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本質から知る社員エンゲージメント~カギは診断後のデータ活用にあり~

  • 岡部 雅仁氏(コーン・フェリー・ジャパン株式会社 クライアント ディレクター)
  • 小屋 一雄氏(一般社団法人日本エンゲージメント協会 代表理事/ユーダイモニア マネジメント株式会社 代表取締役)
東京特別講演 [F-5]2019.12.24 掲載
コーン・フェリー・ジャパン株式会社講演写真

業績にインパクトを持つ経営指標である、社員エンゲージメント。エンゲージメント診断に詳しい岡部氏は「データ活用で目指すべきは高エンゲージメント社員が社内の過半数を超えること」という。データをどのように活用すれば高エンゲージメント社員が増え、社内を改革できるのか。専門家である二人が取り組み手法を語った。

プロフィール
岡部 雅仁氏( コーン・フェリー・ジャパン株式会社 クライアント ディレクター)
岡部 雅仁 プロフィール写真

(おかべ まさひと)PWC、リクルートを経て2017年にコーン・フェリー入社。プロダクト部門のセールス責任者としてグローバルの人事ソリューションを日本企業に紹介する役割を担う。エンゲージメント調査についても、日本の大企業への導入・コンサルティング実績多数。執筆協力書籍に『エンゲージメント経営』。


小屋 一雄氏( 一般社団法人日本エンゲージメント協会 代表理事/ユーダイモニア マネジメント株式会社 代表取締役)
小屋 一雄 プロフィール写真

(こや かずお)1995年にギャラップの日本立ち上げに参画して以降、コンサルタントや事業会社の立場から組織のエンゲージメント向上に従事。2009年に独立し、ポジティブ心理学の手法を活用して個を活かしたリーダーシップ開発や組織づくりを行う。2018年に日本エンゲージメント協会を設立し、代表理事就任。


業績に大きく関わる要素は「エンゲージメント」「社員を活かす環境」

コーン・フェリー・ジャパンは、人と組織に特化したコンサルティングファームだ。組織デザイン、アセスメント&サクセッション、採用、リーダーシップ開発、報酬・人事制度設計など、人と組織の全領域に関するサービスを展開している。まず岡部氏が、社員エンゲージメント向上の目的について述べた。

「エンゲージメントは、最終業績に対する先行指標の一つです。その目的は短期・長期の業績の向上であり、経営による取り組みが不可決となります。人事が働き方改革の一環で社員の満足度を上げるだけのために取り組んでいるようでは、成果は出ません。組織力をエンゲージメントという指標で可視化し、企業価値を高めていく。ここに経営が関与する企業では、全体でも改革がうまく進んでいます」

同社の実証研究によれば、エンゲージメントそのものという個人側の側面と、エネルギーの高い社員を活かす環境が整っているかという組織側の側面の二点が業績に大きく関与するという。では、どの要素を強化すれば改善するのか。

「社員エンゲージメントは、二つの要素にわかれます。一つ目は、コミットメント。結びつきです。会社と社員に結びつきがあるかどうか。二つ目は、自発的努力。会社と結びつきがあって、与えられたこと以上のことをやろうとする。こういう社員が多いと好業績につながります。今の仕事に満足しているという段階よりも、もう一段ハードルが高いところにあるのがエンゲージメントの特徴です。

社員を活かす環境にも、二つの考え方があります。一つ目は、適材適所。これはエンゲージメント調査でも点数が低く出がちなところです。もう一つは、働きやすい環境。今行われている働き方改革に近い文脈となります」

講演写真

ここで岡部氏は、社員エンゲージメントと社員を活かす環境に、影響の強い原因系カテゴリを六つずつ挙げた。エンゲージメントに影響するのは「会社全体の戦略・方向性」「リーダーシップ」「品質・顧客志向」「個人の尊重」「成長の機会」「報酬・福利厚生」。社員を活かす環境に影響するのは「業績管理」「権限・裁量」「リソース」「教育・研修」「協力体制」「業務プロセス・組織体制」だ。

「これだけの要素が人の働く意欲に影響を与えているわけですから、最初から経営サイドを巻き込んだ取り組みにしておかないと、結果に結びつきません」

「社員エンゲージメント」に対する企業の取り組みの変遷

次に小屋氏が登壇。まずはエンゲージメントの定義について述べた。そもそもエンゲージメントという言葉には、婚約、約束、歯車などのかみ合い、などの意味がある。人事関連では、従業員の会社に対する愛着心や思い入れという意味合いで使われることが多い。

「この言葉の起源は、組織行動論研究者であるウィリアム・カーン氏が“Psychological Conditions of Personal Engagement and Disengagement at Work”(1990年)の中で書いた職場のエンゲージメントです。人はエンゲージすると、肉体的、認知的、感情的に専心するとともに、役割の中で自己表現します。仕事上の役割に対し肉体的、認知的、感情的に没頭している状況をエンゲージメントとしました。これは心理学でいうフロー状態に近い状態です。そして1990年代終盤から、エンゲージメントの環境要因を測るエンゲージメント調査が企業向けに台頭していきました」

