企業研修、採用、評価、人材開発、労務・福利厚生のナレッジコミュニティ

キーパーソンが語る“人と組織”

これから日本の「働き方」「雇用」はどのように変化し、
人事はどう対応していけばいいのか(前編)[3/3ページ]

2015/8/3

安藤 至大さん(日本大学総合科学研究所 准教授)

働き手を増やし、一人あたりの生産性を高める方法とは

―― 安藤先生は、今後の人口減少社会において「働き手の数を増やすこと」「一人あたりの生産性を高めること」が重要とのお考えですが、実現するためにはどんな対応が必要でしょうか。

まず挙げられるのは、これまで働きたくても働くことが難しかった女性の活用です。例えば、保育所に子どもを預けることができない、親を介護しなくてはならないといった理由で、これまで培ってきたキャリアやスキルを途中で中断せざるを得なかった人たちです。このままでは社会的にも大きな損失ですから、女性が働きやすい環境を整備することは必要不可欠だと思います。

そして、高齢者の活用です。昔と違って今の60代、70代の人たちはとても元気です。ただし、個人差がありますから、全員が同じように働くのは難しい。また、高齢者を雇い続けることを企業に押し付けるのも原理的にはおかしいと思います。ただし「高年齢者雇用安定法」の改正で、65歳までの継続雇用制度の義務化が段階的に導入されていますが、何がどういう目的で企業に求められているのかを理解しなくてはいけません。考えるべきことは、これまで長期間雇い続けてきた結果、その労働者にはどういう仕事が向いていて、どんな仕事が体力的・能力的に難しいのかを一番よく分かっているのは、企業だということ。まずは、他に担当できる仕事はないかをこれまでの職場で探す方がいいということです。

また、これから年金財政は大変苦しくなっていきます。年金をもらうよりも、働いて自分の生活は自分でまかなうことが、重要になるでしょう。高齢者の社会的な「適材適所」をどのように実現するのか、そのためにどういう仕組みが必要なのか、そのための負担を誰が担うのか。これらの問題を冷静に議論していかなくてはならないと思います。

―― 働き手の数を増やすためには、外国人労働者の活用も考えられますね。

安藤至大さん Photo

外国人労働者は、言語や生活習慣の違いにより移住した地域で暮らすことに困難を覚える人が多く、子どもの教育問題などでも苦労するようです。また、現時点では日本は外国の単純労働者を受け入れていません。受け入れるのは、高い技能を持った人に限られています。しかし実際には、外国人研修生や技能実習生として単純労働者の受け入れが行われています。このような形での受け入れは、対象となる働き手が労働法による保護の対象外になるなど、問題が少なくありません。外国人労働者や移民の問題は、まだまだ結論が見えません。引き続きメリット・デメリットの両面を見て、検討を続ける必要があるでしょう。

―― 一人あたりの生産性を高めるためには、何が必要ですか。

教育が重要です。皆が技術の進歩にキャッチアップし、いろいろなツールを活用できるようになることはとても重要です。そのためにも、世の中で要請されているさまざまなことを学ぶ必要があります。かつては技術進歩のスピードがゆっくりでしたから、同じような仕事を長年続けられました。しかし、現在は技術進歩のスピードが大変早くなっています。その結果、今までやってきた仕事がなくなってしまい、別の仕事をやらなくてはならなくなるという事態も起きています。新しい仕事をすることが当たり前の社会になっていると考えると、新たに学ぶことは必要不可欠です。学び直して新たな仕事に就くためには、今後、人材ビジネスや大学の果たす役割が大きくなっていくと思います。

また、何が失われる仕事であり、新たにどのような仕事が生まれてくるのか。そこでは、新たにどのような技術・技能を身に付けるとこれまでの働き方と補完性があり、生産性が高まっていくのか。環境の変化と共に、仕事と働き方の変化の方向性を知っていなければいけないと思います。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックが開催される頃には、自動運転の自動車が実用化されるのではないかと、言われています。実際に、海外では高速道路での自動運転で、全く問題なく走れたという事例もあります。むしろ事故が起こりやすいのは、人間が運転している時だそうです。そうすると、これからは車の運転免許を取得するのが非常に厳しくなるかも知れません。また日本では、1970年における交通事故の死亡者は1万7000人弱いました。しかし、2014年には約4100人にまで減少しています。なぜ、このように減ったのかというと、自動車の性能が進歩したことに加え、ガードレールの整備や道路の舗装、街中の速度制限など、技術の進歩や法律の整備といったさまざまな要因で、道路交通をめぐる状況が良くなったからです。

