労働条件の間違いによる給料の過払いについて
年間契約の社員について、毎年、労働契約を経て採用しているところですが、継続して採用する一部の社員について、昇級条件を満たしていないにもかかわらず、基本給を上げてしまっていました。
そこで、過払いの部分について、返還を求めたいと考えていますが、「労働契約に基づいた支払い」だった場合、返還を求めることは可能でしょうか。
具体的には、4月に契約したため、4月~10月分で過払いが発生しています。
また、別の社員については、前年から労働条件が誤っており、前年分と今年分の過払いが生じています。
使用者側のミスにより、労働条件の基本給が上がっていたものですので、労働者に返還を求めていいのかどうかをお伺いしたいです。
投稿日:2025/11/12 16:08 ID:QA-0160534
- あおいうみさん
- 香川県/その他業種(企業規模 501~1000人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
過払いということを証明できるのであれば、
それは、不当利得ということになりますので、
返還してもらうことは可能です。
ただし、会社のミスということもありますので、
謝罪ベースでよく説明し、
返済方法については、よく話し合ってください。
投稿日:2025/11/12 20:25 ID:QA-0160546
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、昇給条件等について就業規則等で具体的に明示されておりかつ昇給時に面談等で説明をされているようでしたら、当人も過払いを認識可能であったと推定されますので、返還請求は可能といえるでしょう。但し、当人とご相談の上であくまで無理のない返還スケジュールとされるべきです。
一方、そうした明示また説明等が十分にされていないようでしたら、会社側の不手際である以上今になって返還請求される措置に合理性は見い出せないものといえるでしょう。
投稿日:2025/11/12 23:21 ID:QA-0160557
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1.前提整理:過払いが「労働契約に基づく支払い」か「誤払(錯誤)」か
給与の過払いを返還請求できるかは、次のどちらに該当するかで異なります。
区分内容返還請求の可否
(1)誤払(錯誤)使用者が計算ミス・誤認で支給した。労働契約上の根拠なし。
→原則返還請求可(不当利得)
(2) 契約に基づく支給労働契約書・通知書に明示された金額を支払った。→× 原則返還請求不可(有効な契約による支払)
2.本件のようなケースの法的性質
「昇給条件を満たしていないのに、労働契約書上で基本給を上げて締結していた」
この場合、使用者自身が新しい契約条件として基本給を明示しており、労働者がその条件を前提に勤務しているため、原則として「契約に基づいた支払い」とみなされます。
つまり、誤って締結した労働契約であっても、契約が有効な限り支給は適法であり、返還請求はできないのが原則です。
3.法的根拠:錯誤(民法第95条)と不当利得(民法第703条)
・民法第95条(錯誤)
意思表示は、その内容に錯誤があったときは無効とする。
ただし、錯誤が認められるためには
重要な部分に関する錯誤であること
労働者側がその錯誤を知っていた、または知り得たこと
が必要です。
したがって、労働者が「昇給の根拠がないことを知りながら受け取った」などの特段事情があれば、錯誤を理由に契約の一部無効(=過払い部分返還)を主張する余地があります。
しかし現実には、
・労働者は会社から提示された契約金額を正当と信じていた
・昇給条件の内部基準を知らなかった
という事情が多く、錯誤無効の主張はほとんど認められません。
4.代表的裁判例
・(返還認められた例)
東京地裁昭和55年2月26日判決(都労金事件)
誤って昇給額を多く支給していたが、労働者が明らかに誤りと知っていた。
→「受領に悪意あり」として不当利得返還請求を認容。
×(返還認められなかった例)
東京地裁平成9年7月28日判決(全日空事件)
誤った計算で支払われたが、労働者に不正・悪意はなかった。
→「会社の過失による支給」であり、返還義務なし。
×(契約書記載額による支給)
大阪地裁平成14年3月18日判決(学校法人事件)
誤った昇給額で契約書を締結。
→契約自体が有効に成立しており、返還請求は棄却。
5.今回のケースへのあてはめ
事項法的評価昇給条件を満たしていないのに基本給を上げて契約労働契約上の有効な支払い(錯誤無効の主張困難)会社側が誤って契約書を作成使用者のミスによるもの(自責)労働者が不正を働いた(虚偽申告等)その場合のみ返還請求が可能労働者が昇給の根拠を知らなかった善意受領者とみなされ返還不要
→ よって、原則として返還請求は困難です。
特に「契約書に基づいて支給していた」場合は、「過払い」ではなく「有効な労働条件の結果」と扱われます。
6.例外的に返還が認められる余地
次のような特段の事情があれば、返還請求が成立しうることがあります。
契約書や通知書の記載が明らかな誤記(打ち間違い・事務ミス)
例:「本来20万円を打つところを200万円と記載してしまった」
→ 明白な錯誤であり、返還請求可。
労働者が誤りを認識していた
例:「自分の昇給要件を満たしていないことを知りながら受け取った」
→ 不当利得として返還可。
就業規則・賃金規程と明らかに矛盾する支払い
例:「等級表上あり得ない額での契約」「昇格決裁未承認」など。
これらに該当する場合は、
「民法703条(不当利得返還請求)」や「錯誤無効」を根拠に返還を求めることが可能です。
7.返還請求を行う場合の注意点
対応項目実務上の留意点返還方法一括返還を強制せず、本人同意の上で分割返還を提案する返還額の確定各月の誤支給額を明確に算定・説明(税・社保含む)相殺処理本人の同意がなければ給与からの控除不可(労基法24条違反)文書化「誤支給精算合意書」「分割返還誓約書」を作成誠実対応「会社のミスでご迷惑をおかけした」との姿勢を明記
