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世界14万人を率いたブリヂストン元CEOと考える
~日本企業に必要なリーダーシップ~

  • 荒川 詔四氏(株式会社ブリヂストン 元CEO)
  • 真田 茂人氏(株式会社レアリゼ 代表取締役社長/NPO法人日本サーバントリーダーシップ協会 理事長)
東京特別講演 [I-5]2019.12.24 掲載
株式会社レアリゼ講演写真

ITの発達により、日本企業はグローバル市場にさらされるようになった。グローバルで戦う企業には、どんなリーダーがふさわしいのだろうか。トップダウンで物事を進めるワンマン社長なのか、メンバーに寄り添い小さな声を拾い上げる傾聴タイプなのか。本セッションでは、世界14万人の従業員を率いたブリヂストン元CEOの荒川詔四氏を招き、日本企業に必要なリーダーシップについて聞いた。

プロフィール
荒川 詔四氏( 株式会社ブリヂストン 元CEO)
荒川 詔四 プロフィール写真

(あらかわ しょうし)入社後タイ、中近東、中国、ヨーロッパなどでキャリアを積む。アメリカの国民的企業ファイアストン買収を取り仕切る。タイ現地法人CEOとして国内トップシェアを達成。東南アジアにおける一大拠点に。ヨーロッパ現地法人CEOとして厳しい経営状況にあった欧州事業の立て直しを成功。 2006年本社CEOに就任。


真田 茂人氏( 株式会社レアリゼ 代表取締役社長/NPO法人日本サーバントリーダーシップ協会 理事長)
真田 茂人 プロフィール写真

(さなだ しげと)株式会社リクルート、外資系金融会社、人材サービス会社設立を経て、株式会社レアリゼ、NPO法人日本サーバントリーダーシップ協会を設立。サーバントリーダーシップの普及を通じ、個人の意識変革を起点とした組織開発を行うことを強みとし、日本を代表する企業・官公庁など幅広い分野で多数の研修導入、講演実績がある。


やり方・考え方・あり方の三拍子が揃って初めて、組織改革は成功する

株式会社レアリゼは、「人と組織と社会を幸せにする」というミッションのもと、サーバントリーダーを育成することで“良い組織”づくりを支援している。サーバントリーダーシップとは、リーダーとは自らがまず相手に奉仕し、その後導くものという考え方だ。同社代表取締役社長の真田氏はこれまで、さまざまなタイプの経営者と出会ってきた。その中で、組織改革においては「やり方・考え方・あり方」の三拍子がそろって初めて成功するものだという発見があった。やり方とはスキル、考え方とはロジックやメカニズム、そしてあり方とは哲学やマインドのことだ。

真田氏がブリヂストン元CEO荒川氏の自著『優れたリーダーはみな小心者である』を読んだとき、まさにレアリゼが追求してきたサーバントリーダーシップの実践者だと感じたという。

荒川氏はまず、ブリヂストンを取り巻く環境について解説した。1931年に福岡県久留米市で創業した同社は、今や世界最大のタイヤメーカー。従業員は世界に約14万人いるが、うち4分の3は非日本人だ。生産・研究開発の拠点は世界約180ヵ所にある。他社と比較したときにブリヂストンに見られる特徴は、サプライチェーンを厚く保有していること。ブリヂストンの天然ゴム園はインドネシアのスマトラやカリマンタン、アフリカのリベリアにもある。

タイヤと言えば車のイメージだが、他にもさまざまなところで使われている。例えば、航空機や鉱山用車両。これらは専門的な知識が必要とされるため投資額がかさむ。ブリヂストンという母体の大きさがあるからこそ、開発にコストを割くことができ、航空機メーカーとの取引が可能になる。競合は多いが、大企業ならでは優位性がある。

講演写真

「私は1968年にブリヂストンに入社して依頼、ほとんどの期間を海外で過ごしました。私の経歴で最も特徴があるとすれば、1988年米国企業のファイアストン社の買収のとき、社長秘書として事務方を務めこと。今と比べるとはるかに小さい金額ですが、当時の日本企業としては最大額。朝5時半に出勤して、夜1時過ぎに帰るという日々を過ごしていました。この買収を成功させたことで、ブリヂストンは世界No.1のタイヤメーカーとしての地位を確立していきました」

