急激かつ断続的な通貨安下における海外赴任者の給与調整について
昨今のコロナショックを機に、新興国にて通貨安が急速に進み、海外赴任者から給与の円建ての価値下落に対して、不満の声が上がっております。
弊社では、購買力保証方式を導入していますが、通貨の下落が深刻なブラジル・トルコの駐在員に対する対処方法を考えあぐねております。
通貨が著しく不安定な新興国への海外赴任者の給与体系には「購買力保証方式」をどのような形で適用するのが、最も一般的で、労使双方にフェアでしょうか?
長文になりますが、弊社の仕組みを説明させてください。まず、日本の理論年収を、A.国内生活費、B.貯蓄費に分けます。A.国内生活費に対して、外部機関のINDEXを用いて、海外でも日本の生活水準を保てるように、C.海外生活費として調整を加えます。
海外給与は、C.海外生活費を原則1年間、現地通貨(例:ブラジルレアル)の固定額で、現地法人から支給します。一方で、国内給与はB.貯蓄費に加えて、D.インセンティブを理論年収の20%加算(円建て)を支給しております。
以下、日本での年収を500万円と仮定しブラジル赴任者のシミュレーションです。
<①海外赴任者給与モデルベース> - 600万円
=500万円(日本国内での年収= A. 国内生活費300万円+B.国内貯蓄費200万円)+D.500*20%(インセンティブ)
<②2019年4月ーブラジル赴任者例> - 650万円
=550万円(C.ブラジル生活費115千BRL<約350万円*>+B.国内貯蓄費200万円)+D.500*20%(インセンティブ)
*INDEX:1.16
-物価の変動は少なく現地の生活水準に変化はないが、1年間で35%通貨が下落し、日本円での価値が約100万円下がりました-
<③2020年4月 - ブラジル赴任者例> - 500万円
=500万円(C.ブラジル生活費115千レアル<約200万円>+B.国内貯蓄費200万円)+D.500*20%(インセンティブ)
海外赴任者からは、1.円建ての給与価値減少は、業績や個人のパフォーマンスではなく外部環境要因であること。2.海外赴任者は現地採用ではなく、帰国が前提の日本の社員であること。3. 先進国赴任者は、急激な通貨リスクを負っていないこと。
以上を理由に、日本での理論年収に加えて、グローバルの駐在員一律で支給しているインセンティブ、つまり①の600万円は、円建てで最低限保証が必要だと主張しています。
また、各種手当など理論年収への追加可算分ではなく、日本国内の理論年収がINDEXに左右される仕組みそのものに不備があると主張しています。
帰国を前提とした海外赴任であるため、理論年収の円建ての価値が目減りすると、家庭の貯蓄努力が無駄になり、将来設計にも影響が出るという点も、問題になっています。
為替変動への緩和策として、現地支給額を日本円へ振替る仕組みを設けているのですが、毎月のレートが適用されるため、為替リスクを従業員が負う仕組みです。
ブラジルでは通貨安が進んでおり(過去15年で70%下落)、外貨預金で将来為替が戻ったときに両替すればよいというわけにも行きません。
事実、赴任者の円建ての支給価値には、3年間で数百万円規模のインパクトが出る状況です。ブラジル赴任者からは、円建て保証ができない場合、現地支払い分はUSD建てに変更を依頼されております。
一方で、給与体系の変更は、全世界の駐在員に影響を与えるかつ、社内でも多くのプロセスが必要で一朝一夕にはいきません。
根本的な解決にはならないのですが、ハードシップ手当を検討しています。労働時報3900号/15.12.11を確認するとハードシップ手当には、管理職ではない一般社員でも、企業により、大きなブレ(月額1万円ー18万円)があります。何をベースに設定すべきでしょうか。
大手では、全世界の海外赴任者の給与テーブルがあり、円建て・外貨建の合計額がある円建て(もしくはUSD建て)で、コントロールされていると伺いました。
以下の通り、駐在員が為替リスクを負う部分を最小限におさえている形です。また現地支給する際は、現地通貨だが、USDベースを保証している例が多いことがわかりました。このような例がやはり適切なのでしょうか。
<④ブラジルで一般的な例 - 650万円>
=500万円(国内生活費<約300万円>+貯蓄費<200万円>)+500*20%(インセンティブ) + 購買力保証かつドル建て <4500ドル(約50万円)>
ブラジルは、COVID-19の感染爆発が深刻で、海外赴任者の一次帰国指令を出した企業も多いと聞いています。できる限り早く改善を実施し、現地で奮闘している駐在員の功に報いたいところです。
投稿日:2020/08/29 12:57 ID:QA-0096242
- グローバルHRさん
- 兵庫県/医療機器(企業規模 5001~10000人)
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