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キーパーソンが語る“人と組織”

労働力不足を乗り越え、人材の活性化を実現
「ミドル・シニアの躍進」を実現するために人事が行うべきこととは

立教大学 経営学部 助教/パーソル総合研究所 フェロー 

田中 聡さん

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田中 聡さん(立教大学 経営学部 助教/パーソル総合研究所 フェロー)

人手不足が続く中、いかに生産性を維持・向上させていくかが多くの企業にとって課題となっています。そこで注目されるのが「ミドル・シニア」層。経験豊富で社内事情も熟知した人材層ですが、その一方で「働かないオジサン」といったイメージがあるように、企業の中で十分に躍進しているとはいえない面もあります。このミドル・シニアを活性化させ、パフォーマンスを発揮してもらうために、人事はどんな取り組みを行えばいいのでしょうか。働く人と組織の成長・学習を研究し、ミドル・シニアの問題にもさまざまな提言を行っている、立教大学経営学部 助教の田中聡さんにお話をうかがいました。

プロフィール
田中 聡さん
立教大学 経営学部 助教/パーソル総合研究所 フェロー

1983年山口県生まれ。2006年 慶應義塾大学商学部を卒業後、株式会社インテリジェンス(現・パーソルキャリア株式会社)に入社。事業部門での経験を経て、2010年 同グループのシンクタンクである株式会社インテリジェンスHITO総合研究所(現・株式会社パーソル総合研究所)設立に参画。同社リサーチ室長・主任研究員を務めた後、2018年より現職。専門は、経営学習論・人的資源開発論。働く人と組織の成長・学習を研究している。株式会社パーソル総合研究所 フェロー。著書に『「事業を創る人」の大研究』(共著/クロスメディア・パブリッシング)、「HRアワード2019」書籍部門で入賞した『会社人生を後悔しない 40代からの仕事術』(共著/ダイヤモンド社)などがある。

「コスト人材」から「投資人材」へ 企業の見方が変わった

ミドル・シニアとは、どのような人材層と定義されるのでしょうか。また、現在の日本企業におけるミドル・シニアの状況をどのように捉えていらっしゃいますか。

労働力不足を乗り越え、人材の活性化を実現 「ミドル・シニアの躍進」を実現するために人事が行うべきこととは

企業がミドル・シニアにあらためて注目するようになったのは、有効求人倍率が1倍を超え、現在も続く人手不足が課題としてはっきりと認識されるようになった2014年頃からです。過去にも、バブル景気など人手不足の時代は何度かありましたが、いずれも需要サイドの一時的な盛り上がりを背景としたものでした。しかし、今回は異なります。若年人口が減少し、景気の変動によらず中長期にわたって労働力不足が続くという、かつて日本経済が経験したことのない未曾有の人材不足危機に由来しています。加えて、2013年の高年齢者雇用安定法改正に伴う雇用期間の長期化などを背景に、人員構成上のボリュームゾーンを占める中高年人材=ミドル・シニアの生産性向上に注目が集まるようになりました。

そういった動きを踏まえて、2014年に私がフェローを務めるパーソル総合研究所と法政大学大学院・石山恒貴研究室が共同で「ミドル・シニアの躍進を探究するプロジェクト」を立ち上げました(研究の成果は、『会社人生を後悔しない 40代からの仕事術』(ダイヤモンド社)として書籍化)。ここからは40~54歳をミドル、55歳以上をシニアと定義してお話ししたいと思います。

ミドル・シニアの活性化とは、企業にとって新しいテーマなのでしょうか。

いえ、景気の後退局面では必ずと言っていいほど、ミドル・シニアが組織人事上の重要テーマとして取り上げられてきました。しかし、これまでミドル・シニアに関する議論の多くは、「高い賃金をいかに抑制するか」「いかに雇用を調整するか」というものだったと思います。その背景には、ミドル・シニアを「さらなる成長を見込めない高コスト人材」と捉える見方が経営・人事の間に少なからずあったように思います。ですから、本当の意味での「活性化」を目指した議論とは言い難いですね。

しかし、今回は構造的な人手不足という問題がまったく違う角度から迫ってきました。現在、40代後半の団塊ジュニア世代をピークに労働人口は着実に減っています。そのことを企業が認識した結果、ミドル・シニアへの見方が変わっていったわけです。シンプルにいえば、これまで「コスト」と見ていたミドル・シニアを、「投資対象」と考えるようになってきています。

ミドル・シニアには、どのような特徴があるのでしょうか。

一括りにして論じるのはとても難しいのですが、あえて共通点を一つ挙げると、「就社」意識です。今の50代はバブル期に就職した世代で、多くの内定先から1社を選ぶことができました。一方、今の40代後半(団塊ジュニア世代)は就職氷河期世代と言われ、多数の企業に応募してなんとか1社から内定をもらえるような状態でした。新卒入社時の状況は正反対ですが、会社の一員として所属する意識、つまり、メンバーシップのような価値観を持って働いてきた人たちであるという点で共通していると言えます。

労働力不足を乗り越え、人材の活性化を実現 「ミドル・シニアの躍進」を実現するために人事が行うべきこととは

しかし今、「それは大きな幻想だったのではないか」と多くのミドル・シニアは気づき始めています。終身雇用という暗黙の約束を信じて入社し、「会社のため、家族のため」という思いで長時間労働や全国転勤をいとわず会社に尽くしてきた。それなのに、ここにきて「終身雇用の時代は終わりました。これからはキャリア自律の時代なので、みなさん専門性を身につけて他社でも通用する人材になってください」と一方的に言われてしまうわけです。「こんなはずじゃなかった」「会社って何なんだ」という虚無感にとらわれてしまうのも無理はありませんよね。ミドル・シニアの人材マネジメントについて考える際は、現時点での個人の意識や行動だけを切り取って課題視するのでなく、こうした日本的雇用慣行がもたらす長期的な影響についても考慮する必要があります。


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