通勤手当の非課税限度額の改正対応について_続
【投稿日:2025/11/21 15:58 ID:QA-0161034】
上記、「通勤手当の非課税限度額の改正対応について」のIDの質問に重ねて
質問をさせてください。
(上記IDの質問は同社の別担当者から質問させて頂いておりました)
前回の質問内容は以下の通りでした。
・背景:
社員の100%がマイカー通勤で、給与規定では通勤手当について「所得税法施行令による非課税限度額とする」と定めている
・質問:
通勤手当の非課税限度額の改正は2025年4月1日以降について適用とされているが、当社において2025年4月1日以降の通勤手当について遡り支給をする必要があるか。
また、給与規定の該当箇所に「適用は施行月の翌月より実施とする」という追記をする検討中だが問題ないか。
ご回答の中の1つのご意見で「過去の改正時の対応は要確認」といただきましたので確認したところ、2014年の改正の際は差額分の遡り支給をしておりました。しかしながら、今回は遡りの支給をせずに対応することを念頭に置いております。
理由としては以下の通りです。
・通勤手当を支払う義務はなく、会社の定めによるものであるため
・今回の改正の主旨は通勤手当の非課税限度額を超える支払いをしている者に対する年末調整での修正であり、非課税限度額の範囲で支給をしている当社は特に該当しないため
・給与規定の該当箇所に「適用は施行月の翌月より実施とする」という追記をすることで12月給与より改正額に基づく金額変更を行う予定としているため
今回の質問は、法改正施行後に規程に追記を行う(要は後追いの対応)ことは労務管理上問題ないかという点となります。
「適用は施行月の翌月より実施とする」という記載が現時点ではない(明確になっていない)状態ですが、1月には他規程と合わせ改訂予定です。
ご確認いただけますようよろしくお願いいたします。
投稿日:2025/11/28 16:28 ID:QA-0161271
- とものとはさん
- 静岡県/化粧品(企業規模 51~100人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1.結論
後追いで「適用は施行月の翌月より実施する」と追記することは、労務管理上問題ありません。
むしろ、通勤手当の支給時期を明確化し、実務と規程を整合させる意味で望ましい対応です。
遡及支給をしない方針も、法令違反ではなく問題ありません。
通勤手当は法定の義務ではなく就業規則に基づく会社裁量であること、今回の改正趣旨が「年末調整での非課税枠調整」であることから、遡及支給は求められません。
※注意点
・「施行月の翌月より実施」は、給与締日・支給日のルールと整合するように
・過去との整合性(2014年は遡り実施)→今回が不利益変更に当たらないかの検討
→今回のケースはそもそも「支給額を下げるわけではない」ため不利益変更には該当せず問題なし
2.今回の改正(2025年4月1日〜)の性質
今回の「非課税限度額の引き上げ」は、
●目的:
非課税枠を超えていた人の年末調整における是正をしやすくするため。
●対象:
非課税限度額を上回る通勤手当が支給されている場合のみ有意。
3.御社の状況における法的義務の有無
御社の規程は
「所得税法施行令による非課税限度額とする」
としているだけで、
支給額=常に税法の非課税枠いっぱいまで支払う義務
を課しているわけではありません。
したがって、法改正があったからといって、
会社が必ず遡って支給額を上げなければならない義務はありません。
4.後追いの規程改訂は問題があるか?
結論として、問題はありません。
その理由は次の通りです。
(1)通勤手当は法定給付ではなく会社裁量
通勤手当を支給しない会社も存在できます。
したがって、支給時期や金額の決定は会社の裁量内です。
(2)改正内容は「非課税枠の変更」であり、労働条件ではない
これは「税務上の取扱い」の改正であって、労働基準法上の「労働条件」ではありません。
したがって、労働条件の不利益変更にも該当しません。
(3)後追いで条文を整備することは実務上よくある対応
賃金規程は、法改正に伴って後追いで明確化条文を入れる企業は多く、
実務慣行として問題はありません。
※特に「通勤手当の改定を毎回税制改正に連動させて自動的に反映するのか・会社判断で反映するのか」を明確化する目的でも意味があります。
5.2014年改正時に遡及支給したこととの整合性は?
