転職直後の夏休み
長い休暇で不安や迷いが生じてしまったら――
転職したばかりの人の中には、なかなか新しい環境に慣れることができず、不安な気持ちを抱えている人も多いだろう。これまでの職場とは異なる文化に遭遇し、ショックを受けるかもしれない。そんなタイミングで長期休暇に入れば「自分の選択は正しかったのだろうか」と考え込んでしまうことになりかねない。長期休暇は、家族や友人と語りあったり、旅に出て自分を見つめなおしたりする機会でもある。入社したばかりの人材が休暇明けに出社してくれるのか……。人事だけでなく、人材紹介会社にとってもかなり気になる問題だ。
休むより早く仕事を覚えたい
「7月末で今の会社の有休消化が終わるので、N社への出社日は8月1日でお願いします」
N社への内定、転職が決まっていたAさん。入社に当たって要望があるという。
「8月には夏期休暇があると思うのですが、『今年は必要ありません』とN社に伝えてもらえませんか。早く仕事を覚えたいので、普通に出勤したいと思っています」
Aさんによると、有休を消化してすでに半月以上も休んでいる。自分ではそれが夏休みのつもりなので、N社では仕事に集中し、できるだけ早く新しい環境に慣れたいのだという。
前向きなAさんの姿勢に、N社側も喜んでくれるだろうと人事担当に連絡してみたところ、意外な答えが返ってきた。
「気持ちはありがたいのですが、Aさんの部署は全員いっせいに夏季休暇をとる予定です。一人で出社されても、おそらく仕事になりませんよ」
最近は、社員それぞれが都合のいい時期に夏休みをとる企業も増えている。N社にもそういう部署はあるのだが、Aさんの配属された部門はそうではなかった。しかも10連休だという。
それを聞いたAさんは少々困惑気味だ。
「本当に言われた通り、休んでもいいのでしょうか」
「それは大丈夫でしょう。出社しても仕事にならないとおっしゃっていましたから。余裕があるなら、自宅で勉強をしてみてはいかがでしょうか。上司の方に課題図書を教えてもらい、読破するとか」
「そうしてみます」
ひとまず納得してくれたAさんだったが、この状況を受けて不安になっていたのは、むしろ私の方だった。転職直後は誰もが不安定な気持ちになっている。社風や仕事の進め方など、思いがけない文化の違いにショックを受けることもある。そんな時期に長い休みに入ることで、「この会社でよかったのだろうか」とネガティブな思考に陥ってしまう人は多い。
夏休み返上で頑張りたいとまで言っていたAさんに限ってそんなことはない、と思いたかったが……。