このようなことが、今後はどんどん起きます。これから世の中がどのように変わっていくのか、しっかりと考えなくてはいけません。50年先のことを考えるのは難しいでしょうが、少なくとも数年先に何が必要になるのかを考える必要があります。労働者だけでなく、経営者や人事担当者にとっても大変重要なことだと思います。


  • このエントリーをはてなブックマークに追加

キーパーソンが語る“人と組織”のバックナンバー

黒田祥子さん:
生産性向上につながる鍵は「週単位」「日単位」の余暇時間
休み方への意識を変えるために人事が取るべき施策とは
2019年は、多くの企業にとって「休み方」を考え直す契機となるのではないでしょうか。平成から令和への改元に伴い、ゴールデンウィークが過去に例のない大型連休となっ...
2019/08/26掲載
川島 薫さん:
社会人として働くことに健常者も障がい者もない
“当たり前”を取り入れた、これからの障がい者雇用とは
楽天グループの特例子会社である、楽天ソシオビジネス株式会社。同社は、設立時より積極的に障がい者採用を行い、高い雇用率と定着率を実現しています。また、特例子会社で...
2019/07/26掲載
稲水伸行さん:
カギは「トップと現場の共創」と「仕掛けづくり」にあり
クリエイティビティが高まるオフィス空間づくりとは
近年、快適なオフィス空間への関心が高まっていますが、ワークスペースとクリエイティビティにはどのような関係性があるのでしょうか。日本の職場環境に詳しい東京大学大学...
2019/05/29掲載

関連する記事

外国人労働者が関係する労組トラブル対応最前線
相次ぐ外国人技能実習生の失踪などから、長時間労働や過重労働をめぐって紛争につながるケースが多発しています。外国人労働者が関係する労使トラブルの最新事例と、具体的...
2019/09/05掲載人事・労務関連コラム
受入拡大迫る!外国人雇用よくあるトラブルと対応
減少する日本人労働者を補うためにも不可避となった外国人採用。 今回は、外国人を雇用するにあたって押さえておきたい注意点等について、トラブル事例をもとにお伝えいた...
2019/05/20掲載人事・労務関連コラム
「働き方改革」推進に向けての実務(2)長時間労働の是正
2016年6月に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」に示された、働き方改革における「長時間労働是正」とは?
2017/03/31掲載よくわかる講座
「働き方改革」推進に向けての実務(1)同一労働・同一賃金など非正規雇用の処遇改善
ここでは「働き方改革」の代表的な施策についてその目的・課題と実務上のポイントを整理する。
2017/03/31掲載よくわかる講座
ワーク・ライフ・バランスを実現するために求められる「働き方改革」
ワーク・ライフ・バランスの実現に不可欠な「働き方改革」で日本はどう変わる?これまでの雇用政策を刷新する政府の取り組みについて。
2017/03/31掲載よくわかる講座
新入社員研修の種類や企業事例、「新入社員研修」サービス

会員として登録すると、多くの便利なサービスを利用することができます。

働くパパママ育休取得応援奨励金 求める人材を確実に採用する視点

注目コンテンツ


「2020年度 新入社員育成」ソリューション特集

新入社員研修の種類やカリキュラム例、企業事例、おススメの「新入社員研修」サービスをご紹介します。


【人事の日制定記念企画】
オピニオンリーダーからのメッセージ

HR領域のオピニオンリーダーの皆さまから全国の人事部門に向けてメッセージを頂戴しました。


人事メディア情報

人事メディア情報

人事・労務関連の代表的なメディアをご紹介いたします。


SAPジャパン「人事業務効率化セミナー」レポート<br />
三井造船グループのシェアードサービスに学ぶ、業務効率化の真実

SAPジャパン「人事業務効率化セミナー」レポート
三井造船グループのシェアードサービスに学ぶ、業務効率化の真実

昨今の激変する経済環境に企業が対応していくためには、人事業務の「効率化...