仮払金を社員が私的に流用している場合の懲戒処分について
社員の処分に関しての質問です。
弊社では一定の役職の社員は出張が多く、出張でかかる交通費や宿泊費などはすべて会社のクレジットカードにて決済を行っております。
そのため、社員が出張精算をする際は出張した分の日当を支給するのみのケースがほとんどなのですが、明らかに必要のない仮払いを出張前に行っている社員がおります。
出張後にはきちんと仮払いは精算しているため、支払ったままになっていることはないのですが、「出張の2週間以上前に仮払いをしている」「日当の予定額の倍以上の金額を仮払いしている」等、不審な点が多かったため問い詰めたところ、明らかに嘘をついていると思われる辻褄の合わない回答がありました。
電話での会話だったため後日あらためて対面で確認予定なのですが、周囲への聞き取りによると、どうやらギャンブルにお金をつぎ込んでいるようです。
もし一時的にでも私的に(ギャンブル等に)会社の仮払い金を流用していることを本人が認めた場合は、会社としてはどのような処分を行えばよいでしょうか。
会社のお金に手を付けたことには変わらないため、降格・場合によっては懲戒解雇等が妥当なのか、それとも、お金は戻ってきており結果として損害は出ていないため、始末書の提出などで済ませるのか、対応に悩んでおります。
私としては、お金は戻ってきてはいますが、やったことの責任を取らせるためにも降格は免れないのではと思っております。
対応策をご教示いただけますと幸いです。
投稿日:2025/08/20 11:00 ID:QA-0156872
- ほりいさん
- 東京都/医療・福祉関連(企業規模 101~300人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1. 法的な位置づけ
会社の仮払い金を私的に流用する行為は、「横領」や「背任」までは直ちに該当しない場合もありますが、会社資産の不正利用に当たる可能性があります。
実際に会社に損害が発生していない(全額返済している)ことは「量刑的」には考慮されますが、行為自体は「職務上の信頼関係を大きく毀損する行為」と評価できます。
2. 就業規則との関係
懲戒処分を検討する際は、必ず就業規則の懲戒事由に該当するかを確認する必要があります。
典型的な条文例では以下にあたります。
「会社の金銭を不正に使用したとき」
「会社の信用を著しく傷つけたとき」
「職務上の義務違反があったとき」
また、懲戒解雇を行う場合は、労働契約法15条・解雇権濫用法理との関係で「客観的合理性」と「社会的相当性」が厳しく問われます。
3. 想定される処分の選択肢
(1) 懲戒解雇
会社の金銭を一時的とはいえ私的に流用した事実が認められれば、懲戒解雇事由に該当し得ます。ただし 損害が発生していないこと、本人が返済していることを考えると、裁判所で無効とされるリスクは高めです。
(2) 降格・減給等の重処分
職務上の信用を失ったことを理由に、降格や役職解任は十分検討できます。
就業規則に「会社の名誉・信用を傷つけた場合」や「職務怠慢、信頼失墜行為」の懲戒事由があれば適合。
(3) 戒告・始末書の提出
軽処分としては戒告・始末書提出で済ませる選択肢もあります。
ただし、再発防止や規律の維持を考えると「役職者」である以上、これだけでは組織統制上弱い印象があります。
4. 実務的な判断ポイント
金銭の私的流用を本人が認めるか
→ 証拠(発言記録、メール、精算記録)を残しておくことが重要。
役職者としての責任の重さ
→ 出張旅費は他の社員の模範となるべき管理行為であり、信頼性が損なわれた。
過去の処分歴や行為の継続性
→ 一度きりか、繰り返し行っているかで処分の重さを変えるべき。
5. お勧めの対応案
懲戒解雇:よほど悪質で反省がない場合に限るべき(訴訟リスク大)。
降格処分+始末書提出:役職者であれば最も現実的。信頼失墜に対する責任を明確化。
戒告やけん責のみ:再発防止や社内統制に弱い。役職者であれば不十分。
6.結論としては、
「降格(役職解任)+懲戒処分(けん責または減給)+始末書提出」が実務的に妥当であり、再発防止にもつながります。
会社の信用を損なう行為である以上、単なる始末書で済ませるよりも、役職責任を明確に問うことが望ましいと考えます。
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/08/20 12:43 ID:QA-0156877
相談者より
ご回答ありがとうございます。
とても参考になりました。
弊社の就業規則上は問題なさそうです。
やはり降格+減給+始末書が妥当だと思いました。
あとは本人が認めるかどうかですが、こちらもしっかり準備をして本人との話し合いに臨みたいと思います。
投稿日:2025/08/20 13:48 ID:QA-0156883大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
対応
会社は警察では無いので、捜査をすることができず、本人が白状しない限りは先に進むのは難しいでしょう。逆に不要な支出を行っているのであれば、その証拠がある限りは懲戒含めた対応が可能になります。
証言のようなあやふやなものではなく、裁判で勝てる確定証拠、不正使用分の支払い履歴などが必要でしょう。
処罰内容については貴社懲戒規定が元になるでしょうが、金額や回数などによっても判断は異なり、正解はありません。また出張・仮払いはこれまでもあったわけですから、仮払い金額の設定は誰がどう決めたのか、清算時に不要な仮払いが判明した時点で上長はなぜ仮払いを許可したのかなど、会社の責任も問われるでしょう。
現実的な対応として、金額も些少であるなら、実態について聞き取りを行い、厳重注意程度で済むかどうか、判断してはどうでしょうか。
投稿日:2025/08/20 13:38 ID:QA-0156881
相談者より
回答ありがとうございました。
とても参考になりました。
やはり本人が認めない限り処分は難しいということですね。
現金の管理に関しては、当該社員は支社の小口現金を管理する立場におり、詳細はここでは書けませんが、これまでもあやしい動き(しかし証拠がない)があったため、それらが出来ないよう対応をしておりました。
当該社員からしたら苦肉の策?で仮払いをし始めたという感じでしょうか。
何とか状況証拠の提示や本人の発言の矛盾点をつきながら認めさせられればと思います。
投稿日:2025/08/20 14:51 ID:QA-0156888大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
どのような処分にするかは、
会社の懲戒規定を根拠として、処分する必要があります。
一般的には、懲戒解雇かつ、損害賠償請求など
かなり重い処分が想定されます。
投稿日:2025/08/20 14:17 ID:QA-0156886
相談者より
回答ありがとうございます。
とても参考になりました。
本人との話し合いの中でどのような対応が妥当なのか判断出来ればと思います。
投稿日:2025/08/20 14:53 ID:QA-0156890参考になった
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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