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令和6年度 働き方・休み方改革推進に係る広報事業 働き方・休み方改革シンポジウム

注目の記事人事制度[ PR ]掲載日:2025/01/08

近年では、働き方・休み方改革に取り組む企業も多くなり、時間外労働の抑制や年次有給休暇の取得率向上だけでなく、「働く場所」や「働く時間」の柔軟化、「選択的週休3日制」などに取り組む企業もみられる。そうした中で、管理職自身の働き方改革に関する課題や、柔軟な働き方を運用するうえでのマネジメント上の課題に直面している企業も増えてきているのではないか。

2024年10月29日に開催された「働き方・休み方改革シンポジウム」では、学識経験者の基調講演、企業事例の紹介などを通じて、管理職の働き方改革や、柔軟な働き方とその効果について議論が交わされた。当日の様子を、レポートでお伝えする。

「令和6年度 働き方・休み方改革シンポジウム」(2024年10月29日開催)アーカイブ動画(厚生労働省「働き方・休み方改善ポータルサイト」内『シンポジウム・セミナー情報』に掲載)

開会挨拶

開会にあたり、厚生労働省大臣官房参事官(雇用環境政策担当)立石祐子氏が挨拶。働き方改革の現状や本シンポジウムの内容、意義を語った。

〈基調講演〉
国際比較からみた日本の大卒ホワイトカラーの働き方と生活の在り方:管理職を対象として

東京大学 名誉教授 佐藤 博樹 氏

冒頭の基調講演では、管理職も含めた働き方改革に取り組む必要性が語られた。

「現場の担当職の働き方改革は重要ですが、同時に管理職の働き方改革も進める必要があります。ここで言う管理職とは、担当職の一次考課者、いわゆる課長です。課長は企業における人材マネジメントの要として、課のミッションを達成する役割を担っており、自らが立案する業務計画に基づいて、部下に仕事を割り当てます。ただし、昔とは違い、今の課長には、1on1の実施に代表されるように、一人ひとりのキャリアプランや、業務以外の面での課題にも配慮した部下マネジメントが求められています。加えて、担当職の働き方改革を進める中で、担当職の仕事をカバーするなど、プレイング業務の負担も大きくなっています」

厚生労働省委託調査の結果では、課長相当職の月の平均残業時間は36.8時間で、40時間を超える人も全体の約3割を占める。
また、日本では男性の管理職比率が圧倒的に高いが、その要因の1つとして、長時間労働を前提とした働き方がある。さらに、目の前の仕事に追われて、先のことを考えたり自己投資をしたりする時間が取れないなど、管理職が担うべき役割を遂行できずにいる状況が見える、と佐藤氏は指摘する。

「管理職の多くは、部下の将来を見据えた指導・育成やモチベーション管理などが重要だと理解しています。しかし、実際に取り組めているかというと、かなりバラつきがあります。その要因として明らかなのは、プレイング業務の労働時間割合が大きいことです。それが増えれば増えるほど、課長としての役割を担えなくなってしまっています」

イベント風景の写真

なぜ、そうしたことが起こるのか。佐藤氏は管理職としての役割を阻害する要因を2つ提示した。1つは、担当職としての仕事もできるため、部下を育成するよりも自分で担当した方が早いと考えるなど、部下を育成して、仕事を任せることを重視しないこと。そしてもう1つは、管理職として担う役割や仕事が増えていることだ。具体的には、多様な部下のマネジメントや育成、働き方改革の推進、コンプライアンスの強化などが挙げられる。

「だからこそ、働き方改革では、管理職の業務改革を推進し、管理職に求められている役割を担えるだけの時間を確保することが重要です。やり方はいろいろあります。例えば、管理職として手掛けている業務を全て書き出し、自身でやるべき仕事と部下に任せるべき仕事に分けてみる。すぐには任せられないかもしれませんが、部下の能力開発とセットで部下に仕事を下ろすことにより、職場全体としての能力も高まります」

