ITエンジニアの4割が「長時間労働」改善を実感!
派遣社員はもっと働きたいという声も
ディップ株式会社
【調査概要】
調査主体:ディップ株式会社
調査手法:インターネット調査(インテージモニター利用)
調査実施時期:2020年11月5日(木)~2020年11月11日(水)
対象者条件:47都道府県内在住の18~69歳の男女のIT・エンジニア就業者
有効回収数:1,108サンプル
本レポートについて
働き方改革の課題のひとつとして、長時間労働の是正が挙げられています。近年、少しずつではあるものの実労働時間、所定外労働時間共に改善されています。1ヵ月の全産業平均実労働時間は5年間で5.7時間減の138.8時間※、所定外労働時間は同0.4時間減の10.5時間※です。
ITエンジニアが含まれる情報通信業は、実労働時間は5年間で7.8時間減の155.0時間※、所定外労働時間は同2.3時間減の15.2時間※と改善してきているものの、全産業平均に比べて高い水準です。
厚生労働省ではIT業界の働き方改革サポートの取り組みを始めており、また、2019年からは働き方改革関連法が順次施行され、各社で取り組みが進んでいることから、さらなる改善が期待されます。
本レポートでは、「ITエンジニアの働き方改革の実態」を明らかにすることで、現在のITエンジニアの就業状況を広く認知させると同時に、「ITエンジニアの不満」を明らかにすることで、働きやすい環境づくりと長期就業につながるヒントを探ります。
※厚生労働省 毎月勤労統計調査(全国調査・地方調査)
ITエンジニアの働き方改革
まずは、働き方改革によりどのくらいの人が「長時間労働」の改善を実感しているのか、見ていきましょう。
働き方改革により「長時間労働」が改善 約4割
働き方改革の一つとして挙げられている「長時間労働の是正」について、約4割の人が改善を実感しています。
月間の残業時間は実態・希望共に「10時間未満」がトップ
「現在より少ない残業時間を希望」は、正社員が約5割なのに対し、派遣社員は3割弱。
また、「現在と同程度の残業時間の希望」は、正社員が4割弱に対し、派遣社員は5割弱と、派遣社員の方が現在の残業時間を適正だと感じているようです。
一方、「現在より多い残業時間を希望」を見ると、派遣社員は10ポイント以上高い26.6%となっていますが、回答者の収入や給与形態に深く関係しているのではないでしょうか。
では、「現在の残業時間」と「本来希望する残業時間」について具体的に見てみましょう。
現在の残業時間は、全産業平均の所定外労働時間10.5時間※に近い、またはそれよりも低い水準である「10時間未満」の回答が、約4割で最多となっています。一方で、「20時間以上」の回答も合計4割強と同程度、さらに「45時間以上」という回答も1割弱ありました。
本来希望する残業時間は、現在の実態と比較して「10時間未満」+6.7ポイント、「10~20時間未満」+4.6ポイント、「20時間以上」-11.2ポイントであり、20時間未満の希望が高くなっていることがわかります。
しかし、派遣社員で同じ比較をした結果は、「10時間未満」-7.5ポイント、「10~20時間未満」+8.0ポイント、「20時間以上」-0.5ポイントとなりました。
前出の‟希望の残業時間とのギャップ”にもある通り、「現在より多い残業時間を希望」する割合がやや高く出ていますが、「10時間未満」が最多という点は正社員と同じです。「20時間以上」を希望する割合が高いわけではなく、「10~20時間未満」くらいを希望しているようです。
では、「現在の残業時間」別に「本来希望する残業時間」を見てみましょう。
※厚生労働省 毎月勤労統計調査(全国調査・地方調査)
現在の残業時間が「10時間未満」の人の7割弱が「現在と同程度の残業時間を希望」しており、その割合は現在の残業時間が増えるにつれ減少しています。
現在の残業時間が「10~20時間未満」の人の場合、半数以上、「45時間以上」の人の場合、9割以上が「現在より少ない残業時間を希望」しています。
【Pick Up】
「2週間以上の長期休暇」があることで就業意向が高くなる 6割超
最も多い「2週間以上の長期休暇」をはじめ、「フレックス勤務」「時差出勤」「テレワーク」など自由度の高い働き方を半数以上の人が就業意向が高まる働き方だと回答しています。
そのなかでも「テレワーク」については、「この条件が満たされていないと就業しない」「就業意向がとても高くなる」を合わせた割合が3割弱です。
ITエンジニアの不満解消
ここからは、「ITエンジニアの不満」を明らかにすることで働きやすい環境づくりと長期就業につながるヒントを探っていきましょう。
現在の仕事に「何かしら不満」は約8割、30代が最多
現在の仕事に「何かしら不満がある」人は全体の8割にものぼりました。 その割合は、雇用形態別では正社員の方がやや高く、年代別では30代が最多となっています。
では、どのようなことを不満に感じているのでしょうか。
「適正な評価・昇給制度がないこと」(32.3%)、「仕事内容・業務量に応じた十分な給与ではないこと」(31.8%)と、評価、給与に関連する項目が上位。
これらの項目は、不満に感じている8割以上の人が「解消されることで、就業意向が高くなる」と回答しています。
また、過度な業務、残業時間についても2割が不満として挙げました。
次は、ITエンジニアになって良かったこと、後悔したことについて生の声を聞いてみましょう。
「新しい技術を学ぶこと」はメリットである反面、デメリットに感じる人も多数
ITエンジニアになって良かったこととして「新しい技術を学ぶこと」を挙げている人が多い反面、これをデメリットに感じる人も多数いることがわかりました。
「新しい技術を学ぶこと」により、やりがいや成長を感じられる人がいる一方で、そのことがプレッシャーやストレスになる人がいることを認識し、就業している人の気持ちの変化を感じ取る必要がありそうです。
若年層ほど「資格取得した場合、昇給・評価をしてほしい」、20代は6割
回答した割合が高い順に、「資格取得した場合の昇給・評価があること」「社外の資格取得・自己啓発への補助金があること」「社内の実務に結びつくような研修があること」と続いています。
特に、「資格取得した場合の昇給・評価があること」については、若年層ほど高い割合で回答しています。
さいごに
本レポートでは、「ITエンジニアの働き方改革の実態」「ITエンジニアの不満」が明らかになりました。
本レポートで明らかになったこと
ITエンジニアの働き方改革
- 長時間労働の改善:働き方改革により「長時間労働」が改善 約4割
- 残業の実態と希望:月間の残業時間は実態・希望共に「10時間未満」がトップ、一方派遣社員は3割弱がもっと働きたいと回答
- 就業意向が高まる働き方:1位「2週間以上の長期休暇」があることで就業意向が高くなると回答したのは6割超
ITエンジニアの不満解消
- 不満の実態:現在の仕事に「何かしら不満」は約8割、30代が最多
- 不満の詳細:「新しい技術を学ぶこと」はメリットである反面、デメリットに感じる人も多数
- 就業意向が高まるスキルアップ・研修:若年層ほど「資格取得した場合、昇給・評価をしてほしい」、20代は6割
ITエンジニアの方が感じている不満を認識すること、就業意向が高まることを参考に、働きやすい環境づくりと長期就業につなげるヒントにしてください。
執筆者:ディップ総合研究所 ディップレポート編集室 川上由加里
「私たちdipは夢とアイデアと情熱で社会を改善する存在となる」の企業理念のもと、“Labor force solution company”をビジョンに掲げ、『労働力の総合商社』として、人材サービス事業とAI・RPA 事業を提供しています。
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