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急増する「社内うつ」の傾向と対策

早稲田大学文学部教授

小杉 正太郎さん

多くの企業で、社員の「心の病」が問題になっています。中でも、「うつ病」を患う社員が急増していて、これまで特殊なケースだと思われていた病気がごく一般的になってきたように見えるほどです。でも、よく調べてみると、うつ病だという社員の多くは普段の生活では家族と旅行をしたり友人と遊んだり元気にしていて、ところが会社に来ると途端に元気がなくなる――そんな「社内うつ」の特徴があると言います。「社内うつ」は本物のうつ病とどこが違うのか。急増の背景は何か。企業はどのような対策を講じたらいいのか?25年前から企業内でカウンセリング活動を続ける小杉正太郎さんにうかがいました。

Profile

こすぎ・しょうたろう●1939年生まれ。早稲田大学大学院博士課程修了。1966年から携わった海底居住の心理学的研究を契機として、環境・ストレス・行動などをキーワードとする心理学的研究に従事。多数の企業にカウンセリングルームを開設し、従業員を対象とした心理ストレス調査と職場適応の援助を実施している。心理ストレス研究の第一人者として執筆活動・講演活動も活発に行う。主な著書に『社内うつ』(講談社)、『ストレス心理学』(川島書店)、『仕事中だけ「うつ」になる人たち』(川上真史氏との共著、日本経済新聞社)などがある。

いま企業で起きている「心の病」は「うつ病」ではない

財団法人社会経済生産性本部の「産業人メンタルヘルス白書」(2004年)によると、従業員3000人以上の企業の中で、「心の病が増えている」と回答した企業が71.2%に上ります。その中で「どのような疾患がもっとも多いか」では「うつ病」が第1位で、84.9%でした。これまで特殊な病気だと思われていたうつ病が、ビジネスの社会では一般的になってきたように見えます。

私は25年前から、いくつかの大手企業の中にカウンセリングルームを開設し、現在でも約1万7000人の従業員を対象に心理ストレス調査や職場適応の援助をしています。確かに、ここ数年、「私はうつ病にかかったのではないでしょうか」などと、カウンセリングルームに来る社員が増えましたね。「職場で仕事に向かうと、イライラする」とか「極度に緊張する」などでミスばかりしてしまい、働く気持ちが出てこない、と。その様子を見ていた上司から「君、もしかしてうつ病じゃないか」と言われてカウンセリングに来た、という社員もいます。

でも、本当にうつ病を患っている人が「私はうつ病でしょうか」と、自らカウンセリングルームに来るようなことは、まずありません。実際、カウンセリングに来た社員たちに質問をしてみると、よく話をしますし、顔色もそんなに悪くない。食事も毎食きちんと摂っていると言う。カウンセリングに来た社員の全員とは言いませんが、大部分は本当のうつ病じゃないようなんです。

うつ病というのは、どの国、どの時代を見ても、人口の0.3%程度しかいません。神経伝達物質のセロトニンがうまく働かなくなって、睡眠が全く保てず、すべてのことに関心も意欲もなくなってしまう。そんな状態に何か特別な原因がなくても陥ってしまうのが、本当のうつ病です。これは内因性で、体質や遺伝に関係するのではないかと考えられることもあります。自分から仕事の合間を見つけて私のところへ相談に来る社員がそれに当てはまるとは考えられませんし、いま企業で起きている「心の病」の大半は、本当のうつ病じゃないように思いますね。

うつ病ではないとすると、どういう心の病なのでしょうか。

私が企業内のカウンセリングに長年取り組み、職場でのストレス・マネジメント検査を繰り返してわかってきたのは、うつ病ではないけれども、「うつ状態」にある社員が増えてきたな、ということです。多くのケースでは、社員は会社で仕事をしているときに憂うつ感にとりつかれて不調になるものの、会社から一歩外に出ると家庭でもどこでも普通に元気に行動しています。なぜそうなるかというと、会社の中に何かの原因があるからで、それに適応できていないわけですね。そんな「社内不活性・社外活性」の特徴を持つ心の状態を、本当のうつ病と区別するために、私は「社内うつ」と呼んでいます。