繊細さを束にして強靭な神経へと変える、小心者で優秀なリーダー

日本企業に必要なリーダーシップとはどんなものだろうか。日本企業は今後、企業規模にかかわらず、グローバル競争にさらされることになる。荒川氏は「グローバルレベルのリーダーシップが必要だ」と持論を展開する。

「そもそもリーダーシップというのは、組織の長でなくても、個人がそれぞれ持ち合わせているものだと思います。単に「組織の長だからリーダー」ということではありません。個人であっても組織であっても、リーダーシップを身に着けることが人生を豊かにします。社会はますます変化が激しくなります。不確実性の多い時代、リーダーシップは生き抜く力になります」

2006年にブリヂストン本社のCEOに就任した荒川氏は、すぐにリーマンショックに見舞われる。回復したかと思えば、次は東日本大震災が待ち構えていた。

「有事のとき、組織はとにかく目先の混乱を乗り越えようと動きます。社長が指示しなくても、自分たちで考えて必要なことをする。火事場の馬鹿力が働くんですね。言ってしまえば、現場では『決められたリーダー』というのは必要がないのです」

現場には「決められたリーダー」は必要ないが、組織のリーダーは何をするのか。荒川氏は、「目先の危機」ではなく「危機の先」を見ることがリーダーの役割だと話す。そして、自身が上梓した本のタイトルにもあるように「真の小心者」であることが大切だという。

「これまでお付き合いした世界のリーダーに、豪胆な人はいませんでした。繊細な方ばかりでしたが、逆にそれらの繊維を束ねることで、強靭な神経を作り上げているようでした。繊細さの集合体は、実体験の積み重ねによって生まれます。勉強ができることが良いリーダーではないのです。困難やトラブルにぶち当たったとき、繊細さを併せ持った人だからこそ、それを乗り越えられるのだと思います」

心配で仕方がないから、思考が深まる。荒川氏はそう話す一方で、理想主義で楽観主義あることも大切な要素だという。楽しいことを探しながら、トップを目指す。「臆病な楽観主義者」が最強であると説く。

講演写真

リーダーシップ研修は昇進後ではなく、若いうちに受けさせるべき

続いてテーマは「リーダーの育成」へ。人は「リーダーシップがある人」と「ない人」の2種類に分けられると、荒川氏は断言する。その中間や、状況に応じて発揮したりしなかったりするものではないというのだ。また、リーダーシップがない人でも、努力や教育で身に着けることができるという。

「しかし、管理職になってからリーダーシップ研修を受けるようでは遅い。何度も逃げた後では身に付かないからこそ、若年層にこそリーダーシップ研修が必要なのです。課長には課長なりのリーダーシップがあり、部長には部長なりのリーダーシップがある。階段状になっているだけで、誰にでもリーダーシップは必要なのです」

ここで荒川氏は「リーダーシップがある人」になるために必要なことを挙げた。まずは「チャレンジさせる」ことだ。

「大事なのは自分の頭で考えさせることです。デジタル時代、どこからでも情報がすぐに入手できます。意識しないと、自分の頭を全く使わないで生活できてしまいます。情報を集めて組み立てて……という補助的な働きを“頭を使う”と呼ぶのも、少し違うと思います。教える側は、道順を教えたり枠にはめたりしないこと。自分の頭で考えるためには、既存のフレームワークが邪魔になることもあります。とにかく大切なのは、失敗してもいいという空気感です。失敗したって会社がつぶれるわけではないし、業績に大きく関わるわけではない。失敗する可能性があっても、やりきることが重要だというマインドセットにさせなくてはいけません」

