出向時の年休・時間外労働の算定について
お世話になります。
出向の際の取り決めは、基本的には出向契約の内容および、出向元における、出向時の取扱について定めた就業規則によるものと認識しておりますが、「労基法上、出向元OR出向先の労働条件を適用しなければならない」といった事項があればご教授願います。
なお、今回検討しているケースでは、当社とは全く別物の他社への出向となります。
また、当社の出向者の取扱いについては、
「①出向者は原則として出向先の就業規則その他の定めに従い、勤務するものとする」としており、
実質的に賃金を支払うのは出向元(当社)としております。
①年休の付与日数について
当社では22日を付与、出向先では20日を付与としておりますが、実質的な使用者は出向先(実質的に時季変更権を使うのは出向先)かと思われますので、出向先の取り決めにしたがい20日を付与するのが正しいのでしょうか。一方で、当社の従業員にとっては付与日数が22日→20日となり、不利益な取扱いにあたる気もするのですが、どのように取り扱うべきなのでしょうか。
②時間外労働の算定について
出向元(当社)の所定労働時間は8時間(8:30-17:30)、出向先の所定労働時間は7時間(9:00-17:00)としております。
実質的に賃金を支払うのは出向元になりますので、出向先の所定労働時間にかかわらず、実際に
出向先で勤務した時間をもとに、当社の賃金規則にしたがって割増賃金等を算出することは、
労基法上問題がありますでしょうか。
以上、よろしくお願いいたします。
投稿日:2014/02/14 10:55 ID:QA-0057750
- Uさん
- 兵庫県/輸送機器・自動車(企業規模 10001人以上)
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご質問内容に回答させて頂きますと‥
①:出向の場合は出向元との雇用関係が継続していますので、年休の計算や付与日数に関しましては出向元基準で行う必要がございます。時季変更等の実務手続きを行うのは出向先になりますが、年休権自体は性質上出向元から継続しているものですので注意が必要です。
②:割増賃金支給に関わる時間外労働は原則として実労働時間で計算することになりますので、出向先で実際に勤務した時間数を元に計算されることで差し支えございません。但し、基本給等通常の賃金についてまで所定労働時間の少なくなった分を減給するといった措置につきましては労働条件の不利益変更となりますので避けるべきです。
投稿日:2014/02/14 12:29 ID:QA-0057754
相談者より
ご回答有難うございました。
投稿日:2014/02/20 08:29 ID:QA-0057809大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
- 川勝 民雄
- 川勝研究所 代表者
出向元の年休を付与すべき、実労働時間に出向元の所定労働時間の適用はOK
まず、 出向に関しては、 労働契約法 ( 出向命令権乱用の禁止・第14条 ) 以外に、 法的な定めは殆んどありません。 但し、 在籍出向の場合、 身分、賃金、年休、懲戒など重要な事項は、 出向元の規則に、 日常業務に関する事項は、 出向先の定めに従うとするのが、 判例なども含め通説となっています。 ご質問 ① ⇒ 年休付与と時季変更権は別物です。 上述のように、 年休は、 労働契約上、 重要事項とされており、 出向元の年休 ( 22日 ) を付与すべきです。 ご質問 ② ⇒ 出向に際しては、 出向者に不利な条件を強要することはできません。 所定労働時間が短くなる ( 8 ⇒ 7時間 ) に伴い、 賃金を引下げ変更されるのは、実態的に不利益変更に相当します。 但し、 時間外労働の算定に就いては、 出向先における実労働時間を、 出向元の所定労働時間に適用しても問題はないと思います。
投稿日:2014/02/14 12:52 ID:QA-0057756
相談者より
ご回答有難うございました。
投稿日:2014/02/20 08:30 ID:QA-0057810大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
出向について
在籍出向について、出向先の労働条件が出向元より低下する場合には、出向元の規定を適用させるのがリスク回避となります。そうでないと個別同意が必要となってきます。
賃金の支払いについては出向契約により、どちらが支給してもかまいませんが、例えば負担は出向先で支払いは出向元とするケースも少なくありませんが、これらは、出向の目的によりことなります。
その上で、
①について
出向元の規定で付与し、出向先で消化します。付与日数は22日。
②について
ご質問の内容で問題ありません。
投稿日:2014/02/14 18:53 ID:QA-0057758
相談者より
ご回答有難うございました。
投稿日:2014/02/20 08:30 ID:QA-0057811大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
就業規則の適用は、労務提供の前提の有無で判断します。
出向とは、労働者が出向元に在籍したまま、出向先において出向先の指揮命令下で労務を提供する、二重の労働契約であります。
よって、労務提供を前提とする場合は出向先、前提としない場合は出向元の就業規則を適用します。
以上により、①の年休そして②の所定労働時間に関して検討いたしますと、いずれも、労務提供に関する事項であり、原則として、出向先の就業規則が適用されます。
しかしながら①の年休については、22日から20日へと変更となり、労働条件の低下となり、いわゆる、就業規則による労働条件の不利益変更に該当いたします。よって、例えば、差分の2日については、出向期間を基準として算定した手当等で補てんするとよろしいでしょう。
次に、②の所定労働時間については、8時間から7時間へと変更となり、この部分については労働条件の低下には該当しません。したがって、7時間を超えてから時間外労働の算定を出向元の賃金規定に従って計算を行います。しかしながら出向元においては、1時間分の時間外労働が多く発生するため、この部分については出向先が100%負担する等、出向元と出向先との出向契約において定めるとよろしいでしょう。
尚、出向に関する規定は労働基準法には明確な定めがなく、労働契約法第14条に出向を命ずる場合の有効性について規定がされているのみであります。よって、繰り返しとなりますが、就業規則適用に関しては労務提供の前提の有無で判断し、労働条件に変更をきたす場合には、出向元と出向先との出向契約にて、詳細を規定することをお勧めします。
投稿日:2014/02/20 05:10 ID:QA-0057808
相談者より
ご回答有難うございました。
投稿日:2014/02/20 08:30 ID:QA-0057812大変参考になった
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