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人生100年時代に求められるキャリアデザインとは
「組織内キャリア」から「生涯キャリア」へ

  • 宮城 まり子氏(キャリア心理学研究所 代表/臨床心理士)
東京基調講演 [H]2020.01.10 掲載
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人生100年時代といわれるこれからの時代には、キャリア形成を社内組織の中に限定して考えるべきではない。現役のうちから、定年後になっても社外の組織や社会の中で「いかに自分を生かしていくか」というキャリアの捉え直しが重要になる。生涯にわたるキャリアをデザインするには、何から始めるといいのか。キャリアデザインの考え方や行動のポイントについて、キャリア開発の第一人者である、宮城まり子氏が語った。

プロフィール
宮城 まり子氏( キャリア心理学研究所 代表/臨床心理士)
宮城 まり子 プロフィール写真

(みやぎ まりこ)慶応義塾大学文学部心理学科卒業、早稲田大学大学院文学研究科心理学専攻修士課程修了。臨床心理士として病院臨床(精神科、小児科)などを経て、産能大学経営情報学部助教授となる。1997年よりカリフォルニア州立大学大学院キャリアカウンセリングコースに研究留学。立正大学心理学部教授、法政大学キャリアデザイン学部教授を経て、2018年4月から現職。専門は臨床心理学(産業臨床、メンタルヘルス)、生涯発達心理学、キャリア開発・キャリアカウンセリング。他方、講演活動や企業のキャリア研修などの講師、キャリアカウンセリングのスーパーバイザーとしても精力的に活躍している。著書に、『キャリアカウンセリング』(駿河台出版社)、『産業心理学』(培風館)、『7つの心理学』(生産性出版)、『「聴く技術」が人間関係を決める』(永岡書店)などがある。


「3分割人生」から「マルチ人生」へ

キャリアの捉えなおしを考えるにあたって、変わるために必要な「気づき」がまず重要だ。では、「気づき」を得るためにどうすればいいのか。宮城氏は、四つの方法があると語る。

一つ目は、自分のキャリアを書き出してみること。時系列に書いてみると、自分がその仕事の中で何を得て、どのような経験をし、どんな知識やスキルを得て、人脈を形成してきたのかが見えてくる。二つ目は、自分の歩みについて話してみること。キャリアの言語化にあたっては、まとめや整理が必要になるため、自分を明確化することができる。三つ目は、他の人と意見交換してみること。いろいろな人と意見を交換することにより、他者との比較や違いの中から自分に気づく。四つ目は、具体的な行動に移してみること。頭の中での考えと行動との差異を通じて自分を見つめ直すことができる。

「人生100年と考えると、50歳は人生の正午です。50歳は後半のキャリアへのキックオフにあたる歳で、その後も定年後の人生は何十年も続きます。長い後半の人生を見据え、豊かなキャリアを形成するためには、節目節目で自分を見つめ直し気づくことが大事です。

『LIFE SHIFT』という本が昨年話題になりましたが、その中では長寿化によって人生のステージが多様化することが述べられています。つまり、これからの人生には、セカンド、サード、フォースキャリアもあるのです。自分がどうありたいのか、何をやりたいのか、自分の人生をどのようにつくっていくのかを、一人ひとりがしっかりと考えていくべき時代になったのです。生涯発達心理学では“人は生きている限り死ぬその日まで、生涯にわたり絶えず成長・発達し変化する存在である”と人間を捉えています」

これまでは、「学生時代は勉強ばかり」「社会人は仕事ばかり」「定年後は暇ばかり」の3分割の人生だった。しかしこれからは、組織内だけのキャリアを考えるのではなく、現役のときから環境に合わせて絶えず「学び直し」をしながら、マルチ人生の創造の時代になる、と宮城氏は説く。

マルチ人生におけるキーワードは「学び直し」だ。環境が目まぐるしく変わる中では、経験や知識やスキルは次第に陳腐化していく。最近は「あなたは何をしたいのか」「そのためにはどうしたらいいと思うか」と問いかける、質問型のマネジメントを大切にするようになっており、かつて一般的だった指示命令型のマネジメントでは通用しない。自分が受けた育成方法は、今の若い人に対してうまく機能しないため、新たなマネジメント方法を学び直す必要がある。同様に、かつて培ったものだけではキャリアを形成していくことはできない。環境変化に合わせて絶えず学び直しながら、新たに開発していくことが求められる。

