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2020卒内定者の特徴から、内定者・新入社員育成をアップデートする

  • 河野 裕介氏(株式会社ファーストキャリア 営業本部 西日本支社 マネージャー)
東京特別講演 [L-5]2019.12.24 掲載
株式会社ファーストキャリア講演写真

社会情勢や経済動向を受けて、AI、ロボット、VRなどが採用活動に変化を与えている。新入社員の特徴にも変化が見られ、企業は若手の育成方法をアップデートする必要がある。ファーストキャリアは、ファーストキャリア構築期の人材の成長を支援する研修やコンサルティングを支援しており、内定者や新卒者の実態に詳しい。独自調査した2020年卒の内定者レポートから若手育成のポイントを河野氏が語った。

プロフィール
河野 裕介氏( 株式会社ファーストキャリア 営業本部 西日本支社 マネージャー)
河野 裕介 プロフィール写真

(こうの ゆうすけ)大学卒業後、人材派遣会社の法人営業部にて新薬開発業務の人材紹介・企業コンサルティング業務を行う。新規顧客開拓の実績により、社長賞を受賞。2014年、株式会社ファーストキャリアに入社。顧客営業職として各社の新人・若手社員の育成体系・研修設計等の企画を行う。現在は関西支社全体のマネジメントに従事。


若手の持つ三つの傾向と育成の鍵

ファーストキャリアは業界で唯一、若手の育成支援特化という特徴を持つ。今の若手はどんな時代背景から、どのような考え方が形成されてきたのか。幅広い視点から若手の研究に取り組んでいる。最近では、入社時から意図的にリーダー創出を試みるヤングタレントマネジメントに注力。若手以降を対象とした人材育成は、大手企業を中心に経営リーダー育成で高い実績を持つ親会社のセルム社が担う。それぞれが専門特化し、連携することで、より充実した支援を実現している。

「弊社は年に2回レポートを発行し、新入社員研修のタイミングで80社以上1万5000人以上の生の声を集め、その傾向をまとめています。30数名に1対1で数時間インタビューし、本音も聞き出します。2020年に入社する内定者、4年生大学卒者は1997年生まれです。Twitter、Facebook、スマートフォンが当たり前になったのが中学生時代という特徴があります。その傾向は三つ。経験則からの“パターン認識”、足るを知る“完了主義”、“環境順応型”の成長志向です。これらは2019年卒にも共通しています」

経験則からの“パターン認識”とは、これまでに得た多様な経験知識のパターンと照らし合わせることで、人や出来事を素早く理解・把握することだ。多くの情報に囲まれていると全てを間に受けていては情報過多になるため、自分が経験したパターンに当てはめて理解する傾向が生じたと考えられる。理解度は高いが、人や物事に対して決めつけてしまう可能性がある点が危惧されるという。

「次の、足るを知る“完了主義”とは、完璧でなくとも良いと考えて基準を満たすに足る行動を取ることを指します。自分だけの満足レベルに留まる心配はありますが、一方で『ビジネスには正解がない。最適解を求めよう』というようなVUCAの時代に適した特性でもあるので、この点を生かして育てることが望ましいと感じています。最後の“環境順応型”の成長志向とは、環境に自分の身を置き、順応させることにより成長を得ようとするものです。インタビューの中でも『なぜこの会社を選んだの?』と尋ねると『成長できる場だと思ったから』という反応が多い。ただ、その成長自体が目的になってしまっているような感覚です。チームに順応しやすい点は良いので、この点をうまく活かしつつ、自分自身で高い目標を掲げる挑戦意欲を引き出していけると、うまく成長できると考えています」

講演写真

昨今の若者たちが持つ力を未来に必要な力として進化させるには、“面モデル”という考え方が欠かせないと河野氏は言う。“点モデル”は研修単体、“線モデル”は新入社員研修、フォロー研修、現場での経験学習といった時間軸でつないでいく形式を指す。“面モデル”は育つ側だけでなく、育てる側も含めて組織ぐるみで育成に取り組むスタイルだ。

「“面モデル”における育成の鍵は、先ほどお伝えした若者の傾向に対応している三つが挙げられます。一つ目の経験則からの“パターン認識”に対する鍵は、“考える力”学習のあり方のアップデート。具体的には、わかる・できるの違いを体感するための机上ではない体験からの学び、ロジカルシンキング主義からの脱却です。二つ目の足るを知る“完了主義” に対する鍵は、“学習と実践”のサイクルをキャリア構築のOSにすること。具体的には自助努力で経験学習する型の徹底と、“自己完結型”ではなく“周囲との協働型”で学ぶスタイルの癖付けです。三つ目の“環境順応型”の成長志向に対する鍵は、育成推進のための先輩・上司・周囲へのアプローチです。具体的には、若手は自分をどう思っているのかと周囲を気にして小さくまとまったり、受け身になったりする心配があるため、安心安全の場づくり、特に共通言語づくりが重要。育成のために上司が掛けた言葉に若手の心が折れてしまうケースも見受けられるため、言葉の真意についてのすり合わせや合意形成は大切です」

導入事例1:“考える力”学習のあり方アップデート

三つの育成の鍵を取り入れた事例を、最近のケースの中からいくつか河野氏が紹介した。まずは『“考える力”学習のあり方アップデート』を取り入れた事例だ。

「これは、大手IT企業など導入されたもので、『研修期間で一貫するストーリーをつくる』というタイプです。導入背景には、テーマに関連性がない形で研修プログラムが組まれるため、学びを定着させる実践の場がない、風化してしまうという課題がありました。各チームにはまず、研修全てを通じて取り組むテーマを与え、計画を立ててプロジェクトに着手してもらい、中間レビューでフィードバックを受け、最後に発表するというアクションラーニングになります。ポイントとなるのは、学んだ成果をアウトプットする場を設けたこと、HowよりもWhyの議論ができるテーマの設定です。また、N字型のマインド曲線の体験も特徴的です。これは、中間レビューなどで講師が各チームに対して厳しい指摘を与え、挫折を敢えて感じさせ個々のマインドを覚醒させることで、最後の達成感をより高める効果を狙ったものです」

