社員の才能と情熱を解き放つ、
ヤフー「人材育成関連の施策」の
プロデューサー(後編)
改革を進めるには、人事のトップが「覚悟」を持って責務を果たすこと[前編を読む]
ヤフー株式会社 執行役員 ピープル・デベロップメント統括本部長
本間浩輔さん
日本企業の人事はどうあるべきか
日本企業の人事部にとって、最大のミッションとは何でしょうか。
個人が生き生き働くというベクトル、個人の自己実現のベクトルと、会社の成長のベクトルをいかに合わせていくか――それが、人事の究極の仕事だと思っています。もちろん、会社が利益を上げることが、その前提にあるということは言うまでありません。
給料をたくさんもらいたいから、自分が本来やりたくないような仕事をする人だけというのであれば、人事は必要ないかもしれません。しかし、個人が勝手に自己実現だけされても会社は困ります。「個人の成長」「自己実現」と、「会社の成長」「利益」をつなげていくことが、人事の最大のミッションだと思います。
では現在、日本企業の人事部が抱えている最大の問題とは何だとお考えですか。また、それを解決するためには、どうすればいいのでしょうか。
人事部がコストセンターだと思われていることが、諸悪の根源のように思います。コストセンターだから人は最小にして、固定費を変動費化するという名の下、人員が削減されていくことになりました。その結果、人事部の人員が減っています。一方で、やらなくてはならない業務は増えています。また、人事の経験しかない人も増えてくる。
そうした中でいま人事部内に起こっていることは、理念なき人事です。会社から言われるままに人事制度を作ったり、社長から言われたことを何も考えずにそのまま下に伝えたりするだけ、という人事担当者ばかりになってしまいました。
なぜ、このようなことになってしまったのでしょうか。事実、コストセンターや固定費の変動費化と言われたら、人事部内での人も最小限となり、固定化されていきます。社長が2期くらいで交代するのに対して、20年、30年と長く続ける人も少なくありません。こういう状況では、自己否定をして新たなチャレンジを行うことは困難になります。いま、経営を取り巻く環境は大きく変わってきています。そのためにも、チャレンジする人事が必要なのに、それがなかなかできていないことが大きな問題です。こういう人事のある組織では、チャレンジやイノベーションがなかなか起きません。
さまざまなジャンルのオピニオンリーダーが続々登場。それぞれの観点から、人事・人材開発に関する最新の知見をお話しいただきます。