リーダーシップというスキルを育むには、土台となる基礎力が必要だ。荒川氏はまず「現場」で基礎力を身に付けるよう進言する。海外でダイバーシティ&インクルージョンを体感し、一定期間そこに住むことで現地の空気感を身に付ける。そして、できれば平社員として現場に赴くこと。ポジションがあると、人は肩書を意識して動きが鈍くなるからだ。荒川氏は「百聞は一見に如かず。されど、百見も一住に如かず」との言葉を残した。

また、人材育成を仕組み化して多くの人材を育て上げるためには、「人材育成アカデミー」を主な事業所に配置することが有効だと荒川氏はいう。

基礎力を固めた後は、グローバル人材のベースとなる「基礎人間力」を身に付ける。ここでいう「基礎人間力」とは、次のようなものだ。前向き、逃げないこと、多様性、フェアネス、率直、誠実、熱意、そして真の小心者であること。

講演写真

日本人は同じような考え方、同じような格好で、同じ属性のなかで生きてきたので、反抗しないことが心地のいい空間だが、それではグローバルで戦えない。「基礎人間力」を身に着けたら、次は「組織で機能する実力」だ。他社へのリスペクトと傾聴力、他者から学ぶ力、コミュニケーション力、多様性を生かす力、行動力/実行力、考え抜く力、深く高く考える力、論理的で説得できる力、先回りする力、変化点を捉え生かす力、そして高い専門性。基礎編と比べると、アセットを応用する力が求められる。

「さまざまなスキルを挙げましたが、人には得意不得意があるので、最終的には魅力的な提案を『魅力的なみんなの案』に仕上げる力が大切です。そして、グローバル人材には思考基盤があります。その一つに3現主義というものがあります。3現とは、現物・現場・現実です。現場が答えを出しているのであって、本社にいる社長が結果を出しているわけではありません。プロジェクトリーダーとしてみんなに指示をするのがリーダーではなく、現場をサポートするのがリーダーなのです」

トラブルがあることが、むしろ順調に進んでいる証拠

荒川氏は、「この上司となら、面白いことができそうだ」と部下に思わせるのが良いリーダーだという。また、部下との良好な関係性を作るためには、“トラブル”の捉え方を変える必要があるともいう。

「トラブルが起きるのは当たり前なので、くよくよするなと言いたい。トラブルというのは失敗ではなく、進んでいる証拠。解決できないトラブルはありません。解決を遠ざける方法はただ一つ、嘘を言うこと、ごまかすことです。これだけは絶対にダメです。世の中は、自分中心に回っているわけではありません。トラブルがある状態が『むしろ順調に進んでいる』と考えましょう」

また、新入社員が初めに“報・連・相”を習うように、リーダーにとって部下からの報告は重要な情報となる。ただし、順調な報告はいらない。トラブルに関する情報をどんどん持ってこいというスタンスをとることが大事だ。

「報告をトラブルのみにすることで、時間や知恵を100%解決策のために割けるようになります。経営効率はアップし、経営リスクは低減するなど、良いことばかりなんです。そして地位というのは、実は人をダメにする仕組みだと思っています。地位は人を作るというのは嘘です。昇進するにつれ、いろんな権利を持つようになります。それを振りかざすようなリーダーにはなってはいけません」

荒川氏は、最後に日本のリーダーたちにエールを送った。

「リーダーは、大河のように考えなければならない。継続的に考え、そして先々を考える、または遠くを見るように考える、ということです。ベストを尽くせば“必ず”良い道が開けると思います。“必ず”です。開けなかったり、開いてみたが良い道ではなかったりするのなら、それはベストを尽くさなかったということです」

講演写真
講演写真

最後に真田氏は荒川氏の講演内容を受け、2種類のリーダーシップについて言及した。


「大きな権力を持つことをモチベーションとする支配型リーダーと、地位にかかわらず他者のサポートを喜んで引き受けるサーバントリーダー。実はリーダーとして活躍している人の多くはサーバントリーダーシップのエッセンスを実践しています。なぜなら、そうでなければ組織や人を効果的に動かすことができないからです。今回は荒川さんから、リーダーに求められることをじっくりと、うかがうことができました。本日はありがとうございました」

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