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人材採用“ウラ”“オモテ” 
企業・求職者・人材紹介会社の「転職」三角関係

「数字」だけがすべてではない
売上目標以外で評価してもらいたい人材

期待しすぎは良くない?

転職に際して、どうしても譲れない条件

会社の売上を伸ばすのが営業の仕事。もちろんそれは分かっているが、あまりにも数字のノルマが厳しいと、心身ともに疲れ果ててしまうこともある。そんな時、どういう会社への転職を考えるのだろうか――。人気が高いのは、固定の得意先管理を中心とした、ある程度の売上が確実に見込める営業を行っている会社。そして、もう一つは売上数値以外のプロセスなども含めて総合的に評価してくれる会社、ということになるのではないだろうか。

とにかくノルマがきつかった

「営業の仕事自体は、今後も続けていきたいんです。コミュニケーションをとるのも好きですし、オフィス内でじっと机に向かっているよりもフットワークよく動き回っていたい方です。ただ、前の会社はとにかく数字しか見なかったんです…」

Aさんは営業職の経験者らしく、人当たりの良い爽やかな人物だった。話し方もはっきりしているし、嫌味もない。専門知識の必要な電子部品を扱っていたというキャリアからも、転職先を探すのはそう難しくはないように思えた。ただ、売上目標のノルマがきつかった前職での経験がかなりこたえているらしく、転職に際してはどうしても譲れない条件があるのだという。

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「目標数字があるのは営業であれば当然だと思います。ただ、『評価基準が売上だけではない会社』を希望したいんです。面接ではその部分をしっかり聞きたいですね」

確かにAさんの気持ちは分かる。しかし、企業にすれば営業担当には貪欲に数字を追ってもらいたい、というのが本音だろう。私は少し心配になった。

「面接の時にあまりそこを強調すると、営業としてのメンタルが弱いと判断されるかもしれません。もちろん、私どもも評価方法などについてはできるだけ情報をお伝えしますので、面接での質問の仕方には十分ご注意ください」

もちろんです、とAさんは答えた。

「売上ノルマに追われたくないから…ということではなく、社員を伸ばすためにどういう目標管理をしているのかを聞きたいのです。それが分かれば、ある程度どんな社風かも判断できますし」

そんなやりとりを経て、私はAさんに紹介する企業を何社かピックアップした。

「T社はチーム制で営業していて、一人ひとりに売上目標は割り振られません。K社は、毎年の目標を上司と相談して自主的に決めるスタイルで、上からいきなり数字が降りてくることはないそうです」

私は、Aさんの希望にできるだけ沿うように、売上による締め付けがあまり厳しくない会社を選んだつもりだった。Aさんは何件もの求人票に熱心に目を通していた。しかし、結局その場だけでは判断できない…ということで、自宅に戻ってじっくり企業研究をした上で応募先を決めることになった。

営業にはやはり売上を期待しています

「K社では今までの経験や知識を活かせると思います。扱っている製品が比較的近い分野ですし、おっしゃっていたように、一人ひとりの社員が売上数字以外の目標を毎年設定して、その達成度でも評価するシステムがあるそうです」

何社か紹介した中のK社を、Aさんは気に入ってくれたようだった。さっそく推薦してみると、企業側も面接したいという。話は順調に進み、1回目の面接が行われた。その日の夜、私はAさんに面接の感触を聞くための電話を入れた。

「仕事内容は十分理解できました。取扱い製品もほぼ想定していた通りです。あの感じならやっていけると思います」

Aさんとしても第一印象は良かったようだ。しかし、気になる評価制度の方は、しっかりと確認できたのだろうか。

「上司と相談して自主目標を立てる、その達成度も評価システムに入っている…ということは分かりました。ただ、問題は売上数字と自主目標の割合ですね。今回は初めての面接でしたし、ちょっと緊張してしまって、そこまで踏み込んだ話は聞けませんでした」

やはり、微妙な質問だけに、Aさんも応募者という立場では聞きにくかったのかもしれない。そこで、代わりに私がK社に確認してみることにした。

「査定は売上85%、残りの15%が自主目標の達成度となります」

K社の人事担当の回答は明確だった。

「85%というと“ほとんどじゃないか”と思われるかもしれませんが、やはり営業は売上が大事なので…」

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この情報を伝えると、Aさんは電話の向こうでしばらく考え込んでいた。

「やっぱりそんなものなんですねえ。K社の雰囲気がとても良かったので、勝手に3分の2が売上数字、3分の1が売上以外の評価…くらいに考えていたんですが、ちょっと甘かったです」

おそらくAさんは、前職で厳しいノルマに追われ、一種の神経過敏になっているのだろう。実際に仕事を始めてしまえば、K社でも立派にやっていける人材のように私には思えた。しかし、過敏になっている時に気安めを言われても不安が募るだけだろう。

「もう何社か実際に訪問して話を聞いてみませんか。いくつか比較してみると、K社や前の会社との違いも見えてくると思いますよ」

Aさんに納得して転職してもらうためには、もう少し時間がかかりそうだ。



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