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意欲あるかぎり働き続けられる職場へ
ベテランを戦力化する高島屋の「再雇用制度」とは

株式会社高島屋 人事部 人事政策担当次長

中川 荘一郎さん

再雇用ありきではなく、あくまでベテランの力を活かす

 これまでに制度を利用した社員の数は?

年々増えていますね。現時点で1,500人弱、社員全体の1割強を占めています。なかには再雇用を望まず「60歳になったらすっぱり辞める」という人もまだいますが、対象者の約7割は制度を利用しますね。コース別の比率でいうとシェア―ドが6割、シェアードのレギュラーで5割、キャストが3割を占めています。それ以外の「スーパーセールスコース」「技術・技能キャリアコース」など4コースは合わせて1割ほどです。

 中川さんからご覧になって、実際に制度を利用した社員の反応はどうですか。

人事部 人事政策担当次長 中川 荘一郎さん

皆さん、とても前向きですね。後輩の指導も心がけてくれているようです。面白いことに、短時間コースに回ったことでいままでの労働観が覆り、目からうろこが落ちたという人も少なくありません。最初はフルタイムで働いて、もっと稼ぎたいと思ったけれど、実際に短時間勤務を経験してみると「こういう働き方もいいなあ」と、認識を新たにするらしいんです。ワーク・ライフ・バランスへの意識を高め、私生活の充実に目を向けるきっかけにもなっているようですね。いままで仕事ひと筋で、趣味もなければ地域とのつながりもない、家庭内での居場所さえない。これでは、だめだと。

 再雇用制度の導入によってベテラン以外の社員(若手や中堅)、あるいは組織全体に何か変化や影響は見られますか。

経験のある人間が残ってくれるということは、現場にとって頼りになるし、やはり心強いですよね。私も売り場に立っていたので、よく覚えているのですが、ベテランから学ぶことって、とても多いんですよ。もちろん手とり足とり教えられるのではなく、「見て盗め」ですよね。職人の世界に近い。手本として、いてくれるだけで勉強になるんです。また最近の若手は、自分たちは年金がもらえないんじゃないかと、将来に強い不安感を抱いているでしょう。この間までは気軽に転職していたのに、今度は終身雇用がいいなんて、安定志向も強まっていますね。再雇用制度の導入によって、「会社は雇用を守るんだ」というメッセージが彼らに伝わる意味は小さくないと思います。

 人件費の総額に変化は?

再雇用する社員とは短時間勤務をメーンに新たな処遇で再契約していますし、それ以外にも業務の効率化や売り場の合理化を徹底していますので、総額としてはむしろ減りつつあります。

 最後に、ベテラン社員の戦力化に向けて、今後の展開と他社人事部へのアドバイスをお願いいたします。

今後、年金の支給開始年齢がさらに引き上げられることは確実です。高齢法もそうですが、パートタイマーへの社会保険適用拡大の議論からも目が離せません。高齢者の就労促進に関する制度の設計や改正にあたっては、そうした法律のゆくえをよく見きわめる必要があるでしょう。いずれにしても、「再雇用しなければいけないから、する」というようなスタンスではうまくいかないと思います。ベテランにどのような役割を求めるのか、戦力として活かせるような、必要とする形で再雇用するしくみを考えるべきです。

現行の高齢法では65歳までの継続雇用を求めているだけで、処遇や仕事の内容、配置先については不問ですから、極端な話、つらい職務につけることだってあり得るわけです。でも、それは違うでしょう。再雇用ありきではなく、あくまでもベテランの力を活用する。それぞれの方の働きがいを引き出して戦力になってもらう。働いている以上、仕事が楽しくて、やりがいがあると思って働いてもらわないと成果もあがりませんから。とても難しいですが、そういう仕事や働き方を、能力に応じてどれだけ用意できるかが、われわれ人事部の腕の見せどころではないかと思っています。

人事部 人事政策担当次長 中川 荘一郎さん

(取材は2012年2月23日、東京・中央区の高島屋オフィスにて)

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「人事辞典「HRペディア」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。

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この記事ジャンル 定年・再雇用・勤務延長

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【用語解説 人事辞典】
キャリアシフト
健康寿命
エイジレス社会
スキルマトリックス
育児・介護
ぶら下がりシニア
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