なぜ、主に米国において社員エンゲージメントが注目されるようになったのか。小屋氏は時代的な背景を語った。

「90年代以降、多くの企業で、好業績への飽くなき追求が顕著となります。好業績を実現するには、従業員のコミットメントが不可欠であり、従業員をエンゲージすることが求められるようになりました。企業の関心が技術や管理の仕方から、『従業員の感情』へ移っていったのです。一方でリストラも起こり、優秀な人材ほどフラストレーションを感じ、退職に至りやすく、それを解消する必要が生まれました。その後、遅れて日本でもエンゲージメントが注目されるようになります」

また、エンゲージメント理論が注目されたのは、これまでにない新しさがあったことも大きい。

「エンゲージメントは満足度のような心理状態に留まらず、組織にとって有益な行動を取ることまでも含めた、より包括的な概念だったことが新しかった。そのため、従業員満足度以上に重視されるようになりました。コミットメントがより組織に焦点を合わせているのに対し、エンゲージメントは個人と仕事に重きを置いています」

また、改善の意欲につながる限り、不快感や不満を排除しない点でも特徴がある。当事者意識を持つ限り、不快感も排除されない。そして経営全体を視野に入れた取り組みが提言され、多様で大掛かりな従業員のフォローが前提となる。制度重視から内面重視へといった視点の動きにも新しさがあった。

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では企業が目指すべきワーク・エンゲージメントとはどんなものか。ウィルマ―・シャウフェリ博士は、「活動水準の高・低」「気分の快・不快」を軸に状況を4分割で論じている。
「不快で活動水準が低い状態は、バーンアウト=燃え尽き症候群と言います。エンゲージメントはこれとは真逆で、気分が快で活動水準が高い状態を指します。いかに仕事の中に楽しみを見出せるようにするかが大事だということです」

日本エンゲージメント協会では、人生に関わる「ライフ・エンゲージメント」の構成要素として三つのエンゲージメントを挙げている。働き方の仕組みづくりをする「ワーク・エンゲージメント」、自分の人生について考える「セルフ・エンゲージメント」、社会貢献や社会とのつながりを考える「ソーシャル・エンゲージメント」だ。

「これからはライフ・エンゲージメント=人生のエンゲージメントを高めることを考えなければなりません。そのためには、働き方についてもっと考える必要があります」

「エンゲージメント診断データ」を企業はどう活用すべきか

再び岡部氏が登壇。日本企業がエンゲージメントを向上させるためのデータ分析と打ち手について述べた。まずはコーン・フェリーが世界規模で調査するエンゲージメント調査を元に、社員エンゲージメントと社員を活かす環境の国別ポイントの比較を紹介した。
「国別に見ると、共に日本のスコアが全世界で最下位です。上位国と比べて、エンゲージメントの高い社員の組織内の比率に約20%のギャップがありました」

次に社員エンゲージメントを世界企業と比較してみる。すると日本企業の平均と世界好業績企業の平均とでは、生産性の高い意欲状態の社員の比率で約2倍の差があった。

「世界の好業績企業は高エンゲージメント社員(活躍社員)の比率が50%を超えるのに対し、日本企業は全社員の25%程度。過半数を超えるかどうかが雰囲気を決める分かれ目ですが、その半分しかない状況です」

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岡部氏によると、エンゲージメント調査のデータ分析には三つのポイントがあるという。1点目が、経営向けのデータと現場向けのデータをわけて活用することだ。経営向けには業界ベンチマークや日本ベンチマークといった“外の世界”との比較から、自社の外部競争力の水準が把握できるデータを、現場向けには部署間比較や上位組織比較、またフリーコメントといった、社内での比較や“生の声”が拾える定性情報を活用すべきだと述べる。

2点目は、改善活動の当事者がデータを咀嚼・解釈し、打ち手を自ら考える場作りを丁寧に行うことだ。調査データの裏側にある背景・要因・文脈について経営陣や組織長といった責任者が議論を行い、当事者意識と打ち手を考えるためのワークショップやオフサイトミーティング等の場作りが大事だという。

そして3点目が、データから見える課題のうちクイックヒット(小さな打ち手)を優先させて「改善活動の実感」を社員に持たせることだ。改善活動の成果については小さなことでも積極的に社内の認知を広めていき、一人でも多くの社員が改善活動の実感を得られるような社内コミュニケーション戦略も打ち手そのものの推進と合わせて推進する。実際、改善活動を実感できた社員が50%を超える会社ではほぼエンゲージメントが上がっていることが認められているという。

最後に岡部氏は、いわゆる伝統的日本企業がエンゲージメント向上のために行うべき本質的な施策を三つ上げた。

「一つ目は、2020年以降の人口減少時代を見据えた、根本的な会社の存在意義の“更新”です。ミッション、ビジョンをつくり直して、若い人に伝えなければならない。二つ目は、会社の新たな存在意義を体現・具現化し、社員を鼓舞できる“双方向型”リーダーをつくること。トップダウンではなく双方向でなくてはいけません。三つ目は、ライン長ポスト至上主義・年功序列を前提としない新たな組織・制度設計です。もうポストはつくれませんから、今後ポストに就けない人のエンゲージメントは下がる。だからこそポストにつかなくても、やる気が保てるポジションをつくる必要があります」

岡部氏が強調したのは、改善の“追い風”をつくる打ち手推進のステップだ。

「エンゲージメント調査では分析にはまらず、あくまでも打ち手づくりに時間を割くべきです。組織は生き物ですから、自社の強みと弱みをデータで把握し、意思をもって改善していかなければなりません。最後は人の熱量が大事になります」

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