ヒューリスティック
ヒューリスティックとは?
「ヒューリスティック(Heuristic)」とは、意思決定を行う際に、経験や先入観から、直感的にある程度正解に近いレベルの答えを導き出すこと。類似する言葉として「経験則」があります。対になる概念は、論理的プロセスから問題解決を図る「アルゴリズム」です。ヒューリスティックには、時間が限られている状況や複雑な問題に対処する際に、簡略的な方法で意思決定ができるというメリットがあります。一方で、判断を誤りやすい、バイアスを強化してしまうなど、ネガティブな側面もあるため、注意が必要です。ヒューリスティックを許容することが合理的な場面もありますが、重要な意思決定をする際は十分に情報収集をした上で判断することが大切です。
人は脳の省エネをしながら生きている
すぐ身近にある五つのヒューリスティック
人は日々、膨大な量の情報に接しています。情報を一つひとつ吟味していたら、それだけで一日が終わってしまうでしょう。人は経験則を用いて情報を見極め、意思決定をするなど、日々ヒューリスティックを採用しながら生活しています。
ヒューリスティックにはいくつかの種類があります。
(1)代表性ヒューリスティック
「代表性」とはもっともらしさのこと。例えば、「今度入社するAさんは元バレーボール選手らしい」と聞くと、「背が高い人なのだろう」と想像する人は多いでしょう。実際にバレーボール選手には背が高い人が多いので、ある程度正解する確率は高くなりますが、外れることもあります。
(2)利用可能性ヒューリスティック
自分の入手しやすい情報や思い出しやすい事柄をもとに判断すること。利用可能性の部分を「想起」と言い換えることもできます。例えば、自分と同僚が同時期にコロナに感染したことにより、社会でコロナが大流行していると考えるなどがこれにあたります。
(3)固着性ヒューリスティック
最初に目にした情報に引きずられ、その後の意思決定に影響を及ぼすこと。例えば、寄付サイトで「100円寄付しませんか?」と「1万円寄付しませんか?」と提示額が異なる表示をすると、後者のほうが寄付される額が多くなるといいます。別名アンカリング効果と呼ばれることもあります。
(4)感情ヒューリスティック
好き・嫌いなどの感情を基準にして意思決定を行うこと。例えば、他者に対する「仕事ができる」という評価が、必ずしも能力に基づいておらず、印象が良いか悪いかなどの要因によって左右されてしまう事象が挙げられます。
(5)シミュレーション・ヒューリスティック
自分のこれまでの経験から結果を推測すること。例えば英語会議が苦手な人が、次の会議では英語でプレゼンするよう指示されたとき、うまく話せたことがないので今回も失敗するだろうと直感的に考えてしまうことが挙げられます。
ヒューリスティックによる判断は、時間の短縮や労力の軽減などのメリットがありますが、必ずしも正しくないことは知っておくべきでしょう。特に、時間がないとき、情報が多すぎるとき、関心が低いとき、知識が十分でないときはヒューリスティックによって判断しがちです。判断ミスを防ぐためには、自分の「経験と勘」を疑い、専門家に相談するなど、情報収集に時間や労力をかけることが必要です。
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