御社で2014年時に遡り支給を行ったことについては、今回は下記の点から法的リスクにはなりません。
・今回:支給額が変わるわけではない(=上げる義務がない)
・従業員にとって不利益にならない
・過去に遡り実施したのは当時の会社判断であり、今回と同様に“義務ではなかった”
したがって、「過去遡って対応した=今回も必ず遡りが必要」という義務はありません。
6.規程に追加する文言の妥当性
御社が予定している
「適用は施行月の翌月より実施とする」
という追記は、次の理由で妥当です。
・給与支給・締日との整合を取るのに合理的
・事務負担の増加を避けられる
・税制改正の都度、会社判断で反映時期を決められる
・従業員への説明も簡潔になる
7.総合判断
・ 遡及支給は不要(法律上の義務なし)
・ 後追いで規程に追記しても労務管理上の問題なし
・ 1月に改訂するスケジュールも妥当
・ 実務・説明責任の両面で合理的な対応
従って、今回の御社の方針は非常に適切な対応であり、労務リスクはありません。
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/12/01 09:34 ID:QA-0161311
相談者より
この度は、通勤手当の遡及支給および社内規程の事後反映に関するご回答をいただき、誠にありがとうございました。
ご指摘いただいた内容を参考に、社内での対応方針を検討する上で非常に助かりました。
今後も不明点があれば、またご相談させていただくかもしれませんが、その際はよろしくお願いいたします。
投稿日:2025/12/02 14:28 ID:QA-0161426大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
・まずは、今回の非課税限度額の引き上げに伴い、従業員からも質問があるかもしれませんので、会社としてのスタンス、説明、理由を考えておいた方がよろしいでしょう。
・税務上の問題であるので、通勤手当は、遡って支給はしない。としても不合理ではないでしょう。
・かつ、今後の対応として、ご新式のように、規定に追記したり、
あるいは、所得税法施行令による非課税限度額とするという文言を改定して、
具体的な金額を記載するなどの、対応は必要です。
投稿日:2025/12/01 15:26 ID:QA-0161336
相談者より
回答ありがとうございました!
通勤手当の遡及支給や規程反映について、いただいたアドバイスがとても参考になりました。
また機会があればぜひ相談させてください。本当にありがとうございました。
投稿日:2025/12/02 14:28 ID:QA-0161428大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
まず、以下については大変望ましい対応です。こちらを規定することで、
以後は遡及支払いの問題が生じなくなります。
|給与規定の該当箇所に「適用は施行月の翌月より実施とする」という追記を
|する検討中だが問題ないか。
次に以下についてですが、最終的には貴社判断で宜しいかと存じます。
|当社において2025年4月1日以降の通勤手当について遡り支給をする必要が
|あるか。
理由は、ご記載いただいた通り、通勤手当を支払う義務はなく、会社の定めに
よるものであり、遡及支払いの有無については、現行規定上、支払う旨も、
支払わない旨も記載がありませんので、今回、貴社でのご判断となります。
但し、過去の遡及支払いについて、従業員より意見が生じる可能性もあり、
大きなトラブルに発展した場合(民事上で争われた場合)は、支払いを
命じられる可能性もゼロではありません。そのようなことからも、早めに
規定を改定されることをお勧めいたします。
投稿日:2025/12/01 15:28 ID:QA-0161338
相談者より
この度はご回答いただきありがとうございました。
ご教示いただいた内容を踏まえ、社内での対応を進めていきたいと思います。
今後、追加で確認が必要な場合は改めてご相談させていただきますので、その際はよろしくお願いいたします。
投稿日:2025/12/02 14:29 ID:QA-0161429大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、通常であれば遡及対応される必要があるものといえます。
但し、文面内容で示された「今回の改正の主旨は通勤手当の非課税限度額を超える支払いをしている者に対する年末調整での修正であり、非課税限度額の範囲で支給をしている当社は特に該当しないため」という事実があるようでしたら、遡及対応されなくとも差し支えないものと考えられます。
その上で、今後別の法改正等が生じた際に遡及対応が求められる可能性もございますので、むしろきちんと追記をされておかれるのが望ましいといえるでしょう。
投稿日:2025/12/01 21:11 ID:QA-0161372
相談者より
ご回答ありがとうございました。
大変参考になりましたので、社内対応に活用させていただきます。
今後ともよろしくお願いいたします。
投稿日:2025/12/02 14:29 ID:QA-0161430大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
日本の人事部Q&Aをご利用くださりありがとうございます。当方、QA-016034 の回答にて「過去の改正時の対応は要確認」であるとアドバイスさせて頂いた者です。
さて、今回のご質問ですが、結論から申し上げると、後追いの対応について労務管理上の問題(あるいはリスク)は概ね生じないのではないかと思料いたします。