「社内うつ」は病気ではありません。アメリカの精神学会は1996年に出版した『精神疾患の診断・統計マニュアル第4版』という本の中で「適応障害」を初めて取り上げ、「(適応障害とは)はっきりと確認できるストレス因子に反応し、ストレス因子の始まりから、3カ月以内に情緒的行動面で症状が出る」と明記しています。私の言う「社内うつ」も、この「適応障害」で説明がつく。「社内うつ」では、たとえば苦手な上司や難しい仕事がストレス因子になります。自分が負担に感じるもの――社内にある何らかの「原因」が目の前に現れると、とたんに適応・順応できなくなるわけですね。上司の前で震えるほど緊張したり、大事なプレゼンテーションが近づくと抑うつ感に襲われたり、そういう状態に陥ってしまう。

小杉 正太郎さん Photo

ところが、上司がいない、仕事のない社外へ出ると元気になる、ということですか。

それが「適応障害」の特徴であり、同時に「社内うつ」の特徴でもあるんですね。普段の生活においては家族と旅行に行ったり、友人とカラオケやゴルフを楽しんだりしていますから、「彼は会社の中で落ち込んでいる」と聞かされて家族や友人がそのギャップに驚く、というケースがよくありますよ。

仕事の「質」に悩む若手社員、「量」に苦しむ中高年社員

最近になって「社内うつ」が増えてきた背景は何でしょうか。

年功序列がしっかりしている会社では、あまり「社内うつ」の社員は出てこないのですが、今は新人社員の頃から、やれ成果主義だ、実績優先だと言われて、一昔前に比べたら難しい仕事をこなさないと高い評価を得られない人事システムの会社が増えてきたでしょう。しかも、リストラの影響で、社員をしっかり指導できる人も少なくなっています。そういう状況に対して、とくに20代の若い社員が、「仕事の中身が理解できない」「自分の役割がわからない」などと、対応できないままストレスを溜め込んでいるうちに「社内うつ」になってしまう、というケースが多いんです。

多くの企業で職場の統廃合が行われていますが、それで新しい上司がやってくる。ところが、その上司自身、新しい部署に課せられた仕事の内容を十分に把握していない、ということが往々にしてあるんですよ。やる気満々だった若手社員が、その上司から曖昧な指示を連発され、それにうまく対応できず、「何をしていいかわからない」とストレスを感じ始める。上司に問いただしても、納得いくような答えが返ってこない。それどころか、うっかりミスをすると「何を聞いているんだ!」と叱責される――というようなパターンから、「社内うつ」にとりつかれるようになる。

上司から「仕事のゴール」を教えてもらえず、「社内うつ」になっていくケースもありますね。たとえば会社からハイレベルなマシンをつくるように指示を受ける。でも、そんな高度なものをつくって誰が使うのかわからないし、かえって危険や事故を伴うのではないか、というような疑問も湧いてきて、ストレスを溜め込むようになる。本来なら上司が「それでもつくらなければならない」理由について説明する必要があるのに、それをしない。秘密事項の多い研究開発の現場などによく見られるケースですが、「君は会社の言うとおりにやっていればいい」などと言われて社員は働く気が失せていくわけです。今、どの企業でも派遣社員が増えていますが、彼らには企業秘密を教えられないということで、「仕事のゴール」を示すことなく働かせているうちに「社内うつ」が出てきたというケースも見られますね。

中高年になると、仕事の内容や流れはだいたい把握しているので、仕事の「質」がストレス因子になることは少ないですが、こんどはリストラによって人員削減された状況の中で、自分の担当する仕事の「量」が急に増えていますね。とくに、40代の管理職は「仕事が忙しい」と口をそろえる。自分の処理能力に余る仕事を抱えている課長や部長が少なくありません。

仕事が多すぎる、ということから「社内うつ」になるのですか。

小杉 正太郎さん Photo

そう。以前に比べて増えた自分の仕事に加えて、成果主義の導入で慣れない人事評価もしなくてはいけないし、職場の統廃合で新しい仕事も掛け持ちしなくてはいけない。あれもこれも、仕事が増えて複雑になり、疲れがたまる。やがて、イライラからミスを繰り返すようになって、会社で働く気が起きなくなる。中高年が「社内うつ」に近づく典型的なパターンです。

企業が中途採用を活発に行うようになってきたことも「社内うつ」の増加につながっていると思いますね。採用の仕方に問題があるんですよ。ヘッドハンティングのように、あるピンポイントの仕事にマッチするスペシャリストの人材を探し出して採用するならいいのですが、そうではなく、とりあえず手が足りないからと新しい人材を採用しているケースが少なくない。そうすると、仕事内容と中途採用者の職能にミスマッチが起きるわけですね。中途採用者にしてみれば、与えられた仕事が自分のそれまでの職能とずれていると、力を発揮できない。でも会社や上司にしてみれば「即戦力」を期待していたから、あいつは全然役に立たないじゃないか、ということになる。中途採用者はそこで相談する相手が社内に見つからないと、追い込まれていくでしょう。我慢しきれなくなったとき、「社内うつ」が待ちかまえているんです。

