「手待ち時間」について
いつもお世話になっております。
他の件で何度もお答えいただいておりますが、いろいろと調べても不明なためご教示いただきたくお願い致します。
今回は、いわゆる「手待ち時間」についてです。
当社は平素から道路維持(道路に異常がないかパトロール、気象等で道路に何か起きた場合の対応、動物の死骸による通行障害の解消など)を行っております。
通常の勤務時間中に上記のような事例があれば、普通に対処すればよいのですが、休日や夜間にこれらが発生した場合に備えて待機することもあります。
待機方法は、現場事務所での待機と自宅での待機があります。
待機する時間は、日中のみ、夜間のみ、あとは当日朝から翌朝までの場合もあります。
待機時間中は通常業務は行わず、出動要請があれば動く形です。
調べてもよく分からなかったのは、
①待機している時間を労働時間とみなすのか
出動要請があり、実際に対応している時間のみを労働時間とすればよいのか
②通常勤務(8時間)が終了した後、事務所または自宅で待機任務を命じることは可能なのか
③当日朝から翌朝までの待機で、これが労働時間とみなされる場合は、24時間に渡る勤務をどのように扱うか
(現状、就業規則には、これに対応した始終業時刻の記載なし)
また、時間外労働手当の支給対象はどのようになるのか
④「勤務間インターバル」は就業規則で「勤務時間終了から9時間空ける」となっていますが、待機時間を終えて次の通常勤務開始まで9時間空けるというのは適用されるのか
⑤待機時間の扱いについて就業規則に明記する必要があるか
このほか、留意点等があればご教示いただきたいです。
長文になり申し訳ございません。
よろしくお願い致します。
投稿日:2025/08/04 14:09 ID:QA-0156283
- こんささん
- 北海道/建築・土木・設計(企業規模 11~30人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1.ご質問への回答一覧
(1)【手待ち時間】は労働時間に該当するか?
・労働時間に該当するかの判断基準
「労働者が使用者の指揮命令下にあるかどうか」(厚労省通達・判例)
状況→労働時間に該当するか
現場事務所で待機し、自由に外出できない→労働時間(手待ち時間)としてカウント
自宅での待機だが、即時出動の義務があり、行動が拘束されている→原則、労働時間に該当(判例あり)
自宅待機で「○分以内に出勤」の指示がなく、私生活に制限が少ない→労働時間には該当しない可能性が高い(※対応時間のみカウント)
※判例:「大星ビル管理事件(最三小判平成14年2月28日)」など
→拘束性が高ければ、就業場所が自宅であっても労働時間とされることがあります。
(2)【勤務後の待機命令】は可能か?
→ 法的には可能ですが、以下の対応が必要です。
拘束性が高い場合は、待機時間も労働時間として扱う必要があります。
労働時間として扱うなら、36協定に基づく上限時間管理(時間外労働)が必要です。
長時間拘束になるため、**労働者の健康配慮義務(労基法第5条)**も重要になります。
(3)【当日朝から翌朝までの待機】が労働時間とされる場合の扱い
就業規則の「始業・終業時刻」の範囲を逸脱する特殊勤務扱いが必要です。
通しの24時間拘束になる場合、
- 実働時間ベースで割増(時間外・深夜・休日)を計算
- 不活動時間(睡眠等)を明確に分けて管理(※ただし拘束性が高ければ労働時間扱い)
例:
9:00~翌日9:00の待機
→ うち、事務所内に常駐し私的行動が制限されていれば、原則24時間すべて労働時間と評価されうる
→ 割増賃金(125%・150%・深夜25%)の算定根拠となる労働時間に含まれるため、要注意です。
2. 勤務間インターバルとの関係
待機時間が労働時間とされるなら、インターバル規定に抵触の可能性あり
例:
23:00~翌5:00が手待ち時間 → この間が労働時間と判断されれば、5:00~14:00などの勤務開始はNG
→ 待機終了後、9時間以上の休息時間を確保する必要があります(規定上)
3. 就業規則に明記すべきか?
