新卒の時の景気で人生が決まる? リベンジ転職人手不足感の強い新卒採用の影響か 再チャレンジを考える氷河期世代も
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転職にはリスクが必ずついてくる
「確かに今、中堅どころの即戦力を求めている企業は多いですよ」
私は現在の求人の状況などを、ざっと説明することにした。
「ただ、人数が少ないから他の世代とのバランスをとるために中途採用を行う、という事例はほとんどないと思います。20代中盤の第二新卒くらいなら、そういう採用もあるかもしれませんが、Cさんのような中堅、30代になると第一に求められるのは経験とスキル。つまり、一般的なキャリア採用と厳選傾向は、ほとんど変わらないんですよ」
Cさんはがっかりしたというよりは、ある程度納得した表情で聴いている。新卒で就職して10年以上。企業の現場でどういう人材が求められているかは、自分の経験からもよくわかっているのだろう。
職務経歴書などを見ると、Cさんは今の会社でも中堅として活躍しているようだし、年収もこの世代としては悪くない。積極的に転職したい理由が、氷河期の再チャレンジということ以外にあるのだろうか? 私は、そうCさんに聞いててみた。
「いえ、どうしてもすぐに転職したいということではないんです。卒業年度が違えば、新卒で大企業や有名企業に就職していた可能性があったかもしれないと考えると、今からでもどうかな……と思って調べてみたくなったんです。こういう転職動機じゃダメですかね?」
と、逆にCさんから質問が返ってきた。
「ダメということはありませんが、転職には必ずリスクもあることを覚えておいていただきたいんです」
私はCさんの気持ちを否定しないように言葉を選びながら話した。企業文化や風土はそれぞれに違いがあるので、希望の会社に転職してカルチャーショックを受ける人も少なくない。今の仕事や年収をどうしても改善したいということでなければ、焦らないことが大事だ。大企業は社員同士の競争も厳しいし、仕事以外でも資格取得や語学の勉強なども大変である。それでも将来、窓際に追いやられる人もいる。そのあたりのバランスも考える必要があるのではないか、と。
Cさんは黙って聞いていた。確かに、就職する年度によって人生が大きく変わってしまうのは理不尽だ。しかし、学生時代に憧れていた企業に今あらためて入社して幸せになれるかどうかは誰にもわからない。転職相談では時にはブレーキをかけて冷静になってもらうことも必要なのだ。
「じっくりいきましょう」「はい、じっくりいった方がいいですね」
そう答えてCさんもにっこり笑ってくれたのだった。
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