嘱託社員の給与について
現在当社では、役職のない一般嘱託社員は、定年到達時の給与より約40%ダウンとなっています。
しかしながら、役職のない一般嘱託社員は定年到達後も到達前と業務内容が変わらない場合、同一労働・同一賃金の考えから、段階的に定年到達前の給与水準に戻すことを検討しています。
このような場合、どのように設計すればよいのでしょうか。注意すべき点や設計方法について、ご教示いただけますでしょうか。
投稿日:2025/05/21 17:34 ID:QA-0152686
- ぴっきーさん
- 大阪府/機械(企業規模 301~500人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
給与水準を戻すのであれば問題はありませんが
原資は問題ないのでしょうか?
業務内容以外に責任の程度、転勤の有無なども
全く違いはないかも比較してください。
又退職金の支給額も確認してください。
投稿日:2025/05/21 18:35 ID:QA-0152693
相談者より
ご教示いただき、ありがとうございました。
原資については問題ございません。
業務・責任・転勤・退職金などについて、一般社員との相違がないことを確認して進めてまいります。
投稿日:2025/05/22 08:55 ID:QA-0152718参考になった
プロフェッショナルからの回答
次の通り、ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1.はじめに
定年後再雇用の嘱託社員に対し、「同一労働・同一賃金」の考え方を踏まえて給与制度を見直す場合、以下のようなポイントを踏まえて設計する必要があります。企業の法的リスク回避と制度の整合性確保のため、慎重な対応が求められます。
2.設計における基本的な考え方
(1) 「職務内容・責任・配置の変更有無」を明確にする
法的には、「同一労働・同一賃金」は職務内容や責任の違いに基づく賃金差は認められています。嘱託社員の業務内容・責任・裁量が定年前と同じである場合、40%の給与減額は不合理とされる可能性が高いです。まずは、再雇用後の職務内容や期待される役割が定年前と同じかどうかを客観的に文書化・明確化しましょう。
(2) 「段階的に戻す」給与制度の設計例
パターンA:段階的加算制度
定年時点で40%減額 → 毎年一定割合(例:10%ずつ)を加算
例:
1年目:定年時給与の60%
2年目:70%
3年目:80%…
メリット: 人件費の急激な上昇を抑制でき、制度的な整合性も持たせやすい
注意点: 「何年かけて戻すのか」「どのタイミングで打ち切るか」を明確化
パターンB:業務評価連動型
定年後の業務内容が同一であるかを評価し、その等級や評価によって給与を段階的に戻す
例:
A評価(定年前と同等):定年時の90%
B評価(部分的に同等):80%
C評価(簡易業務):60%
パターンC:特別加算手当方式
嘱託給与(基本給)は一律水準 → 「職務継続加算手当」などで調整
手当の名目を明確にすることで、業務内容・責任に応じた給与設定が可能
3.注意すべき点
(1)不合理な格差がないか確認する(労働契約法第20条/パート・有期法第8条)
労働条件格差に合理性がなければ違法となるリスクがあるため、賃金差の理由を明確に説明できる設計にすることが重要です。
(2)就業規則や賃金規程の整備
嘱託社員用の就業規則・給与規程を作成し、段階的加算や手当の根拠を明記する必要があります。
(3)制度変更時の説明責任
社員に対して制度変更の理由、仕組み、適用方法などを丁寧に説明し、納得を得ることが重要です。
(4)運用の平等性と透明性の確保
対象者によって扱いに差が出ないように、評価基準・加算条件を文書で明文化し、客観性を保つ。
4.制度設計の進め方(ステップ)
ステップ→内容
1. 現状把握→嘱託社員の職務・責任・待遇実態を把握
2. ギャップ分析→定年前後での業務・待遇の差を明確に
3. 設計方針策定→段階的加算」などの方式を選定
4. 規程改定→就業規則・賃金規程に反映
5. 社内説明→対象社員・管理職への説明実施
6. 定期的見直し→制度の運用状況を評価し改善
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/05/21 21:27 ID:QA-0152698
