企業研修、採用、評価、人材開発、労務・福利厚生のナレッジコミュニティ

となりの人事部
第82回 株式会社クレディセゾン

がんとともに生きていく時代
社員が治療と仕事を両立するために人事ができることとは(後編)

株式会社クレディセゾン 取締役 営業推進事業部長 兼 戦略人事部 キャリア開発室長 武田 雅子さん
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
株式会社クレディセゾン 取締役 営業推進事業部長 兼 戦略人事部 キャリア開発室長 武田 雅子さん
36歳の時に乳がんと診断され、手術を受けた後、職場に復帰した経験の持ち主である、株式会社クレディセゾン取締役の武田雅子さん。前編では、ご自身の経験から、がんと診断された社員の心理や、それを受け入れる上司や同僚、人事の役割についてうかがいました。後編では、「お互いさま」の精神で支え合うクレディセゾンの風土がどのように作られてきたのか、また、「がんがダイバーシティを教えてくれた」という武田さんの真意について、詳しいお話をうかがいました。
プロフィール
株式会社クレディセゾン 取締役 営業推進事業部長 兼 戦略人事部 キャリア開発室長 武田 雅子さん プロフィール写真
武田 雅子さん
株式会社クレディセゾン 取締役 営業推進事業部長 兼 戦略人事部 キャリア開発室長
たけだ・まさこ●1989年クレディセゾン入社。セゾンカウンターに配属後、全国5拠点にてショップマスターを経験。2002年営業推進部業務統括課、2003年営業計画部トレーニング課と人事部人材開発課にて課長職。2008年女性初の人事部長を経て2014年より現職。また、「一般社団法人CSRプロジェクト」の理事として、講演やカウンセリングなどにも取り組んでいる。

復職した社員といかにコミュニケーションをとるのか

―― がん患者となった社員を受け入れる側は、どのようなサポート体制を築いていくべきなのでしょうか。

私が廊下を歩いているときに、社員から「話したいことがあるんです」と呼び止められることがあると、たいていは「実はがんにかかってしまって……」という話なんです。そういうときはできればオフィスを出て、カフェなどで話を聞くようにしているんですが、社内に話せる人がいるのはとてもいいことだと思います。がんにかかった人の上司から「ちょっと話を聞いてやってくれないか」と頼まれることもあります。

私自身、社外でもがんサバイバーの就労を支援する「CSRプロジェクト」の理事として相談を受けることがあるのですが、何かしら気持ちや不安を打ち明けられるような場があるといいと思います。ただ、職場でどれくらいの人に打ち明けるのかは、本人の意思や業務上の配慮が欲しいかどうかによります。必要以上に伝えたところで、無駄にかわいそうだと思われる可能性もあるので、無理に知らしめることはありません。配慮してもらうのであれば、がんと言わずに、「婦人科の病気で……」などとぼやかすこともできますし。

結局、普段から気軽になんでも相談できる関係性を築いておくことが大事なんですね。人事制度がどうこうというより、最後は職場のローカルな運用や配慮が重要です。どんなに手厚くルールを作るよりも、同僚のちょっとした気遣いや、「隣の席の〇〇さん」の気持ちひとつだったりする。制度の実績があることと日常の思いやり、その両軸がきちんと回っていることが大切です。実は人事ができることは少ないんですよ。毎日顔を合わせている人がどう配慮しているか、お互いに言いたいことが言えているかどうかが重要です。

―― 普段からの関係性が、イレギュラーな状況を克服する糧になるんですね。

はい。また、がんを治療した社員側でいうと、職場に戻った後は、あせらずにしっかりファクトを積み上げていくことが重要です。周囲に理解してもらうには時間がかかるからです。

私も職場に戻ってきたとき、周囲となんとなく距離を感じました。「あぁ、武田さん、がんから復帰したんだ……」となんとなくあわれみの目で見られているようで。「まるで私、転勤してきた人みたいだな」と思いましたね。もう一度実績を積み重ねて、一から関係性を築いていくことが必要だと感じました。「これくらいできるから、大丈夫」と言葉で示すのではなく、着実に仕事で見せていく。いくらアピールしても周りは不安でしょうから、自分でも割り切って、無理しないようにできることから始めました。すると、不思議に同僚もわかってくれるんですよね。何も言わなくても「武田さん今、頭痛いでしょう? 無理しないでくださいね」と声をかけてくれたりしました。それだけで少し気持ちが楽になるんです。みんながそれぞれ少しずつ、きちんと見てくれていて、心配りしてくれるような雰囲気が大事です。