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「ところが『学び直す時間がありません』『忙しくて本を読む暇もありません』という声をよく耳にします。大切なことは、学び直しのための“時間管理のあり方”です。例えば、いつもカバンに本を入れておけば、電車やバスの待ち時間のわずかな時間でもページをめくることができます。それを続けて1ヵ月に1冊読めば、年間12冊。テーマを一つ決めて12冊読破しただけでも、ある分野の専門性を身につけることはできます。

キャリア形成の過程は、自分の強みや専門性をいかにつくっていくか、ということでもあります。いま何を学ぶのかという意識を持つことにより、学び方は大きく変えられる。行動を通じて、3分割人生をマルチ人生へと自律的に変えていかなければなりません」

キャリアデザインのための六つの問いとアプローチ

環境変化に対して、変幻自在に対応するためには大切な五つのスタンスがある、と宮城氏は語る。(1)自分をありのまま受け容れていく。(2)環境ニーズに合わせた継続的な自己変革を行う。(3)知的な謙虚さ。スティーブ・ジョブスの“Stay Hungry, Stay Foolish”という言葉でも知られているが、知っているつもりでも知らなければいけないほどには知らないのだ。(4)生涯育“自”。生涯キャリアをつくっていくには、自分を育て磨くのは自分自身という意識を持つ。 (5)深い人間力を磨く。仕事力だけではなく、「この人と将来一緒に仕事をしたい」「この人と一緒に社会的な活動をやってみたい」と思わせるような人柄や人間的魅力づくりを行う。

キャリアデザインに際しては、次の六つの問いを自分に投げかけてみる。(1)自分はどうありたいのか、何をしたいのか、自分をどう活かしたいのか。それはなぜか。(2)自分は何に興味・関心があるのか、何が好きなのか。それはなぜか。(3)何ができるのか、強み、売り、専門性、付加価値は何か。(4)自分が大切にしたい価値・価値観は何か。人生において何を優先するのか。(5)自分の役割、責任、指名、期待されている事は何か。(6)これらをふまえて具体的にやるべきこと、行動、今後に備えて今から準備することは何か。

「(1)の問いでは逆に、何をしたくないのか、どうありたくないのか、とイメージしてキャリアの軸を考えていく方法も効果的。絶えず自分に問いかけ、内省し整理してみることがポイントです。(4)の問いは特に大事。最終的に、キャリア選択とは自分の価値観に基づいて進めていくもので、キャリアの本質を示すものです」

では、実際にキャリアをどうデザインしていくのか。三つのアプローチ法がある。一つ目は、「現在の担当職務にしっかりと取り組む」。どんな仕事からも得るものは必ずある。この仕事からどんな経験・スキル・人脈が得られるのかを常に意識して働くことが重要になる。そのためには、現在の職務を見直して向上させる努力を行う。二つ目は、「3年後・5年後・10年後になりたい自分、やりたいことを具体的にイメージして行動する」。先の展望や計画がなければ、やるべきことが明確化されず、時間だけが過ぎてしまう。

三つ目は、「会社外で社会的な活動や関心のあることを行う」。人脈づくりの際には、見返りを求めないgive&giveの精神で接し、相手にとって価値ある自分になろうという意識が鍵になる。副業や兼業による二枚目の名刺を持つことは、キャリアの土台にもなる。プロボノという自分の専門性を生かした社会貢献活動も増えてきたが、複数の名刺を持ち、本業の他にも並走していろいろな社会活動に取り組むパラレルキャリアのスタイルが、これからの時代には望ましい。すなわち、家庭と会社以外の第3場所を持ち、自分が刺激を受け学びが得られる場所をつくっておくことが大切だ。