相談者より
ご丁寧にご回答いただき、ありがとうございました。
段階的に戻す場合のパータン、制度設計の進め方までご教示いただき、大変勉強になりました。
あらゆる方面を考慮し設計したいと思います。
投稿日:2025/05/23 09:44 ID:QA-0152801大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
回答いたします。
ご質問について、回答させていただきます。
まず、貴社として行うべきことは、定年後の職務・職責の在り方と、
同一労働・同一賃金に該当する基準を明確に定めることであります。
基準を設けませんと、公平・公正な制度としての担保は難しいものです。
その上で、定年後の賃金設計について、現役時代との比較を交えた、
支給率(支給額)を制度として、決定されるのが良いでしょう。
マトリクス表でまとめられると、わかりやすいかと存じます。
仮に、定年前後で、労働条件に何ら変わりがないということであれば、
給与ダウンの合理的な理由がないこととなりますので、
給与水準は現役時代に一旦戻し、徐々に職務範囲・職責を見直すことで、
制度に沿って、給与を減額していく進め方が本来的な流れです。
すぐに月額給与の改定が難しいようであれば、臨時的な対応として、
一時金支給で年間報酬を調整するのも選択股かと存じます。
また、同時に現状、給与ダウンされている一般嘱託社員の方について、
給与ダウンを一定維持するのであれば、急ぎ、職務の量を減らすなど、
現役時代よりも負荷を軽くできないかもご検討ください。
投稿日:2025/05/22 08:00 ID:QA-0152703
相談者より
ご回答ありがとうございました。
同一労働とは何か、という基準の設定が非常に重要ですね。また、一旦給与水準を現役時代に戻して、職務範囲・職責を見直すことで給与を減額し
ていう方法も大変参考になりました。
まずは、同一労働の定義を社内で明確にしていくことから始め、制度設計を行っていきます。
投稿日:2025/05/23 09:49 ID:QA-0152802参考になった
プロフェッショナルからの回答
均衡待遇
以下、回答させていただきます。
(1)有期契約労働者と無期契約労働者との均衡待遇(労働条件の相違を認めつ
つ、それが不合理なものであることを禁止)に関連した判例として、名古屋
自動車学校事件(令和5年7月20日 最高裁判決)があります。これを手掛かり
にして若干ではありますが、考えてみました。
(2)判決では、「正職員と嘱託職員との間で基本給の金額が異なるという労働
条件の相違については、各基本給の性質やこれを支給することとされた目的
を十分に踏まえる必要がある」旨が述べられています。
(3)そして、正職員の基本給については、「勤続年数に応じて額が定められる
勤続給としての性質のみを有するということはできず」、「職務の内容に応
じて額が定められる職務給としての性質をも有するものとみる余地があ
る」、「職務遂行能力に応じて額が定められる職能給としての性質を有する
ものとみる余地もある」としています。
一方、嘱託社員の基本給については、「正職員の基本給とは異なる性質や
支給の目的を有するものとみるべきである」としています。
こうした上で、「各基本給の性質やこれを支給することとされた目的を十
分に踏まえることなく、相違の一部が不合理と認められるものに当たるとし
た原審の判断には、違法がある」旨が述べられています。
(4)本件、「役職のない一般嘱託社員は、定年到達時の給与より約40%ダウン
となっています」とのことです。その理由はどのようなことなのでしょう
か。例えば、正社員の基本給については「勤続給」、「職務給」、「職能
給」から成り立っている一方で、嘱託職員については「○○給」のみという
ことなのでしょうか。なぜ、こうしているのでしょうか。それぞれの支給の
目的はどのようなものなのでしょうか。基本給以外はどうなっているのでし
ょうか。まずは、足元の相違について、その合理性を確認することが重要で
あると考えられます。
(5)その上で、「役職のない一般嘱託社員は定年到達後も到達前と業務内容が
変わらない場合、同一労働・同一賃金の考えから、段階的に定年到達前の給
