賞与支給日の前倒しと退職日の関係(在籍要件の適用可否)
当社では、就業規則に「賞与は、支給日当日に会社に在籍している者に支払う」と定めています。
当社の賞与支給日は11月末日ですが、今年の当日は日曜日のため、前倒しで11月28日(金曜日)に支給を行う予定です。
この場合、11月29日付で退職する社員については、
「賞与支給日に在籍している」とみなして賞与を支給すべきでしょうか。
それとも、退職日が本来支給日の前日であるため、支給しなくても問題ないでしょうか。
投稿日:2025/11/07 09:57 ID:QA-0160314
- 青木秋生さん
- 東京都/石油・ゴム・ガラス・セメント・セラミック(企業規模 301~500人)
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1.原則:在籍要件の効力
就業規則に「賞与は、支給日当日に在籍している者に支払う」とある場合、
これは支給日に在籍していることを支給条件(いわゆる在籍要件)として有効です。
この在籍要件は、判例上もおおむね有効とされています(例:東京地裁平成12年12月21日判決〔東京日産自動車事件〕など)。
したがって、原則として支給日に在籍していなければ支給義務はありません。
2.支給日が休日の場合の「前倒し支給」の扱い
ここが今回のポイントです。
支給予定日(11月30日)が日曜日(休日)であるため、
実務上は銀行振込などの関係で11月28日(金)に前倒し支給するというケースですね。
この場合の判断基準は、次のどちらの扱いを会社が採用しているかによります。
【A】「形式的に前倒ししただけ」と扱う場合(実質的支給日は11月30日)
=賞与の基準日は本来の支給日(11月30日)とみなす
支給日が休日にあたるため、事務処理上や金融機関の都合で前倒ししただけであり、
本来の支給日(就業規則上の11月30日)に在籍していることが要件だと解するのが一般的です。
この場合、11月29日退職者は「11月30日時点で在籍していない」ため、支給対象外となります。
→この扱いが最も多くの企業で採用されています。
銀行振込日が前倒しでも、法的には「支給日自体を繰り上げた」とはみなしません。
【B】「支給日自体を変更した」と扱う場合
=会社が明示的に「今年の賞与支給日は11月28日」と決定している場合
もし会社として公式に「今年度の賞与支給日は11月28日」と定めた旨を社内に周知している場合、
その日は就業規則上の支給日そのものとみなされることになります。
その場合は、11月29日退職者は“支給日(11月28日)に在籍していた”ため支給対象となります。
3.実務上の整理(結論)
多くの会社では、休日が支給日にあたる場合の「前倒し振込」は単なる事務処理上の都合と扱い、支給日自体は本来の就業規則上の日付(今回は11月30日)を基準に判断します。
したがって、
11月29日退職の社員は「支給日に在籍していない」とみなされ、賞与を支給しない扱いで問題ありません。
ただし、もし社内的に「今年の支給日は11月28日」と明示して全社員に告知している場合は、 支給日自体が前倒しされた扱いになるため、在籍要件を満たすことになります。
4.おすすめの対応例
実務上のトラブルを防ぐために、以下のような取り扱いを明文化することをおすすめします。
(例文:賞与規程や通知文での明示)
「支給日が金融機関の休業日にあたる場合は、これより前の営業日に支給することがあるが、この場合においても支給日の基準日は本来の支給日とみなす。」
この一文を入れておくと、前倒し振込をしても在籍要件の判断基準は変わらないことが明確になります。
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/11/07 10:31 ID:QA-0160318
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
ポイントは貴社の就業規則において、賞与支給日をどのように規定しているか
となります。
規定上に支払日は11月末日と明確に規定していれば、支給日が休日の場合に
前倒しで支払うことは、あくまで便宜上の支払い処理に過ぎず、法的には
支給日そのものを変更したことになりません。
よって、本ケースの場合、11月29日に退職した社員へ賞与を支給することは
不要となります。
一方で、就業規則に支払日が規定されていない場合は、より慎重な対応が必要
です。規定がない為、今までの慣習に基づき、そのように会社は判断している
旨を丁寧に説明する必要があります。
なお、今後、トラブルを避ける為には、就業規則において、11月30日の支給日が
休日の場合は前倒しで支払うが、支給日在籍要件の基準日は本来の支給日とする
など、在籍要件の基準日を明確にしておくことが必要と言えるでしょう。
投稿日:2025/11/07 10:31 ID:QA-0160319
プロフェッショナルからの回答
対応
規則で「賞与支給日は11月末日」と確定しており、それをわかって29日で退職するなら、支給は不要です。
しかし本事案のように、「支給日」を固定するのは不可能なはずです。
支給日のような実務については規定化するのでは無く、「支給対象者を末日在籍者とする」というような、基準に限定すべきです。
投稿日:2025/11/07 16:04 ID:QA-0160349
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、就業規則上で月末が休日の場合に前倒しで支給される定めが有れば、支給対象外となります。
一方、そうした定めがなく単に月末支給と定めているのみであれば、本来は月末30日に支給されるべきもののはずですので、支給対象とされる必要がございます。
投稿日:2025/11/07 19:28 ID:QA-0160373
プロフェッショナルからの回答
11月29日とした理由
以下、回答いたします。
(1)退職日は、基本的に、労働者が決定するものです。この社員は、なぜ、11月29日を選択したのでしょうか。
(2)「賞与をもらってから辞めよう」と考えるのが一般的ではないでしょうか。もしそうであるならば、何らかの誤認(錯誤)があったものと推察されます。
(3)当該社員から「なぜ、11月29日としたのか」について丁寧に聴取し、「賞与の受給を断念せざるを得ない特段の事情。突き詰めれば、11月30日に変更することができない特段の事情」がないのであれば、賞与を支給することとしては如何でしょうか。
なお、これら検討に当たっては、下記(4)の考え方についてもご留意していただくことが有益ではないかと考えます。
(4)1)民法では、次のように、既履行分の報酬請求権が保障されています。
(履行の割合に応じた報酬)
第六百二十四条の二 労働者は、次に掲げる場合には、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
二 雇用が履行の中途で終了したとき。
2)賞与は報酬(賃金)であることから、上記1)を踏まえれば、賞与は、勤務期間(履行期間の長さ)に応じて請求がなされるものであると考えられます。
3)一方、一般に、「支給日在籍要件」は、上記2)の特約として、支給日に在籍していない場合には、賞与を全額不支給とするものであると認識されます。
4)「支給日在籍要件」の背景には、「将来の勤務への期待」があると考えられます。しかし、当該要件については、「労働者の退職の自由」や「職業選択の自由」と必ずしも整合的ではない側面があるように認識されます。
5)そうであるならば、上記2)を勘案し、「支給日在籍要件」の効果について、当該要件を満たさない場合には、全額不支給とするのではなく、(実質の)勤務期間に応じて支給することが合理的であると認識されます。
投稿日:2025/11/07 20:07 ID:QA-0160374
人事会員からの回答
- オフィスみらいさん
- 大阪府/その他業種
就業規則の規定に素直に従えば、11月末日には在籍しておりませんので、賞与を支給する必要はないということになります。
本来の支給日が休日であれば、実務上は前倒しで支給するのは極めて普通であり、慣習上もそれで問題はありません。
「ただし、支給日当日が休日の場合は前倒しで支給するが、支給日在籍要件はあくまで本来の支給日を基準とする。」といった体で、就業規則に追記しておけばよろしいでしょう。
投稿日:2025/11/08 08:47 ID:QA-0160393
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