・明記を強く推奨します。以下のような文言が考えられます:
例:就業規則の記載例(抜粋)
(待機勤務)
第○条 会社は、業務上の必要に応じ、従業員に対し自宅または会社が指定する場所での待機勤務を命ずることがある。
2 待機勤務とは、次の各号のいずれかに該当するものをいう。
(1)待機場所からの即時対応が求められ、行動が制限される場合
(2)会社の指揮命令下にあり、勤務の継続性があると認められる場合
3 前項の待機勤務は、労働時間として取り扱い、時間外勤務や深夜勤務に該当する場合は、所定の割増賃金を支給する。
4.待機勤務明けの通常勤務にあたっては、勤務間インターバルを適用する。
・留意すべき実務ポイント
項目→留意点
労働時間性→「指揮命令下」かどうかが最大のポイント。自宅でも拘束性があれば労働時間。
賃金計算→実働+手待ちの合計時間に基づく時間外・深夜割増の管理が必要。
就業規則→「待機勤務」「非常時勤務」「特別シフト」などの新設・整備を。
インターバル→待機終了時刻からの起算が必要。連続勤務防止の観点から調整が必須。
36協定長時間拘束や出動を伴う場合、年間・月間限度時間への影響あり。更新時に考慮を。
5.まとめ
質問項目→結論
(1)待機時間は労働時間か?→指揮命令下であれば労働時間(特に事務所待機)
(2) 勤務後の待機命令→ 可。ただし拘束時間・健康配慮に注意
(3)24時間待機時の扱い→実質労働時間で手当支給、36協定・休憩・健康管理必要
(4) 勤務間インターバル→待機が労働時間であれば適用対象
(5) 就業規則への明記→必須に近い。トラブル回避・運用明確化のため
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/08/04 15:42 ID:QA-0156290
相談者より
詳細なご教示、誠にありがとうございました
慎重に進めてまいります
投稿日:2025/08/05 07:23 ID:QA-0156338大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
1について・・・
現場事務所での待機期間は拘束性が高い為、労働時間扱いとするのが通常です。
また、自宅においては、その拘束の程度によって判断が分かれます。待機中に
外出が厳しく制限され、連絡手段を常に携帯し、直ちに対応できる状態を義務
付けられているなど、場所的・時間的な拘束が強い場合は労働扱いでしょう。
2について・・・
可能ですが、労働扱いとなり通常の労働時間として賃金の支払いが必要です。
3について・・・
労働時間とみなされる場合は、8時間を超えた時間で割増賃金が発生し、深夜帯
については深夜割増の賃金が更に発生します。始業時間がその日の勤務開始時間
で、翌朝の終業時間が勤務終了時間としての賃金計算となります。
なお、当日の朝が、会社規定上の始業時間前であれば、通常よりも早く出勤を
したとものとして、勤怠記録を付け、賃金も支払う必要があります。
4について・・・
勤務間インターバル制度は、前の勤務終了時点から、次の勤務開始までに
休息時間が9時間あるかが基準となり、待機期間が労働時間の場合であれば、
貴社の就業規則に定められた9時間のインターバルを確保する必要があります。
5について・・・
明記すべき事項です。
待機時間が労働時間とみなされるかどうか、賃金計算の根拠、待機場所、
待機中の行動制限の有無など、曖昧な部分をなくすことで、従業員との
トラブルを未然に防ぐことができます。
なお、泊まり込みのような宿日直勤務の場合、労働基準監督署長の許可を得る
ことで、労働時間、休憩、休日に関する規定が適用除外になる場合があります。
宿日直要件
・常態としてほとんど労働する必要がないこと。
・夜間に十分な睡眠設備が確保されていること。
・週1回、日直は月1回を限度とすること(例外あり)。
・宿日直手当が、同種の労働者の1日平均賃金の3分の1を下回らないこと。
実態によっての判断される要素も多い為、適用除外に該当するか否かも含め、
本件については所轄の労働基準監督署へご確認いただくことをお勧めいたしま
す。
投稿日:2025/08/04 17:39 ID:QA-0156310
相談者より
詳細なご教示ありがとうございました
慎重に進めてまいります
投稿日:2025/08/05 07:25 ID:QA-0156339大変参考になった
人事会員からの回答
- オフィスみらいさん
- 大阪府/その他業種