次に『ロジカルシンキングからシステム思考』をテーマにした大手物流企業などの事例が取り上げられた。ロジカルシンキングとは、各要素は相互作用せず、要素の部分を解決すれば全てが解決できるというシンプルな考え方だ。一方、システム思考とは、各要素は時間の経過とともに相互作用するという事象の複雑さを網羅的に捉えた考え方である。後者は、VUCA時代への理解度の高いという若手にとっては吸収しやすい思考法であるため、これを用いたプログラムは大きな学びに結実するといえる。複雑な世界を複雑なままに捉えることから視野や認知の器が鍛えられ、思考ツールの引き出しが増える効果もある。考えが偏ったり二次元論的な否定視点に立ったりせずに、状況を上手に汲み取りバランスを取りながら適切な解を導くことができるため、今後の時代に即した思考法が磨ける。

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導入事例2:“学習と実践”のサイクルをキャリア構築のOSにする

育成の二つ目の鍵である、『学習・実践のサイクルをキャリア構築のOSにする』を取り入れた事例としては、『スキル学習後のアクションプラン実践を相互フォローする』という研修がある。

「新事業の推進のためにセールス力だけではなく、思考力を伸ばしていきたいという指針に対応させたもので、人材紹介会社が導入しました。ロジカルシンキングの学びが定着するまでサポートを続け、その後に設けた実践期間ではアクションプランシートの作成にチーム単位で取り組んで振り返り、経験学習のサイクルを促す仕組みです。振り返り内容がより共有しやすくなるように、外部からの応援メッセージや頑張っている人の紹介なども追加情報として同時に発信。アクションプランの継続、好事例や振り返りの経過を共有する際の事務局のサポート、チーム単位での活動、という一連のプロセスが、相互にフォローする力を定着させて着実に高めます」

事業変化に伴い、総合職が担っていた企画業務や管理業務をプロフェッショナル職にも取り組んでもらいたいという役割変化を目指して、『研修後のテスト・添削と現場実践・フィードバック』は企画されたと河野氏は次の事例を取り上げる。「ロジカルシンキング」「問題解決」「巻き込み力」といった、求められるスキルのテーマごとに集合研修と現場での学びがセットになっている。現場では、上司への研修報告を作成する「学びの整理」、理解度をチェックする「理論の復習」、実際の業務報告を作成する「実務へのつなぎ」という三つのステップを行うことで、集合研修での学びを細かくフォローしていく。現場で段階的に実践することができ、その都度フィードバックが受けられるという、学びから実務への行動の導線が重視された仕組みになっている。

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導入事例3:育成推進のための先輩・上司・周囲へのアプローチ

三つの育成の鍵の最後である、『育成推進のための先輩・上司・周囲へのアプローチ』に関する事例の一つには、『教える側が学び合いナレッジを蓄積するOJT』が挙げられる。若手の離職率が高い一方、活躍している営業担当者の半数以上が若手という現状を変えたいという課題認識をもとに、実施されたものだ。

「第1段階では、OJT担当者であるチューター自身が、育成を担う意味と意義をきちんと理解し、しっかりと意識を醸成することがテーマになります。チューターに任命しただけでは本人の意識はなかなか変わりませんから、役割認識は重要です。第2段階のテーマは、半年ほど経過後に起こりがちなチューターの悩みの解消と成功事例の学びです。きちんと指導しても伝わらない、思った以上に世代のギャップがあり難しい、といったいくつかの壁をチューターは感じるものです。悩みを話し合ったり、共有したり、新たなスキルを学ぶことによって乗り越えていきます。第3段階では、チューター期間を終えての引き継ぎがテーマです。現場での指導内容、チューターの意義、自身のキャリアプランを振り返って、育成のコツをまとめ上げます。それを冊子化して翌年のチューターに渡すことで、育成に関する知見が蓄積されていきます。成果発表会の場が設けられていますが、発表内容の評判が年々上がっていて、会社全体の育成意識の向上に結びついている、といううれしい声をいただいています」

「関与者すべてを面でつなぐOJT」は、大手食品メーカーで実施された。大きな特徴は、新入社員、OJT担当者、育成責任者、といった全関与者の間でスタートの研修からフォローまでの内容が共有される仕組みにある。例えば、新入社員の導入研修で集められた一人ひとりの強みや弱みに関する情報は、OJT担当者向けの研修で擦り合わされて育成計画にまとめられ、その計画は上長向けの研修で共有される。それを参考に上司は自分の職場の育成グランドデザインを作成し、OJT担当者と共有し運用していく。運用中には、数ヵ月ごとに直接的なフォローやフォロー研修が行われる。育成に関与するすべての人の間で、情報やアウトプットが密に行き交いコミュニケーションがより活性化されるため、場合によってはOJT担当者を限定させずに担当を変えるような役割定義も加えておけば、多面的に若手の育成に向き合える、と河野氏はメリットを語る。

「この他にも数多くの事例がありますし、三つの育成の鍵を複合的に取り入れたパターンも参考になると思います。それぞれの会社の課題や目的や状況に応じて、若手育成の手法はさまざまです。今後も若手の生の声を収集・分析しながら、より良い支援に取り組んで行きたいと考えています」

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