権限、役職、カリスマ性がなくても発揮できる
職場と学校をつなぐ「リーダーシップ教育」の新しい潮流(後編)[前編を読む]
早稲田大学 大学総合研究センター 教授
日向野 幹也さん
リーダーシップと専門知識は自転車の“前輪”と“後輪”の関係
今年4月には、一般社団法人日本リーダーシップ学会が発足しました。わが国のリーダーシップ開発の展望や課題と、ご自身の抱負をお聞かせください。
私の次のゴールは、全国の大学と高校にリーダーシップ・プログラムができて、権限がなくてもリーダーシップを発揮できる人材が、社会に続々と輩出されることです。いくら潮流とはいえ、自然にそうなるわけではありませんから、私も、他校に的確なアドバイスを行ったり、必要な人材を派遣したりといったことに力を入れていくつもりです。そのための“ハブ”として、立教大学や早稲田大学、日本リーダーシップ学会を活用していただければと考えています。
日向野先生にとって、この11年間は、まさにリーダーシップという名の冒険だったのではないでしょうか。いま振り返ってみて、いかかですか。
幸運にも、素晴らしいジャンルに出会えたと思っています。リーダーシップ教育に関わったのは、本当に偶然でしたが、それがアクティブ・ラーニングと組み合わさって、これほど大きな潮流になるとは、夢にも思いませんでした。リーダーシップ教育にのめり込むうちに、私自身もそれまで以上に、自覚的にリーダーシップを発揮するようになったような気がします。
ありがとうございました。最後に、企業の中でリーダー育成や人材教育に取り組んでいらっしゃる方々に向けて、メッセージをお願いします。
最近、企業と学校、職場と学校のつながりが弱まっているとよく言われますが、そのつながりを取り戻すのに一番ふさわしい素材は、リーダーシップではないでしょうか。もちろん、専門科目で学ぶような専門知識や業務知識も必要です。しかし、人と協力して目標を達成するリーダーシップのスキルがなければ、せっかく学んだ知識を職場や組織で活かすこともままなりません。リーダーシップと専門知識は、いわば自転車の“前輪”と“後輪”の関係なのです。20年前と比べると、大学はものすごく変わりました。特にリーダーシップ教育に関しては、当時はゼロだったものが、質・量ともにかなりレベルが上がってきています。学生たちのリーダーシップを2、3年後に自社で活用できないか、ぜひ一度、大学でのリーダーシップ教育の現場を見学していただければと思います。
さまざまなジャンルのオピニオンリーダーが続々登場。それぞれの観点から、人事・人材開発に関する最新の知見をお話しいただきます。