強力であるがゆえに、使っても良いのかどうかをしっかりと考えなければなりません。

大久保:海外には、画像認識を活用したサービスが多数あります。学生に動画を送ってもらい、AIで判断しています。

源田:当社では、インターンの参加者を決めるための選考で動画選考を導入しています。その動画も将来的にはAIで評価できるのではないかと考えています。ただ、仮に実現する場合は、どんな使い方をするのかをしっかりと説明しなければいけませんし、エントリーシートのWatson活用の事例と同様に、不合格になった場合は、人間の目でも検証しようと思っています。学生にとって不公平にはしたくないですし、納得感を持ってもらいたいからです。

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大久保:大量に採用している海外の企業の多くは、業務の半分以上をAIで自動化しています。どこまでAIで行ってもいいのか、その境界についてご意見はありますか。

井上:AIは客観的な判断に活用できますが、全てを任せるのは怖いことでもあります。また、過去のデータに基づいてばかりでは時代の変化に追いつけませんし、過去に採用できなかった、原石となるような人材を掘り起こすのは難しいように思います。クリエイティブな人材を確保するために、採用基準そのものも変えて行く必要があります。

大久保:AIには、過去の差別的な選考も踏襲してしまうという欠点があります。一方で、AIだと人種や性別などを隠して選考できるメリットもありますね。ではここで、二つ目のテーマに移りましょう。社員の健康をAIで把握しながら、パフォーマンス向上へとつなげることは可能でしょうか。

源田:当社では、個人の健康状態を知るためにパルスサーベイを導入しています。本人の同意のもとに上司に開示し、問題がある場合には、できるだけ早いタイミングで気付いてもらうようにしています。働き方が多様になっている現在、上司と部下とのコミュニケーションはますます重要になっていますので、健康状態に関するデータを共有することは有意義だと考えています。

大久保:井上先生は、健康経営におけるAIの可能性をどうお考えですか。

井上:健康状態を直接知るだけでなく、健康な環境をどう作るかということも、AIで支援できます。メールの文面を解析して、うつ状態を判断することもできるようになります。

大久保:ただし、ストレスチェックや健康診断の結果はかなり慎重に扱わなければいけませんね。

井上:上司に開示するのではなく、本人にAIがアドバイスする形であれば良いのではないでしょうか。例えば、ウェラブルセンサーで自分の体調を判断することもできますね。

大久保:ロングレンジで考えた場合、AIと人事、働き方はどんな方向に向かっていくとお考えですか。

井上:人間の仕事はクリエイティビティー、マネジメント、ホスピタリティーの部分で残っていくと思っています。ただ、クリエイティブな仕事が増えるといっても、一つの会社に所属してそこで完結すると思えません。そうすると、人事は管理が難しくなってくる。当然、人事のあり方も変わってきます。会社と個人が対等な関係で働き方を議論し、そのなかで人事のあり方を考えていく必要があると思います。

源田:あるパネルセッションに参加したとき、私以外のパネリストは「いずれ人事の仕事はなくなる」と話していました。しかし、人事の仕事にもクリエイティビティーやホスピタリティーの部分は必ずあります。人事におけるクリエイティブとは、事業戦略に基づいた人材戦略や人事戦略を立てるところなどがいえますが、そういったことは残るのではないでしょうか。ただし、人事に求められるスキルは変わっていくと思います。

大久保:AIが取って代わる仕事は何なのかという議論は、無意味です。AIを使って生産性が向上するのなら、やるべきです。その代わり、人がやることには付加価値を付けなくてはいけません。そのキーワードが、クリエイティビティーやマネジメント、ホスピタリティーです。今後、仕事をする全ての人はAIとパートナーシップを組むようになっていくはずです。人事の仕事も同様です。全ての領域でAIが活用されるようになりますが、人間がやるべき仕事は形を変えて残り続けると考えます。より細分化、専門化されつつあり、10年後には仕事の中身が相当変わっているでしょう。人事には、AIやテクノロジーに関するリテラシーがますます求められています。

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