その理由は、今回の所得税法施行令の改正は、通勤手当の課税標準の変更に関するものであり、結果的に貴社の通勤手当の額に影響するものの、貴社における給与諸手当の支給額の決定や支給の方法を直接的に規定する趣旨ではないからです。
つまり貴社の賃金規定の改訂が、所得税法施行令の改正後であったとしても、労務管理上は「後追いの対応」とはなっていないともいえます。むしろ法改正を受けて1月に自社の賃金規定を改訂するという順当な流れではないでしょうか。
なお12月より通勤手当を改訂することについて、賃金規定の最後に「附則;第○条○項に定める通勤手当の額は、2025年12月度の給与から遡及して適用する」などの文言を入れておくと、規定改訂日と給与計算事務との整合性も担保できるでしょう。
ところで前回の回答の中で「過去の改正時の対応は要確認」と申し上げた意図は、古参の従業員の中には、前回の改正時のことを覚えていて、前回と今回とで会社側の対応が異なる理由について、所属長あるいは人事部に疑義照会してくる方がたまにいるからです(経験者談)。
しかし貴社ではすでに合理的な理由をきちんとご用意されていますので、そのとおり回答すれば問題ありません。もし前回同様の取り扱いが長期的に反復され、貴社における不文律として職場で認知されている場合は、規定同様の効力を有しますが、今回のケースは10年ぶりの改正なので大丈夫でしょう。
注意すべきは従業員が「非課税限度額を支給する」という現行規定の文言を額面どおりに受け止め、通勤手当の遡及改訂を要求される場合が無きにしもあらずという点です(この点は監督官でも意見が割れるかもしれません…)。
しかし前回の回答通り「遡及するのは課税処理の話である」ことを明確にし、賃金規定改訂を他の諸規定と同列にして粛々と進めてしまうこと、また合理的理由は、規定改訂の手続において、社内から問い合わせがあった場合に丁寧に説明し、従業員の理解を得るといった工夫も必要ではないかと考えます。
以上となりますが、ご質問者様の参考になれば幸いです。
どうぞ宜しくお願い致します。
投稿日:2025/12/02 10:20 ID:QA-0161389
相談者より
この度は、通勤手当の遡及支給および社内規程の事後反映に関して、具体的かつ実践的なご助言をいただき、誠にありがとうございました。
ご提示いただいた視点は、社内での対応方針を検討する上で非常に参考になりました。
今後も必要に応じてご相談させていただくことがあるかと思いますが、その際はよろしくお願いいたします。
投稿日:2025/12/02 14:31 ID:QA-0161431大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
とものとは 様
ご丁寧なコメントを頂戴しありがとうございます(回答者冥利に尽きます!)。そのお礼といってはなんですが、最後に貴社で給与規定の改訂を進める際にお役に立ちそうな情報を提供させて頂きます。
まず今般の通勤手当の非課税限度額の改訂は、今年8月の人事院勧告による国家公務員の通勤手当引き上げに合わせたものです。国家公務員の給与手当は事業年度(4月~3月)単位で適用されるルールなので、4月に遡及して改訂することになったのですが、それと合わせて通勤手当の非課税限度額を民間も含めて4月から適用することとしたのです。
ところで貴社の給与規定では、いつの非課税限度額を通勤手当とするかは明記されていませんが、その時の非課税限度額に応じた通勤手当を支払うという建付けが、社会通念上相当ではないかと思います。であれば11月に新たな非課税限度額が施行されたので、翌月の12月から通勤手当を改訂するという説明は充分理にかなっています。
例えばもし貴社が非課税限度額を超える通勤手当を支給していた場合、やはり貴社においても4月に遡及して非課税限度額の差異を清算することになります。しかし貴社が遡及するのはあくまでも課税関係の処理であり、給与規定の文言を杓子定規に解釈して「4月から通勤手当を増額せよ」というのは論理の飛躍としか言いようがありません。
この論点の肝は、(1)貴社の通勤手当は国家公務員の通勤手当に準じて支給するわけではないこと、(2)所得税法施行令において非課税限度額を4月に遡及するのは国家公務員の通勤手当改訂に合わせるためであること、(3)民間企業において非課税限度額を4月から遡及適用するのは新旧非課税限度額の差異清算のためであること、の3点です。
もし従業員の方から通勤手当改訂の時期について疑義照会があった場合は、ぜひこの情報もご参考にして頂けると幸いです。最後になりますが、来年1月の規定改訂が上手くゆくことを陰ながら応援しております。
投稿日:2025/12/03 08:41 ID:QA-0161485
相談者より
このたびは、傷病休職について丁寧なご説明・追加情報をいただき、ありがとうございます!とても分かりやすく、理解が深まりました。さらに、通勤手当の非課税限度額改訂や国家公務員制度との関係など、実務に役立つ情報までいただき感謝しています。(特に3つのポイント(①国家公務員との関係、②所得税法施行令の趣旨、③民間企業での遡及適用)は、社内説明や質問対応にしっかり活用させてください。)社員からの質問にも説得力を持って対応できそうです。
来年1月の規定改訂に向け、知識が足りず不安がありましたが、山口様に多くの有益な情報・ご見解をいただけたお陰でスムーズに進められそうです。改めて、貴重な情報をありがとうございました!今後ともよろしくお願いします。
投稿日:2025/12/03 10:32 ID:QA-0161494大変参考になった
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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