ベンチャー型のIT企業では「社内うつ」が起きやすい

「社内うつ」が起こりにくい業種というのはありますか。

たとえば自動車の製造ライン、販売、セールスマンなどには少ないんです。社員は何をつくればいいのか、どれぐらい売ればいいのか、どこへ売ればいいのかという仕事のゴールが明確になっていることが多いからです。むしろ、デスクワーク中心で創造的な仕事ほど、「社内うつ」の発生の頻度が高いという傾向がありますね。

小杉 正太郎さん Photo

とくに時代の最先端を創造するようなIT企業で、ベンチャー型の組織では「社内うつ」が起きやすい。ゴールのイメージがクリアになりにくいうえに、それでストレスを溜めても「助けてください」と言いにくいからです。ベンチャー型の企業というのは、トップ、マネジャー、メンバーといった3階層ぐらいで、上下があまり近い関係ではありません。しかもプロジェクトチームで動くことが多いので、横のつながりも少ない。ストレスに苦しんでいる社員を援助してくれる人がなかなか現れない、という状況になりがちです。

さっき年功序列がしっかりしている会社では、あまり「社内うつ」の社員は出てこない、と言ったでしょう。それは、年功序列の組織というのは良くも悪くも社員同士のコンタクトが密にあるからです。入社以来ずっと知っている人が多いとか、すぐ上にも下にも先輩・後輩がいるなど、しんどくなったときに援助を頼める環境がある。ベンチャー型の組織に比べれば、日本的な義理人情の雰囲気も強いでしょう。たとえば役所のように、職位がたくさんの階層に分かれ、きちっと固まっている組織では、ベンチャー企業に比べると「社内うつ」の発生の頻度は少ないと思いますね。

カウンセラーと人事部が協力し、コミュニケーションも改善する

企業は「社内うつ」にどんな対策を講じればいいでしょうか。

まず、本当のうつ病と「社内うつ」を混同してしまったらどうにもなりません。社内でカウンセリングができる企業は増えていますが、症状だけを見て、「うつ病だ」と決めつけて従来型のカウンセリング(アメリカのカール・ロジャースが提唱したクライエント中心療法など)で援助しようとしても、対応できないでしょうね。従来型のカウンセリングとは、カウンセラーが苦しんでいる人の話に「うん、うん」と耳を傾け、共感を表しながら、その人に心理作用が起きるのを待つ、という方法です。そんなカウンセリングを続けたところで、「社内うつ」になっている社員のストレス因子はなくなりません。

そもそも「社内うつ」は病気ではなく、社内の人間関係や人事制度に強く関係して起きる問題なのですから、ひとりカウンセラーだけでは解決できないと言うこともできる。私は、カウンセラーと人事部が協力して「社内うつ」の対策に当たるのがいいと思っています。

「ストレス発散のためにフィットネスクラブで汗を流そう」などという企業もありますね。

それで「社内うつ」の社員は肩こりが軽くなるかもしれないけれど、会社に戻れば苦手な上司や膨大な仕事量が残っているわけでしょう。薬で何とかしようとするのも、それと同じ。対症療法ではダメなんですよ。社員が「社内うつ」になったストレス因子を突き止めて、それを元から絶つための対策を考えないといけませんよね。

小杉 正太郎さん Photo

「仕事の中身が理解できない」「ゴールが見えない」というストレスが原因なら、その社員と上司のコミュニケーションを改善しなくてはいけない。成果主義を導入した企業では、結果重視、実績重視だと強調されるあまり、上司が社員から話を聞くとき「仕事の経過はいいから結果だけ言え」とか「問題点だけ簡略にまとめろ」などと迫るような姿勢になっているというんですね。コミュニケーションに問題が起きるのは当然です。上司は社員の仕事の結果だけでなく経過もじっくりと聞く耳を持たなくてはいけないし、社員のほうは「もっと仕事の中身をわかろう」と上司に対してアクションしなくてはいけないでしょうね。互いのコミュニケーションが良くなればきっと人間関係も良くなりますから、上司がストレス因子になったり、「仕事が理解できない」と悩んだりすることは減っていくだろうと思いますね。

(取材・構成=丸子真史、写真=中岡秀人)


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