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キャリアの転機は再設計をするチャンスでもある

宮城氏は、キャリアは必ずしも一直線で右上がりにはならない。安定と不安定の間で揺れて節目には過渡期がある、という。

「安定したキャリアを積んできても、ゼロから再び新たな仕事をしなくてはならないようなときがある。昇進や昇格が停滞するという“階層のプラトー”、業務のやりがいや方向性を見失い停滞するという“仕事のプラトー”といった不安定な時期もあります。しかし、このようなキャリアの危機のときには、むしろキャリアを再設計するためのチャンスだと捉え、自分を見つめ直すことが必要です。

プラトーからの脱出法は、自分との対峙。今、自分がどのような状況にあり、なぜモチベーションが低下してしまったのか、自分を再び立て直すためには何が大事なのかなど、自己と深く向き合って対話をするのです。常に右肩上がりでキャリアは形成されません。必ずしもポジションや職位がキャリアを意味しない。社外にもどんどん出て、多様な人たちと交流し、社会活動の中から刺激を受けてください。自分自身の中でイノベーションを起こしていくチャンスです」

キャリアの転機には、何かが終わり何かが始まる、その中間にニュートラルゾーンがあると宮城氏は語る。このときに大事なことが七つある。(1)自分で責任と自覚を持って自分のキャリアを管理すること。(2)転機によって何が変わるのか、その影響は何かを明らかにすること。(3)思い切って打てるものは何か明確化すること。(4)転機によって終わるもの失うものは何かを明確化すること。(5)葛藤や迷いも含めて自分の気持ちをありのまま受容すること。(6)人脈も含めて、維持・継続するもの、安定しているものを明確化すること。(7)重要な決断をする時には時間をかけることだ。

「これらの七つを心がけていくと、次に起こす具体的な行動にうまく移行しやすくなります。考えて準備ばかりしていてはダメ。一歩前に出るという行動をとにかく始めてください。『まず行動してごらん、行動して修正していけばいい、キャリアは行動をまず始めることからつくれていく』という言葉もあります」

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物事の捉え方が心と行動を変え、自律性を高めていく

行動や心のあり方は“捉え方”に規定される、と宮城氏は強調する。キャリアで悩んでいるのは、悩むように意味づけしているからであり、落ち込んでいるのは、落ち込むような考え方をしているからといえる。出来事や事実をどう考え、どう意味づけるかによって、行動や心のあり方を変えることはできる。次のキャリアのステップへと自分を進め変えていくのも、自分の捉え方(考え方)次第だ。

「不確実な未来を前向きに捉えるという“Positive uncertainty”という考え方もキャリアデザインの参考になります。また、設計した自分の未来を意識することにより、その未来は自分を引っ張っていってくれるドライブになります。また、左脳での分析だけではなく、自分のありたい姿や夢は何かと右脳で創造することも大切にしながらキャリアを描く、全脳型キャリアデザインも大切です。頭でっかちにならずにありのままの自分を思いやってみるのです」

プランド・ハプンスタンスという、計画通りに進まないことが多いキャリア形成をポジティブなものへと転換させる考え方についても宮城氏は解説した。キャリアのプロセスは偶然の連続からなるが、その偶然を自分でいかに生かしていくかが大事であり、受け身で待っているのではなく、自ら行動しなければ偶然には出会えない。そして、偶然現れるチャンスを掴めるか否かは、日頃からの自分の準備性による。チャンスは準備のある人のところにやってくるということだ。

「ここまでお話しした考え方は、キャリア自律という概念に通じるものです。自分のキャリアは、上司や人事が決めるわけではなく、絶えず自律的に考えることが重要です。そんな一人ひとりの自律性が育まれるような制度や仕組みを導入し支援することが、これからの人事には求められます。例えば、社内公募制度、生涯学習制度、ワークスタイルの自由化、キャリアデザイン研修、1on1のキャリア面談などを用いて、気づきを与え、選択肢を広げていく。そのようにして、継続的な学び直しの風土を組織の中に醸成していけば、個人の成長は必ず組織の成長へとつながっていきます。

一人ひとりが自分のキャリアを考えられるような組織でなければ、会社の成長は望めません。人事の皆さまにはクルマの両輪のように、個人と組織が互いに成長しあいながら、うまく回っていくような組織風土、人事制度をつくってほしいと思います」

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