もちろん、会社としての支援も欠かせない。事実、「不要な管理業務の見直し」「経営トップ主導による全社的な組織・業務の見直し」「コンプライアンス業務専任者の設置」などを要望する管理職は多い。こうした見直しを積極的に行うべきだというのが、佐藤氏の考えだ。

「本来自分がやるべき仕事がやれるようになると、管理職のエンゲージメントは確実に高まります。ワーク・ライフ・バランスが実現されやすくなるため、女性の管理職登用にもプラスになるでしょう。今は男女問わず、「管理職になりたくない」といった声も聞かれます。管理職の働き方改革では、管理職業務の棚卸しとプレイング業務の委譲を、部下育成と同時に行うことが重要です。ぜひ、管理職を含めた働き方改革に取り組んでいただきたいと思います」

〈事例発表&パネルディスカッション〉
セッション(1)管理職の働き方改革

1. テーマ解説

早稲田大学 商学学術院 教授 小倉 一哉 氏

セッション(1)の開始にあたり、小倉氏がテーマについて解説した。

「役職別に見ると、課長相当職の労働時間が最も長い。これを放っておくと、さまざまな問題が生じます。法律上では、管理監督者は労働時間、休憩、休日に関する規定の適用除外になっており、それゆえに労働時間が長くなりがちです。「プレイングマネージャー」は日本独特の概念だと思いますが、課長相当職のほとんどはそれに該当するのではないでしょうか。全体の業務量が減らなければ、管理職が部下の仕事を巻き取らざるを得ない状況も出てきますが、管理監督者であっても、企業は労働時間の把握や年次有給休暇の管理をしなければなりません。また、人材マネジメント上の工夫の観点からも、2社の事例をぜひ参考にしてください」

2. 事例発表-1:丸井グループの取り組み 管理職の働き方改革

株式会社丸井グループ 人事部 ワーキングインクルージョン推進担当 課長 後藤 久美子 氏

事例発表のトップバッターとして登壇したのは、丸井グループの後藤氏だ。同社は小売・フィンテック一体のビジネスモデルを展開しており、現在では約4,300名の従業員が在籍している。後藤氏は、同社が企業文化の変革に向けて促進している3つの施策を説明した。

「1つ目は、働き方改革です。10年前から残業の削減に取り組んでおり、1人当たりの月間残業時間は大幅に減少しました。従業員の仕事観も『時間の提供』から『価値の創出』に大きく転換しています。2つ目は、多様性の推進です。男女・年代・個人と言う3つの多様性を掲げ、組織改革を推進しています。3つ目は、手挙げの文化です。当社では、ビジネススクールへの参加や昇進試験などを全て手挙げ制にするなど、社員一人ひとりの自主性を促し、自律的な組織をつくることで、イノベーションの創出を促しています」

同社が管理職の働き方改革に取り組んだ背景には、2023年に実施した社内アンケートを通じて見えた、働き方に対する価値観の変化があった。コロナをきっかけに働き方に対する価値観が変わったとする社員が約7割を占め、自律的な働き方を求めるニーズが高まっていた。また、管理職への昇進意欲の低下も顕著で、その理由としては、「プライベートとの両立が難しい」「仕事量が多い」が上位を占めていた。

「こうした状況を受け、当社では『コロナ以降の働き方検討イニシアティブ』というプロジェクトを立ち上げました。そこで最初に行ったのが管理職の働き方の実態を把握することです。その結果、ハードな働き方を何とかしたいと思っていても、なかなか行動変容につながっていないことが判明しました。現状の働き方が理想ではなくても、意思を持って管理職になることを選択したので仕方がない、従業員の多くが管理職とはそういうものだと受け入れていて、変えようという意識が生まれていなかったのです。それでも、若手の管理職を中心に、『今の働き方に違和感を覚える』という声がありました」

イベント風景の写真

そこで、プロジェクトでは、意識変革に向けて、将来世代を基準に方向性を定めた。若手や新人管理職の働き方に対する意識を、ベテランの管理職に波及させたのである。具体的な活動としては、全管理職を集めて直面している課題感を共有し、管理職の働き方を変える必要性を理解し合う場を設けた。

