株式会社クレディセゾン:
がんとともに生きていく時代
社員が治療と仕事を両立するために人事ができることとは(前編)
株式会社クレディセゾン 取締役 営業推進事業部長 兼 戦略人事部 キャリア開発室長 武田 雅子さん
人によってまったく違うがんの治療計画
社員からがんを告白された場合、人事としてどう対応すればいいのでしょうか。
まずは今後のスケジュールを調整していくことになりますが、がんの場合、すぐに治療計画がわかるわけではありません。例えば一例として、告知から手術の日取りが決まって、手術を行って、腫瘍を病理検査にかけてから、術後どのように治療を行っていくかどうかが判明します。ですから、少しずつわかる範囲内で話し合いつつ、そのつど柔軟に業務スケジュールを組んでいくことが求められます。
私のように術後、放射線治療とホルモン治療を行うこともあれば、術前に抗がん剤を用いて、あらかじめ腫瘍を小さくしてから手術を行うこともあります。おそらく皆さんの周りにもがんを経験された方が少なからずいらっしゃると思いますが、その症例や治療例がすべての患者さんに当てはまるわけではありません。「そういうがんなら、こうするべきだよね」などと、自分の記憶の引き出しに照らし合わせて、型に当てはめないように気をつけてください。人事として何か定型的に行えることはないんです。一人ひとりと向き合い、オーダーメイドで今ある制度の中でできることを考えることが大切なんです。
がんは治療や自身の状態によっても波があります。心も含めて、状況はさまざまに変化します。通常の傷病なら「手術すれば、あとは良くなるだけ」ですが、私の場合はホルモン治療の影響もあって、うつのような症状も現れました。「一度話し合ったから大丈夫」ではなく、本人も人事も、お互いにしっかりと変化についていつでも話し合える環境を整えるべきです。
本人の心へのサポートも重要ですね。
告知直後は、大きく気が動転していることが多いですからね。ともすると「辞める」と言い出す人もいます。ただ、がん治療は長期になることが多いので、経済的な面を考えても、可能であれば仕事は続けた方がいい。その時々の感情で決めてしまうと、のちのち後悔することにもなります。特に男性のほうが辞めようとする人が多いんです。「正社員でフルタイム働かなければ」という固定観念が強いぶん、それ以外の選択肢を考えられず、極端な決断に走ってしまいがちなようです。女性は育児などライフステージの変化で、勤務形態や雇用形態が変わることもありますし、抵抗感が少ないのかもしれません。
これはいろいろな方に話しているのですが、仕事できちんと果たすべき役割があるということは、生きる上でとても大事なことなんです。一人で家に引きこもっていたら、やはりつらいですよ。育児の場合でも、赤ちゃんと二人きりになって気が滅入ってしまった、という母親のエピソードをよく聞きますよね。がんを治療しながら働いている人は大勢いますから、「がんとともに生きていく」という意識に変えていかなくてはならないと考えています。