出向元と出向先の制度の違いについて(裁量労働制、職位)
A社よりBさんという出向者を受け入れています。Bさんの給与は折半、社会保険等はA社が負担しています。就業時間はA社は9時から17時までの7時間、当社は8時30分から17時20分までの7時間50分です。BさんはA社においては課長代理=非管理職です。当社においては部長職であって部下の管理も行っています。A社では非管理職は裁量労働制が採用されています。2年前の出向受け入れ時より現在までは当時のA社の出向者向け規定に基づき①就業時間の差である50分については「出向手当」、②残業については実残業時間に対し残業手当を支払っていました。さてこの状態で本年7月分よりA社の規定が変わり、「役職が課長代理で、かつ出向先で労働基準法上の管理監督者の位置づけとなるものについて、A社のみなし残業代相当分を支払うこととする」「時間管理の対象外となるので所定労働時間の差分である出向手当ても支払わないものとする」となりました。実はBさんは優秀であり、この4月に当社として部長に昇格させ、、部下ももってもらうこととなったのです。昇格前は「部長補佐」であって、管理職ではあるものの労基準法上の管理監督者ではなかった、というのがA社の説明でした。つまりBさんは私どもが昇格させたがために拘束時間の差分の給与を失うこととなったわけで、かえって申し訳ないことをしたと感じております。ここからが質問ですが、出向先である当社には裁量労働制がないのにもかかわらず出向先の規定にて裁量労働制を導入すべきということはあるのでしょうか?数年前のの他の方の相談ではそういうことが無いようにご回答されているように読めましたが最近制度が変わったなどということはありますでしょうか?
投稿日:2012/06/05 17:23 ID:QA-0049834
- KOSSOFFさん
- 東京都/保険(企業規模 301~500人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
御相談の件ですが、出向先に裁量労働制が無ければ原則として採用は出来ないものといえますし、特に法規制が変わったということもございません。
しかしながら、文面のケースの場合は最良労働制の問題ではなく、管理監督職になる為手当をカットするといった措置の問題であるといえます。
通常ですと、部長に昇進すれば基本給または役職手当が増えて手当カット分を大きく上回るものといえますので、問題はないものといえるはずです。
仮にそうした処遇改善がないとすれば、いわゆる「名ばかり管理職」として管理監督職の妥当性に疑問が生じる可能性が高くなります。
そもそも昇進の際の処遇において両社間で擦り合わせを行っておくことが重要だったといえますし、部長職にふさわしい処遇となっているかを両社間で確認されるべきといえるでしょう。
投稿日:2012/06/05 22:56 ID:QA-0049838
相談者より
ありがとうございます。ただ、私共としては出向もとのルールにのっとった給与の半分を負担するだけの決まりであって処遇を云々することはできないのですがこの場合はどうでしょうか?すなわち当社側から条件を変更する余地がないのです。お聞きしたいのはA社の考え方が妥当かどうか、ということです。出向先で管理職、だから所定労働時間の差額も裁量労働の範囲とされるということですがA社の裁量労働制で支払われる相当の残業時間26時間から所定労働時間の差分を引くと10時間を切ることになります。
当社としてできたこと、できることをもう少しご教示いただけるとありがたいです。
投稿日:2012/06/06 15:12 ID:QA-0049856大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
再度お答えいたします
こちらこそご返事頂き有難うございます。
再度ご質問の件ですが、御社で条件を変更する余地がないのは通常処遇は出向元において決める事柄であることからも当然でしょうし、そうであれば御社側で出来ることは非常に限られているものといえます。勿論、御社負担で任意に手当分を支給することは出来ますが、コスト面を考えますと当然ながら慎重な対応が求められます。また逆に、部長職を解いて元職に戻し手当を支給してもらうといった方法も考えられるでしょう。こうした措置を採られるか否かは、出向元と協議した上で御社自身での判断になります。
その上で、A社の考え方が妥当かどうかにつきましては、文面を拝見する限りではやはり妥当でないといえるでしょう。裁量労働制というのは実際の勤務先における働き方及び労働時間の問題になりますので、基本的に御社で採用していなければ採用出来ないものといえます。加えて、部長職であっても必ずしも労働基準法上の管理監督職に該当するわけではございませんので、部長になったからといった直ちに業務詳細も確かめずに取り扱いが変わるというのもおかしな話です。
但し、部長への昇進自体を当初から出向元が承知していないということであれば、事前に相談しなかった御社にも責任の一端があるものといえます。昇進といった身分に関する事柄は処遇にも直接関わってくることから通常出向元で決定すべきであるからです。その辺の意思疎通及び決定事項の確認がしっかり出来ていたか否かは非常に重要といえます。万一このような場合ですと、部長職を解いた方がすっきり解決するといった事も考えられるでしょう。
尚、当事案は出向・労働時間・管理監督職の問題等が絡み合った複雑な問題となっておりますので、仮に当人から不満が上がってトラブルになりそうな場合には出向契約及び両社の就業規則及び当人の業務事情等を詳細に確認した上での対応が求められます。従いまして、今後そのような事態が発生した場合には、万全を期す上でもお近くの人事問題に精通した弁護士または社労士等に直接ご相談の上対応を図られることをお勧めいたします。
投稿日:2012/06/06 20:29 ID:QA-0049861
相談者より
ご丁寧にありがとうございます。非常に勉強になりました。申し訳ないのですがもう少し教えてください。2回目のご回答の「部長職であっても必ずしも労働基準法上の管理監督職に該当するわけではございませんので、部長になったからといった直ちに業務詳細も確かめずに取り扱いが変わるというのもおかしな話です。」の部分ですが、今回の部長職が「部下の残業管理、人事評価」を行う、いわゆる一般的な管理職の業務とすれば「労働基準法上の管理監督者になった」こととなる、という理解になり、取り扱いがかわっても仕方が無いとも読めるのですがいかがでしょうか?もちろん必要に応じて出向元との相談となりますがその前段階の知識として教えてください。どうぞよろしくお願いいたします。
投稿日:2012/06/07 08:28 ID:QA-0049864大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
再度お答えいたします
こちらこそご返事頂き感謝しております。
「今回の部長職が「部下の残業管理、人事評価」を行う、いわゆる一般的な管理職の業務とすれば「労働基準法上の管理監督者になった」こととなる、という理解になり、取り扱いがかわっても仕方が無いとも読めるのですがいかがでしょうか」
― 労働基準法上の管理監督職とは相当に限定されており、そのように一般的な管理職というだけでは足りえません。
詳細説明はスペースの都合で割愛させて頂きますが、
・経営に参画する等経営者との一体性がある程度認められる事
・地位にふさわしい処遇となっている事
・厳格な出退勤管理が行われていないこと
といった条件が求められます。但し、細かな具体的な基準まで確立されてはいませんので、争点となった場合には上記要素を基本に総合的な観点から判断が下されることになります。
従いまして、出向元が主張されるように原部長職を管理監督職として取り扱う為には、上記観点に沿った取り扱いを行う事が必要ですし、その為にはやはり処遇改善という事が不可欠になります。
但し、前回も申し上げました通り個別詳細事情に沿った対応が求められますので、こちらでは一般的な回答に留まる件ご了承下さい。
投稿日:2012/06/07 09:44 ID:QA-0049867
相談者より
本当に丁寧にありがとうございました。いろいろな法律や判断の中で勤労者がしっかりと守られており、また守られるべきであるということを理解できました。今後ともよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
投稿日:2012/06/07 09:46 ID:QA-0049868大変参考になった
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