経歴詐称を見抜けるか
人材紹介会社は基本「性善説」 ついキャリアを上方修正してしまう人たち

経歴操作を見抜く目は企業の方がシビア

「前回登録していただいた時の履歴書にあったN社が、今回記載されていませんが」

何気ない雰囲気で話を振ってみると、あっさり開き直られることも少なくない。

「N社は試用期間でお互いにこれは違うのではということになり、正式には入社していません。ごく短い期間だし、ごちゃごちゃするので省きました」

しかし、短期間でも社会保険の加入手続きなどをしていれば、後で必ず紹介先の企業にわかってしまう。

「転職後に判明したら、一種の経歴詐称ですから、最悪の場合は採用取り消しになるかもしれません。正確に書いておいた方がいいですよ」

だいたいそんなアドバイスをすることになるのだが、新規の登録者の場合、気付かないこともある。

逆に面接した企業から「あの方、気をつけた方がいいですよ」と教えてもらったこともある。

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「S社でリーダーをしていたということだったので、即戦力になると考え、面接したのですが……」

たまたまS社からN社に転職した人がいたので面接に立ち会ってもらったが、話がかみ合わなかったという。社員ではなく、派遣社員としてS社で仕事をしていたようだ、というのだ。

結果的に不採用で、人材側からも辞退したいという連絡が入った。その後は気まずくなったのか、しばらく転職活動は休みたいという連絡が入り、それきりになってしまった。

人材を紹介された企業が厳しくチェックするため、採用が決まった後に経歴詐称がわかって問題になることはほとんどない。キャリアにゲタをはかせて自分をよく見せようと思っても、実際には面接などを通じて、企業側にほぼ見抜かれてしまうのだ。しかしその場合も、企業からは「今回は見送ります」としか言われないので、経歴詐称が理由だったのかどうかは、人材紹介会社にはわからないのである。

経歴が問題視されたコメンテーターについて、「コメンテーターとしての仕事はちゃんとできていたのだから、経歴ばかり気にするのはおかしい」という声もある。しかし、あの経歴でなければ、そもそもコメンテーターの仕事を依頼されなかったのではないか。実力主義といいながら、どうしても最初は経歴で判断してしまう社会が続くかぎり、キャリアを上方修正しようと考える人はいなくならないだろう。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「人事辞典「HRペディア」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。

人材採用“ウラ”“オモテ”

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2016/05/17

経歴詐称は一般的に思われているより多く、だから当社のようなバックグラウンドチェックへのご要望が増えているのでしょう。

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