「今後は、管理職の働き方を変えていくガイドラインをつくり、全社的に発信していきます。グループ全体での働き方改革を実現し、意思決定層の多様化を推進することが、私たちが取り組むべきことだと考えています」

2. 事例発表-2:管理職の役割の明確化 仕組みづくりとDXによるマネジメント

株式会社ペンシル 代表取締役社長CEO 倉橋 美佳 氏

次に、ペンシルの倉橋氏が登壇した。同社は、大手企業をクライアントとしたデジタル戦略のコンサルティングを提供しており、社員数は約140名だ。倉橋氏は、社長に就任してから着手した、組織改革の内容を語った。

「社長に就任するにあたってやりたかったのが、人が交代しても、会社を継続できる仕組みを作ることでした。まず、会社の現状を知るために従業員満足度調査を行ったところ、エンゲージメントスコアは偏差値で40.9。大きなショックを受けました」

そこで同社が掲げた組織改革の柱は、「理念浸透を徹底する」「行動規範を改める」「評価と紐付ける」「働きがいを創出する」の4つである。最初に、理念を明確に言語化して共有することが必要と考えた。取組で最もインパクトがあったのが、WEB版社内報の「ペン知るん。」だ。理念浸透を目的としたメッセージの配信にとどまらず、経営者の思いを発信したり、社員からのコメントへのフィードバックを行ったりしている。また、DX経営の観点から、閲覧率による社員の関心が高い記事の分析や、閲覧率とチーム別のモチベーションスコアの相関の分析を行っている。

「こうした取組を通じて、マネジメントの重要性に気づくことができました。当社でも、マネジメントは重視しているものの、業務は丁寧に現場で教わるのに対し、マネジメントを習う機会はありませんでした。マネジメントスキルをどう理解して、どう実践するかを考える必要があったのです。そこで、管理職のスキルセットの定義付けと整備をしました。行った取組は3つあります。役割の明確化、仕組みづくり、管理職業務のDXです。役割を定義して明文化するとともに、管理人数の上限を5名とし、さらに、6か月間管理職の業務にチャレンジできるポジションを設けました」

その具体的な内容は、管理人数の上限設定、マネージャー研修や管理職会議の開催、社内向けゲームの開発、部署合宿、ミライ航路MAP提案など、多岐に及んでいる。

イベント風景の写真

「取組の結果、いくつかの明らかな改善が見られました。1つ目は、管理職の育児休業取得が当たり前になったこと。2つ目は、残業時間や年次有給休暇取得率に関して、一般社員と管理職での差異がほとんどなくなったこと。3つ目は、全社的な働き方改革が進み、離職率が半分以下になったことです。エンゲージメントサーベイのスコアも、現在は67までアップしました。管理職のスコアアップが大きく寄与した結果であり、管理職が会社を動かしていると改めて痛感しています。今後も、管理職が高付加価値な時間をつくれるように、働き方改革に取り組んでいきたいと思います」

3. パネルディスカッション

  • 早稲田大学 商学学術院 教授 小倉 一哉 氏
  • 株式会社丸井グループ 人事部 ワーキングインクルージョン推進担当 課長 後藤 久美子 氏
  • 株式会社ペンシル 代表取締役社長CEO 倉橋 美佳 氏
イベント風景の写真

続けて、三者によるパネルディスカッションが行われた。まず、小倉氏がパネリストの事例発表に対する感想を述べた。

小倉:2社とも、問題意識の共有とデータによる現状分析を前提に取り組まれています。私もそこから始めることが大切だと思います。丸井グループさんの働き方改革による直近の成果を教えていただけますか。

