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【ヨミ】キャリアケン キャリア権

人は誰でも自ら望む職業キャリアを主体的に開発・形成する権利をもち、企業や社会は個々人のキャリア形成を保障・支援すべきであるという法概念、およびそうした労働者の権利自体を、企業組織が有する人事権に対して「キャリア権」と呼びます。キャリア権の議論は、職業経験による能力の蓄積やキャリアを個人の財産として法的に位置づけようとする試みであり、今後の雇用政策や職業能力開発政策の展開を支える新しいコンセプトとして注目されています。
(2011/7/25掲載)

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キャリア権のケーススタディ

個人のキャリア形成を支える新概念
組織の人事権より優遇される可能性も

社会や産業の構造が変われば、職種・業種の盛衰が生じ、個人に求められる能力も変化します。かつて終身雇用が一般的だった時代は、企業が労働者に対して、雇用の安定を保障する代わりに人事権などで幅広い裁量を有していました。個人もまた組織の人事権に従っていれば、自らの能力やキャリアのビルドアップについてそれほど心配せずに済みました。しかしその前提となる長期雇用システムが変容し、労働移動が活発化する現在では、労働者自身が主体的に能力開発やキャリア形成に関わるべきだという考え方が強まっています。自らの職業人生を他人まかせ、組織まかせにせず、どう構想し実現するか――労働者個人のキャリア形成を支える法的基盤として提唱されたのが「キャリア権」という概念です。

2002年に諏訪康雄・法政大学教授を座長とする厚生労働省の「キャリア形成を支援する労働市場政策研究会」が、キャリア形成の現状と支援政策のあり方について報告書をまとめました。報告書では、産業構造や職業構造が大きく転換し、もはや生涯一社就労は現実的ではないと指摘。こうした環境変化に対応するには、個人の財産である職業経験による能力の蓄積と、その能力蓄積の展開である職業キャリアを保障することが必要であるとして、「キャリア権」の法理を提示しています。

誰もが長い職業人生の中で、転職や転社、職務転換を経験せざるを得なくなる。しかしそうした場合でも個々人の職業キャリアを中断、あるいはロスすることなく、円滑に発展させる必要がある。さもないと働き手はもちろん、企業、さらには社会全体が職業能力の低下と人的資本の枯渇に直面することになりかねない――。同書はそう警告し、企業一社による雇用保障を超えて、キャリア権を法的に保障することの重要性を指摘しました。
 
現状では、キャリア権をめぐる議論はまだ理念の域を大きく出ていません。しかしこうした流れを受けて、企業側の、個人のキャリア形成に対する配慮義務は高まる傾向にあるのが実情でしょう。たとえば、社内の研修制度などを利用して海外に留学したり、業務に関する資格を取得したりした社員が他社に転職した場合、費用補助分の返還を求めることが可能かというと、請求はまず困難だと考えられます。社員が退職してしまうことは教育投資に伴う“リスク”と割り切った上で、能力開発やキャリアデザインに関する人事戦略を構築していかなければなりません。また今後キャリア権が認められ、法的効力まで付与されるようになると、労働者が自ら望むキャリアを形成するために配置転換や休業命令を拒んだ場合でも、その拒否には合理的な理由があると判断される可能性があります。個人のキャリア権が組織の人事権より優遇されるようなケースが増えてくるかもしれません。

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