与水準に戻すことを検討しています」とのことです。これは、将来の姿とし
て、「職務給」を等しく、正社員、嘱託社員双方に支給することを想定され
ておられるのでしょうか。その理由はどのようなものなのでしょうか。これ
に関連して、嘱託社員のなかには、公的年金・給付を受給されておられる方
もいらっしゃると思われます。これについてどのように考えるのかという論
点もあろうかと思います。基本給以外についてはどうでしょうか。
(6)上記(4)の「足元」から、上記(5)の「将来の姿」への道筋をどのよ
うに考えるのか。いくつかのステップを踏むのであれば、それぞれにお
いて、正社員と嘱託社員との間での給与の差異について、その合理性を精査
することが必要になると考えられます。
(7)以上おおまかではありますが、少しでもご参考になれば幸いです。
投稿日:2025/05/22 08:54 ID:QA-0152717
相談者より
ご回答ありがとうございます。
弊社では現状嘱託社員の給与は、原則として月額基本給のみとなっています。(その他、資格手当、単身赴任手当などはあります。)随分と過去に決められたようで、過去の経緯までは存じませんが、同一労働同一賃金の考え方に沿って、可能な限り早急に制度設計を行いたいと考えております。
投稿日:2025/05/23 09:54 ID:QA-0152803大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
対応
本件は定年後社員の問題だけでなく、貴社の人事戦略の根本にかかわるものです。目指されている方向は、定年だけを理由として職務を変えずに減給するような企業と違い、たいへん素晴らしいご見識だと思います。
つまり嘱託社員に限らず全社員の職務分掌の明確化と評価の設定です。年齢という枠がなくなるのですから、定年と関係ない社員も適用されることになりますし、そうでなければ人事方針が成り立ちません。
全社員の業務の洗い出し、明確化は手間がかかりますが、どこかでこの荒療治は経なければ組織の改善は無いと思います。ぜひこの機に全社を挙げて取り組んでいただくべきと思います。
一方でこうした可視化への抵抗が必ずあります。そういった場合に会社がぶれずに方針を持ち続けることができるのか、意思が試されます。協力する人がこの先の会社の柱となる人材であり、抵抗勢力は現状改善を拒む人たちと考えることができます。
年齢ではなく、姿勢で戦力となる人材を見極めるチャンスです。
投稿日:2025/05/22 09:43 ID:QA-0152725
相談者より
ご回答ありがとうございます。
労働人口の減少や従業員の高齢化が進む中、長年行われてきた今の制度を抜本的に変えないことには、会社の成長はないと考えます。
この先組合との協議というハードルがありますが、会社方針はぶれずに制度設計を行い、まずは職務分掌の明確化を行ってまいります。
投稿日:2025/05/23 09:59 ID:QA-0152804大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、御社の制度詳細が分かりかねますので、一般的な回答に留まる旨ご了承下さい。
その上で申し上げるとすれば、従業員の実務上での業務負担の変更程度(時間数や責任範囲等)を考慮される必要がございますし、加齢による若干のマイナス要素も加味されてよいはずですので、まずはこうした観点から現状の一般嘱託社員の業務状況を精査されるべきといえます。
そして、その結果どの程度の給与水準が妥当であるかを判断されるとよいでしょう。
また、段階的といっても不利益処分ではございませんので、経営事情が問題なければ、即新たな給与額へ変更される事で差し支えないものといえるでしょう。
投稿日:2025/05/22 19:11 ID:QA-0152764
相談者より
ご回答ありがとうございました。
段階的が良いのか即時の変更とするのか、審議のうえ制度設計を行いたいと思います。
投稿日:2025/05/23 10:10 ID:QA-0152810参考になった
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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