後藤:若手管理職の行動スタイルが、ベテラン管理職や一般社員にも広がりつつあり、管理職の時間外労働やテレワーク率が少しずつ変化しています。

小倉:ペンシルさんではたくさんの取組をされていますが、それだけで多大な時間を要してしまうのではないですか。

倉橋:確かに、管理職は大変です。ただ、時間を管理することよりも集中して思考する時間をいかに作るかがポイントになってきます。

小倉:ベテラン管理職はDXにキャッチアップできていますか。

倉橋:ギャップは特にありません。むしろ、若手の中にも今までのやり方を変えることに抵抗がある人はいるので、それほど差はないように感じます。

小倉:視聴者から丸井グループの後藤さんに質問です。働き方ガイドラインにはどのような内容が盛り込まれているのですか。

後藤:まだ検討中の段階ですが、働き方改革の必要性やガイドラインを作成する意義は盛り込みたいと考えています。それらに加えて、行動を変えるための取組事例を紹介する予定です。

小倉:ペンシルの倉橋さんにも質問が来ています。管理職は自分を含めて最大5人を管理するとのことですが、その上にさらに上位の管理職がいるのでしょうか。

倉橋:上位の管理職は下位の5人の管理職を見て、下位の管理職は現場の5人を見るという体制です。評価は、上位と下位の管理職が一緒に行っています。

小倉:ペンシルさんでは、6か月の管理職業務のお試し期間を設けていますが、その仕組みについて教えてください。

倉橋:「Social Booster」というポジションですが、6か月間管理職の業務にチャレンジして、期間終了後に、本人の継続意思を確認するとともに、会社側も適性を判断します。チャレンジをやめることも、再度チャレンジすることもできます。一定期間ブランクがあっても問題ありません。

小倉:丸井グループさんの管理職共有会では、どのようなワークを行っているのですか。

後藤:アンケートや数値の分析から見えてきた課題を伝えて、意見交換をしています。また、グループワークの際にはプロジェクトメンバーが入り、対話を促しています。

最後に、それぞれのパネリストから視聴者にメッセージが送られた。

後藤:管理職の働き方改革には、良いことしかありません。女性や若手が管理職を目指すようになると、意思決定層が多様化して、おのずとイノベーションが生まれやすい組織になります。一歩ずつでもいいので、進めていくと良い結果につながるはずです。

倉橋:データの収集にとどまらず、分析をすることが欠かせません。また、それ以上に大事なのは、分析結果に基づいた改善策を実行することです。特に中小企業なら、スタッフと話し合いながら、課題解決に取り組んでいけると思います。

〈事例発表&パネルディスカッション〉
セッション(2)柔軟な働き方とその効果

1. テーマ解説

法政大学 キャリアデザイン学部 教授 坂爪 洋美 氏

シンポジウムはセッション(2)へと進んだ。開始にあたり、坂爪氏がテーマについて解説した。

「柔軟な働き方は、働き方の選択肢が増える等、働く側にとっての効果は比較的見えやすいです。一方で、企業側が得られる効果は何でしょうか。業績が上がるか、生産性が向上するのかというと、簡単に「そうだ」と言うのは難しく、本当にそれで従業員が働くのか、人繰りがうまくいくだろうかなど、疑問がたくさん出てくると思います。
しかし、今後の日本の労働力人口の状況を考えると、柔軟な働き方の導入を避けて通れないと感じている企業は多いでしょう。柔軟な働き方にはどういった効果があるのか、また効果をあげるためにはどうしたらいいのかを考えていきたいと思います。「どのような取組をどのような目的で導入するか」を考えるための参考として、2社の事例を紹介します」

2. 事例発表-1:「時間」と「場所」にとらわれない柔軟な働き方を通じた、組織としてのパフォーマンスの最大化

アフラック生命保険株式会社 人財戦略第一部人財戦略企画第一課 課長 瀬古 正徳 氏

まず、アフラックの瀬古氏が事例を発表した。同社は1974年に日本で初めてがん保険を発売した生命保険会社で、今年日本における創業50周年を迎えた。

「当社が『時間』と『場所』にとらわれない働き方を推進してきた目的は、超VUCA(注:Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つの単語の頭文字をとった言葉で、社会やビジネスの未来予測が難しい状況)と呼ばれる時代においてお客さまに価値を提供していくために、イノベーションを創出できる企業文化の醸成が必要だと考えたからです。その実現に向けて、ダイバーシティ&インクルージョンと、アフラック流の働き方改革である『アフラック Work SMART』に取り組んでいます」