緊急呼び出しに備えて自宅で待機させた場合であっても、結果的に呼び出しが行われなかった場合は、使用者の指揮命令は直接及んでおらず、労働者に対しては観念的な拘束が及んでいたにすぎず、「労働させた」ことにはなりません。
したがって、別段の合意のないかぎり労働時間として対応する必要はなく、賃金・手当の支払いも必要はありません。
対して、労働者を現場事務所で待機させ、緊急出動等何らかの必要が生じた時点で即座に就労を命じ得る状態に置く場合は、その待機時間は使用者の現実的な拘束の下にあるといえるため「手待時間」という形で労働時間として取り扱う必要があります。
①待機している時間を労働時間とみなすのか否かは、上記により判断することになります。
②可能です。
③2暦日にまたがる勤務は、始業時刻の属する日の1勤務とみなされ、8時間までは通常勤務、超えた時間は時間外労働として25%割増、ただし、22時~翌5時までの時間は時間外労働+深夜労働として50%割増で計算する必要があります。
④適用されます。
勤務終了から、次の勤務開始までに9時間の休息時間が必要になり、待機期間が労働時間とみなされる場合であっても、9時間の休息時間が必要になります。
⑤労使間のトラブルを防ぐためにも、就業規則への記載は必要です。
投稿日:2025/08/05 09:27 ID:QA-0156350
相談者より
詳細なご回答ありがとうございました
慎重に進めてまいります
投稿日:2025/08/05 10:32 ID:QA-0156358大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
安全配慮義務
以下、回答いたします。
(1)待機している時間を労働時間とみなすのか。
出動要請があり、実際に対応している時間のみを労働時間とすればよいのか。
⇒使用者から指示があった場合には即時に業務に従事することが求められており、労働から離れることが保障されていない場合には労働時間に該当するものと認識されます。
(2)通常勤務(8時間)が終了した後、事務所または自宅で待機任務を命じることは可能なのか。
⇒36協定に則ることになると考えられます。労働時間の上限規制にも服することとなります。
(3)当日朝から翌朝までの待機で、これが労働時間とみなされる場合は、24時間に渡る勤務をどのように扱うか。
(現状、就業規則には、これに対応した始終業時刻の記載なし)
また、時間外労働手当の支給対象はどのようになるのか。
⇒法定時間(週40時間、一日8時間)を基準にして割増賃金の支給等に当たることになると認識されます。
(4)「勤務間インターバル」は就業規則で「勤務時間終了から9時間空ける」となっています、待機時間を終えて次の通常勤務開始まで9時間空けるというのは適用されるのか。
⇒労働時間の場合「勤務間インターバル」の規定が適用されることになると考えられます。この制度を含め、安全配慮義務に基づく検討が尽くされることが重要であると考えられます。
(5)待機時間の扱いについて就業規則に明記する必要があるか。
⇒労使間で共通の認識を持てるよう明記することが望ましいと考えられます。
(6)留意点
⇒上述させていただきましたように、「安全配慮義務」に基づく検討が尽くされることが重要であると考えられます。関係判例等を付記させていただきます。
※安全配慮義務とは
使用者は「その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務」(安全配慮義務)を負う(電通事件 平成12年3月24日 最高裁判決)。
※違反の場合とは
労働者が恒常的に著しく長時間にわたり業務に従事しており、会社側が労働者の健康状態の悪化を認識しながらも、負担軽減等を講じない場合には、使用者は安全配慮義務違反を理由とした民事損害賠償責任を負う。
※労災との関係は
労災認定においても、労働者に対し恒常的に著しい長時間労働が認められた場合、「過重な精神的・身体的負荷がXの右基礎疾患をその自然の経過を超えて憎悪させ、右発症に至ったものとみるのが相当」とし、労災不支給決定処分が取り消され(横浜南労基署長事件 平成12年7月17日 最高裁判決)、その後の労災認定基準の大幅な見直しに繋がった。
投稿日:2025/08/05 11:16 ID:QA-0156362
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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