経験やスキルより「ストレス耐性」で採用する企業
人員削減で、サポートする余裕のない人事部 厳しい仕事のストレスで体調を崩す社員が増加
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「ストレス耐性」を重視して、採用する理由とは
「この前ご紹介いただいたEさんですが、適性テストの結果も良かったですし、ぜひ2次面接に進んでいただきたいと思います。Eさんのような方がいらっしゃったら、またご紹介ください。まだまだ採用枠はありますので」
A社の採用担当はかなり上機嫌だった。採用に苦戦していたところに望んでいた人材が応募してくると、やはり相当うれしいものらしい。そこで私は、急に選考基準が変わった理由も聞いてみることにした。
「応募者の方にも面接でお伝えしていることですが、当社の仕事はハードなんです。スキルがあっても、そのハードさに耐えられないとやっていけないんですね。各部門からも、以前は、この資格がある人材、こういうプロジェクト経験のある人材を採用して欲しいといった要望ばかりだったんですが、最近はスキルや経験があってもストレス耐性がないと厳しいという声が強くなってきているんです」
なるほど、と私は思った。業種は違っても似たような話を聞くことが最近多くなっていたからだ。多くの企業は今、グローバルな企業間競争にさらされている。当然、社員にかかってくるプレッシャーやストレスも大きい。A社も似たような状況のようだ。
人事経験のある転職希望者に、こんな話を聞いたことがある。
「うつ病だけでなく、不眠症や胃が悪くなるなど人によってさまざまな症状があります。寝違えもストレスが原因の場合があります。職場環境の改善やメンタルヘルス面での支援は、多くの企業で取り組みが行われていますが、十分なサポートができていないところも少なくないでしょう。体調を崩した社員の対応をする人事部も、近年の人員削減などで余裕がないのが実情です」
せっかく採用したにもかかわらず、期待する人材が、ストレスにより体調を崩して休職したり、早期離職したりすれば、企業にとっては大きな損失となる。A社が「ストレス耐性」を重視した採用方針に変えてきた背景には、おそらくこんな理由があるのだろう。
「Eさんは相当タフな方ですからね。今回は大きなチャンスだということで、かなり気合が入っています。入社すれば、元気に働いてくれると思いますよ」
「当社もそれを期待しています。2次面接もよろしくお願いします」
採用担当との電話を切りながら、Eさんならきっとストレスに負けずに活躍できるはずだと、私は思ったのだった。
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