前者に関しては、2014年に6つの重要領域を定めて統合的に推進。また、後者についても2015年に、社員のワークライフ・マネジメントを支援し、組織のパフォーマンスを最大化するという考え方のもと、仕事の進め方を抜本的に見直した。

「『アフラック Work SMART』の取組を進めるにあたり、重要なポイントが5つありました。トップのコミットメント、ツールの環境整備、制度面の環境整備、労務・健康管理、社員へのプロモーションです」

イベント風景の写真

このうち、瀬古氏はまずツールの一例としてテレワークの推進について取り上げた。同社は2016年以降、テレワークを本格導入。ポリシーとして掲げたのは、テレワークが「できない」を「できる」に変え、「場所」にとらわれない働き方を実践することだ。そのために行ったのは、PC・スマホ・タブレット端末の配布やペーパーレスの推進、在宅コールセンターの開設、在宅勤務手当の創設など、「できない」理由を排除することで「できる」人を増やし、裾野を広げていったという。

制度面では、フレックスタイム制を導入している。全社員がコアタイムなし、中抜け可能なスーパーフレックスであることが特徴だ。これとテレワークを組み合わせることで、働き方の多様性が大きく広がったと瀬古氏は語る。

並行して、労務・健康管理体制の整備も行っている。具体的には、労働時間の管理や、テレワーク時における労務・情報管理を適切に行うため、ガイドラインを策定したり、全管理職を対象とするテレワークマネジメント研修を実施したりしている。

「取組の効果としては、社員のエンゲージメントサーベイで肯定的な回答が8割を超えました。また、社員からも『効率的かつ効果的に仕事ができている』『プライベートを両立しやすい環境で働けている』などの声が寄せられています。総じて、柔軟性の高い働き方が社員に受け入れられ、パフォーマンスの向上につながっていると判断しています」

2. 事例発表-2:選択的週休3日制等の柔軟な働き方による「働きやすさ」の追求 ~富山の老舗和菓子屋による働き方改革~

株式会社中尾清月堂 専務取締役兼工場長 伏脇 一郎 氏

次に事例を発表したのは、中尾清月堂の伏脇氏だ。同社は、富山県高岡市で和菓子の製造・流通・販売を行っている。

「当社は製造本部で働き方改革に取り組みました。取組は大きく3つあります。1つ目は、職人気質から工場生産へ。2つ目は、選択的週休3日制の導入。3つ目は、多様な人材が活躍できる職場づくりを当たり前にすることです」

同社は老舗の和菓子屋であり、製造現場では職人気質が定着していた。感性による製造手法を標準化して属人化から脱却するために、現場スタッフの理解を得て改革を進める際の苦労が多かったという。

イベント風景の写真

「現場のスタッフからは『なぜ改善しないといけないのか』という声がありました。それでも改革を推進するためには、スタッフの声を受け止める余裕を持つことと、目標を持ち続けることのバランスが重要でした」

2つ目に掲げた選択的週休3日制とは、週当たりの労働時間を減らす制度だ。その分、給与は下がることになる。2017年に導入した。その背景には、ライフステージの変化によって、女性社員のキャリア継続が難しくなってきたことがあった。

「柔軟な働き方を実践した効果は、確実にもたらされています。多様な人材が活躍できる職場づくりを実現でき、安定した雇用環境も確保されています。制度を実際に利用したスタッフからも、ポジティブな声が寄せられています」

スタッフ一人ひとりが安心感を持って、柔軟に働き続けることを可能にする職場づくりは、「心の生産性向上」にもつながっている。しかしその一方で、新たな課題も見えてきたという。例えば、柔軟な働き方が風土として根付いた際には、チームとしてのコミュニケーションをどう行っていくかが課題となった。また、選択的週休3日制を選んだ際には業務の工夫も必要となる。それらの解決策として、2023年からは現場に掲示板を設置。「共創」の価値向上を図っている。

