意欲あるかぎり働き続けられる職場へ
ベテランを戦力化する高島屋の「再雇用制度」とは
株式会社高島屋 人事部 人事政策担当次長
中川 荘一郎さん
再雇用後も考課を実施してモチベーションアップ
短時間勤務のシェアードコースも、さらにアドバンスとレギュラーに分かれるんですね。
シェアードのアドバンスコースは、週5日勤務を週4日勤務にするか、または1日6時間勤務にするか、いずれにせよフルタイムの8割相当の労働時間で働くことを選べるコースです。シェアードのレギュラーコースは、1週間で22.5時間勤務するコース。週5日で1日4.5時間働くパターンと週3日で7.5時間働くパターンがあり、これを2人分組み合わせると、およそ1人分の労働時間がカバーできる。つまりワークシェアになるということです。このコースは社会保険が非適用の働き方になりますから、会社側のメリットも大きいですし、再雇用者も年金減額や支給停止などの影響は受けません。
現行の高齢法では、労使間協定で合意すれば、企業が基準を設けて再雇用の対象者を限定することが認められています。そうした再雇用にあたっての基準は?
意欲と経験があり、通常の勤務者と同様の業務遂行が可能な健康状態であれば、基本的に誰でも再雇用を認めています。ただしどのコースで再雇用するかは、コースごとに明確な基準を設定。社員本人に現役時代から、その基準をクリアするという目標意識が生まれるようにしました。具体的には、定年前の2回の人事考課の評定(年1回)が、各コースの規定水準を上回ることが条件です。
現役時代の評定と再雇用後のコース設定をリンクさせれば、再雇用を希望する社員はいやでも“定年後”を早くから意識しますね。会社としてもメリットが大きいのでは?
60歳で“上がり”だと、その直前、つまり50代後半からのモチベーションが低下しがちになります。早すぎるのもどうかと思いますが、定年後を考えてもらうきっかけとして、弊社では40歳、50歳、55歳といった年齢の節目ごとにカウンセリングやセミナーを実施、意識啓発を行っています。65歳までを見据えて、自分がどう働いていきたいのか、あるいはどう生きていきたいのか。将来に目標感を持つことで、もうひと踏ん張りできるんじゃないでしょうか。
一方でベテランがまだ現場で働けるとなると、本人も後輩への指導に対する使命感が希薄になり、人材育成や技能伝承といった組織の課題が先送りされかねません。
そういう懸念もありますね。ベテランを再雇用するに際して期待するのは、まずはきちんと成果を発揮して業績に貢献してほしいということ。弊社ではそれに加え、後輩への指導やノウハウ・スキルの伝承といった役割を再雇用契約時にはっきりと求めています。
雇用を守るのが大前提ですが、ただ人数を抱えるだけというわけにはいきません。再雇用したベテランを積極的に活用し、“戦力化”していかないと。そのために、再雇用後のモチベーションを高く保つ方策として、09年の制度改正時からコース転換制度を導入しました。これにより、たとえば再雇用時点ではキャリアコースの基準をクリアできず短時間勤務のシェアードに回った人でも、その後の努力次第でコース転換が可能になるわけです。また再雇用後も半期に一回、考課を実施して成果を測り、賞与に反映したり、その年2回の考課結果を翌年の契約時の昇給に反映させたりして意欲を刺激しています。再雇用者にまで考課を行う企業は多くないようですが、弊社では考課結果が悪ければ再契約しないというところまで踏み込んで、労使で協定しているんです。