  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事にコメントする

この記事に対するご意見・ご感想のコメントをご投稿ください。
※コメントの投稿をするにはログインが必要です。

※コメントのほか、ニックネーム、業種、所在地(都道府県まで)がサイト上に公開されます。

※投稿をしたコメントは、『日本の人事部』事務局で確認後、掲載されます。投稿後すぐには掲載されませんので予めご了承ください。

となりの人事部のバックナンバー

味の素株式会社:
味の素のグローバル化に向けた
“トランスフォーメーション”による人財マネジメント変革(後編)
味の素では、「グローバル食品企業トップ10」に入ることを目標に、事業構造改革に取り組んでいます。その中で、人事制度の変革は大きな柱の一つとなっています。人事全体...
2017/10/04掲載
味の素株式会社:
味の素のグローバル化に向けた
“トランスフォーメーション”による人財マネジメント変革(前編)
味の素は世界130以上の国や地域で事業を展開する、日本におけるグローバル企業の草分け的存在です。しかし数年前まで、人事制度の仕組みは「職能資格制度」をベースとし...
2017/09/27掲載
スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社:
顧客を感動させるサービスは従業員の「内発的動機」から生まれる 
マニュアルのないスターバックスは、なぜエンゲージメントを高められるのか(後編)
3万3千人を超えるパートナー(従業員)のうち、約8割がアルバイト。若手のスタッフも多いスターバックスではエンゲージメントを重視して、仕事や組織を自分ごと化し、顧...
2017/09/14掲載

関連する記事

株式会社クレディセゾン:
がんとともに生きていく時代 
社員が治療と仕事を両立するために人事ができることとは(前編)
国立がん研究センターの発表したデータによると、2012年時点でがん患者の約三人に一人が生産年齢(15〜64歳)で罹患(りかん)しており、働き盛り世代でがんにかか...
2017/08/10掲載となりの人事部
がん患者等の就労支援
ガイドラインと企業対応
65歳まで働くことが一般的になっている現在、企業は貴重な戦力を維持・確保するためにも、がんをはじめとする持病を持つ従業員への対応を進める重要性が増している。厚生...
2016/11/22掲載人事・労務関連コラム
株式会社ローソン:
男性が変われば企業風土も変わる!
ダイバーシティ先進企業、ローソンが行う「男性の育児休職取得」促進のための取組みとは(後編)
男性の育児休職の取得促進を、女性活躍推進の一環として位置づけるローソン。2014年度に新設した「短期間育児休職制度」の普及・啓蒙を目的に各種施策を展開し、取得率...
2016/10/31掲載となりの人事部
株式会社ローソン:
男性が変われば企業風土も変わる!
ダイバーシティ先進企業、ローソンが行う「男性の育児休職取得」促進のための取組みとは(前編)
女性や外国人など多様な人材の活用を図るために、ダイバーシティ(多様性)推進に積極的かつ継続的に取り組んでいるローソン。小売業として初めて、女性活躍推進に優れた上...
2016/10/24掲載となりの人事部
共働き時代における企業の人事施策アンケート
女性活躍推進法が施行され、企業ではダイバーシティの推進や、両立支援策などの環境整備が進みつつあるが、いまだに女性は出産・育児等で離職する傾向が見られる。育児支援...
2016/10/17掲載人事・労務実態調査
【用語解説 人事辞典】
がん対策基本法
介護離職
受けさせたいスキルアップ系講座特集

会員として登録すると、多くの便利なサービスを利用することができます。

<アンケートのお願い>採用マーケットの構造変化に関する意識調査

記事アクセスランキング

注目コンテンツ


「健康経営特集」
従業員の健康づくりを通じて生産性向上を目指す!

健康経営の推進に役立つ多彩なプログラムをご紹介。資料請求のお申込みや資料のダウンロードも可能です。



『日本の人事部』受けさせたいスキルアップ系講座特集

コミュニケーションや英語力、個人の生産性やPCスキルなど、ビジネス上必須となる多彩なプログラムをご紹介


【人事の日制定記念企画】
オピニオンリーダーからのメッセージ

HR領域のオピニオンリーダーの皆さまから全国の人事部門に向けてメッセージを頂戴しました。


人事メディア情報

人事メディア情報

人事・労務関連の代表的なメディアをご紹介いたします。


大介護時代、到来!日本の“働き方”を変えるためにICTはここまで進化した

大介護時代、到来!日本の“働き方”を変えるためにICTはここまで進化した

いわゆる団塊世代が75歳以上の後期高齢者になると、日本は「大介護時代」...


~誰しもが経験するつまずきを乗り越える方法とは?~<br />
新人がイキイキと働くために、人事ができること

~誰しもが経験するつまずきを乗り越える方法とは?~
新人がイキイキと働くために、人事ができること

「3年3割」と言われる若年層の早期離職問題。手間もお金もかけて採用した...