「現在、当社は製造本部に限らず、働き方改革を会社全体に浸透させていくことを目指しています。同時に、既に着手した製造本部では、多様な働き方を維持しながら、生産計画を安定的に運用しなければなりません。これからも、従業員一人ひとりの幸せの価値に丁寧に寄り添い、当社ならではの働き方改革を進めていきたいと思っています」

3. パネルディスカッション

  • 法政大学 キャリアデザイン学部 教授 坂爪 洋美 氏
  • アフラック生命保険株式会社 人財戦略第一部人財戦略企画第一課 課長 瀬古 正徳 氏
  • 株式会社中尾清月堂 専務取締役兼工場長 伏脇 一郎 氏
イベント風景の写真

続いて、三者によるパネルディスカッションが行われた。

坂爪:視聴者から、アフラックの瀬古さんに質問が届いています。在宅勤務の場合に管理者はどのようにコミュニケーションを取っているのですか。また、スーパーフレックスだとかえって長時間労働が増えませんか。

瀬古:チャットやオンライン会議などのツールを活用することで、ある程度は解決できると思っています。長時間労働に関しては、管理職がメンバーの時間外労働の状況を手元で確認するためのダッシュボードを作って、把握しやすくしています。

坂爪:中尾清月堂の伏脇さんには、週休3日から週休2日に戻す際のタイミングについて質問がきています。

伏脇:個別相談を随時行い、希望を聞いています。ただ、チームで動いている職場なので、働く環境が変わることをスタッフに伝えて、納得してもらう期間を必ず設けています。

坂爪:瀬古さんに質問です。勤務日のうち、どの程度の割合を在宅勤務にしているのでしょうか。

瀬古:現在の全社平均は、1か月当たり70%が出社、30%が在宅勤務となっています。部署によっても差異があるので、平均した数値です。

最後に、それぞれのパネリストから視聴者にメッセージが送られた。

瀬古:まずは、何のために新たな制度を導入するのかを社内で十分に議論するとよいのではないでしょうか。トライ&エラーでやっていくことが大切です。当社でも、一筋縄ではいかないところは、改善しながらやってきました。取組を続けることが重要です。

伏脇:当社は、お菓子という嗜好品をお客さまに提供しています。そのため、私たち自身が幸せでないと、お客さまに幸せを提供できないと考えています。これからも良い職場を作るための働き方改革に取り組んでいきます。

〈総括〉
働き方改革を推進する3つのポイントとは

東京大学 名誉教授 佐藤 博樹 氏

最後に、佐藤氏が本シンポジウムを総括した。ポイントは3点で、1点目は、何のための働き方改革かを明確にすることだ。

「法律の遵守は重要ですが、働き方改革の目的はそれだけではありません。大事なのは、多様な人材が活躍できるような働き方に変えることです。固定的なフルタイム勤務、残業前提の働き方を改めなければなりません」

2点目は、「できない」を「できる」に変えることだ。

「働き方を変えるにあたってハードルになるのは、長時間労働が評価されてきた管理職やシニア世代の考え方が、その文化から抜け出せていないことです。『できない』を『できる』に変えるには、管理職が、自分が評価された働き方をベースに部下を評価してはいけないのです。また、働き方改革は若い世代のためにやることだと思われがちですが、中高年やシニアも、親の介護と仕事の両立の問題に直面する可能が高いのです。働き方改革は自分たちのためにも必要なことだと考えて取り組んでもらいたいと思います」

3点目は、仕事以外にも大事なことを見つけることだという。それが、働き方を変えるモチベーションになるという、佐藤氏のメッセージで本シンポジウムは締めくくられた。

※上記は本シンポジウムの内容の抜粋です。本シンポジウムの全容は、アーカイブ動画で視聴していただけます。ぜひ下記のリンクからアクセスしてご覧ください。また、働き方・休み方の見直しや改善に役立つ情報、企業事例が満載の「働き方・休み方改善ポータルサイト」も、ぜひご覧ください。

厚生労働省
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