「現場」と「人事」の求める人材像の違い
新任マネジャーが重視したものとは
営業採用で確認すべきこと 選考は「誰」が「どんな基準」で行うのか?
「営業力」はさまざまなビジネススキルが複合したものだといえる。よくいわれるのはコミュニケーション能力だが、もちろんそれだけではダメで、商品の理解力や取引先の課題分析力、提案力、さらにはトラブル発生時の臨機応変な対応力や人間としての誠実さなども必要だろう。それだけに各社とも人材の選考には工夫を凝らしているが、時にはそんな「実力」とはまったく関係ない要素が採用の決め手になることもあるようだ。
即戦力人材がなぜか書類選考NGに
「中堅から若手の営業を採用したいと思っています。取り扱い製品が増えたことによる増員です。なるべく即戦力の人材を採用したいので、ぜひ協力してください」
G社の人事担当者からわざわざ電話がかかってきた。普通なら求人票がメールで送られてくるだけだが、人材紹介会社一社一社に電話しているところをみると、相当に力を入れた採用なのだろう。確かに、即戦力募集となれば競合他社もさかんに募集しているから、人材紹介会社に対してしっかりプレゼンしないと埋もれてしまう。G社の意気込みに応えて、さっそく数名の候補者を紹介してみたのだが、なぜか書類選考で不合格の連絡がきてしまう。そんなやりとりが何度か繰り返された。
「募集要項に書かれているスペックに当てはまっている方が、書類選考を通過しない理由を教えていただけますか。軌道修正したいと思いますので…」
不思議に思った私は、思いきってG社に電話してみた。もちろん、多くの候補者が集まる募集の場合、自然に合格ラインが上がり、同業経験者でもなかなか面接にまで至らないといったケースはある。しかし、G社の場合は、そんなに簡単に即戦力人材が集まるような業界ではなかった。同業同士でいつも同じ候補者を奪い合っているような、売り手市場の業界なのだ。
「そう言われてみるとそうですね。一度、営業部門のマネジャーに確認してみます」
G社では書類選考の段階から、配属を予定している現場の責任者に選考を任せていた。外資系やIT業界などを中心にそういうやり方をする企業も珍しくはない。数日後、G社の人事担当者から電話があった。
「事情がわかりました。今回の募集というのが、新しいチームでの増員のためだという話はお伝えしていましたよね」
確かに「取り扱い製品が増えたため」という説明は聞いていた。それが「新しいチーム」ということなのだろう。
「新製品を扱う新部署ということで、今回マネジャーにも31歳の気鋭の人材を抜擢していましてね。当社の営業マネジャーとしてはかなり若い年代です」
ここまで聞いて、私にもなんとなく事情が読めてきた。