8.まとめ(結論)
論点判断・結論契約に基づく支給(誤契約)原則、返還請求不可(有効契約)明白な誤記・事務ミス返還請求可(錯誤または不当利得)労働者が誤りを認識していた返還請求可労働者が善意で受領した返還請求困難過去年度分(前年からの過払い)同上。契約が有効なら返還不可
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/11/13 08:36 ID:QA-0160581
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
労働契約に基づいた支払いであり、会社側のミスとのことですので、
返還請求は難しいと考えていただいた方が宜しいでしょう。
但し、以下の2条件が揃えば、返還請求は可能です。
・明らかに誤った基本給で労働契約が結ばれたことが会社規程上、立証できる。
例えば、職能等級と給与額が紐づいており、給与テーブルが給与規程内に、
規定されているなど。
・本人が返還について、同意している。
謝った給与額の根拠に対する立証が難しい場合は、返還請求はせず、今後の
給与額についての改定(減額)を真摯に話し合いを行った方が良い問題です。
投稿日:2025/11/13 08:39 ID:QA-0160582
プロフェッショナルからの回答
賃金過払いによる相殺
以下、回答いたします。
(1)「過払賃金の清算」については、通達(昭和23年9月14日 基発1357号)では、以下の旨が述べられています。
※ 前月分の過払賃金を翌月分で清算する程度は賃金それ自体の計算に関するものであるから、労働基準法第24条の違反とは認められない。
(2)また、判例として、次のものがあります。(厚生労働省「確かめよう労働条件」)
https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/hanrei/chingin/sousai.html
福岡県教組事件(S50.03.06最一小判)
【事案の概要】
Y県は、昭和33年5月21日に公立学校の教職員Xらに支給した給与中に1日分の給与の過払があったことから、同年8月21日に支給された給与から減額したところ、Xらはこれを不当として、減額分の返還を求めて提訴したもの。
福岡高裁は、3か月経過した後の賃金との相殺は、時機を逸しており、例外的に許容される場合に該当しないとし、最高裁もこれを維持し、上告を棄却した。
【判示の骨子】
賃金過払による相殺は、過払のあった時期と賃金の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期においてなされ、その金額、方法等においても労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれのないものである場合にかぎり、許されるものと解される。
Y県は、過払分を翌6月分の給与から減額することが可能であったのに、8月分の給与から減額を行ったものであり、その遅延した主たる理由は、減額をすることの法律上の可否等の調査研究をしながら、当時同種事案をかかえていた東京都の動向を見守っていたところにあるのであるから、本件相殺は、これをした時期の点においていまだ例外的に許容される場合に該当しないとしている原審の認定判断は、正当として首肯することができる。
(3)本件については、「4月に契約したため、4月~10月分で過払いが発生」、「別の社員については、前年から労働条件が誤っており、前年分と今年分の過払い」、「使用者側のミスにより、労働条件の基本給が上がっていた」とのことです。
上記(1)、(2)を踏まえれば、ミスがあったことについて丁寧に説明し今後減額することについて理解を求める一方で、既払い分については返還を求めないことが実際的であると考えられます。
その際には、黙示の契約が成立している可能性にも留意することが有益ではないかと思われます。
投稿日:2025/11/13 08:55 ID:QA-0160585
人事会員からの回答
- オフィスみらいさん
- 大阪府/その他業種
就業規則の定め方次第です。
昇給条件等について具体的に定めているのであれば、それを根拠に返還を求めることも可能となり得るでしょうが、そうでなければ会社側のミス、本人の同意がない限り請求は困難といえるでしょう。
請求が可能であれば、社員の経済生活の安定を脅かすことのないようにしなければならず、過払い賃金を翌月以降に支払う賃金から控除するのは調整的相殺であって、賃金全額払いの原則に反することもありません。
実務的には、過払い賃金を取得した社員との間で、過払い額を確定し、2~3ヵ月以内に行い、精算額が大きければ複数回に分けて行うようにし、今後の賃金の支払いの中から具体的にいくら、どのように返済させるかという点で同意を得て、書面に残したうえで行えば、適正といえるでしょう。
投稿日:2025/11/13 09:49 ID:QA-0160588
プロフェッショナルからの回答
対応
会社のミスによる振り込みなので、返還をお願いすることは問題ありません。
ただ社員からしてみれば限りなく不快活、会社への信頼を根底から覆すような深刻なミスなので、そこまでして回収するかどうかは経営判断です。
とはいえ現状が間違っていることの修正は必要なので、経緯を説明するところまでは必ず行って下さい。
いずれにしても重大な会計・人事以上のミスなので、しっかり原因と根性論以外での防止対策は経営責任として定めるべきでしょう。担当役員の責任とすべき重大事庵です。
投稿日:2025/11/13 13:21 ID:QA-0160606
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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