社員の才能と情熱を解き放つ、
ヤフー「人材育成関連の施策」の
プロデューサー(後編)
改革を進めるには、人事のトップが「覚悟」を持って責務を果たすこと[前編を読む]
ヤフー株式会社 執行役員 ピープル・デベロップメント統括本部長
本間浩輔さん
人事トップに求められる要件
人事のトップに求められる要件は何でしょうか。
人事のトップに社長の視点が必要だと思います。その意味で、人事のトップは小さい会社でもいいので、社長ができる人がいいと思います。異なる業態、業種であってもよいので、会社経営をしたことをあるとか、会社経営はこういうものだという実感がある。そうでなければ、「社長が言ったからしなくてはならない」という仕事の仕方になり、御用聞きになりがちです。
人事のトップは、場合によって社長よりも長期的な視点で判断するスキルが必要があります。「これから数年後、会社を取り巻く環境はどのように変化するのか」「現在の経営戦略に基づいた人事制度はどうあるべきなのか」といったことを提言できること。また、社長の発言の真意を理解し、その内容を現場が理解・実践できるように組織をリードする能力が必要です。
会社経営について、特に人と組織の面で、人事の責任者は社長と目線を合わせながら、対等に議論できなければならないということですか。
LIXILグループの人事トップの八木洋介さんがそういう存在だと思います。八木さんの話を聞いていて、社長とベースの部分でつながっているかどうか、特に人と組織に対する考え方を共有していないと、会社が機能しないことを強く感じました。外部から優秀な人事部長をスカウトしても、これができていなければ、人と組織は回りません。この点で社長と人事トップが“ワンセット”であることが、会社経営においてはとても重要だと思います。
いまのような時代にあって、どのような人事が求められるのでしょうか。
極端な例えかもしれませんが、人事トップ自身が「いつ辞めてもいい」と、思えるかどうかだと思います。なぜなら問題の根本にあるのは、人事のトップがサラリーマン化していて、人事のトップとしての「覚悟」が欠如してしまっているように思うからです。サラリーマン的に経営層が指示する施策を実行するのではなく、人事のトップとして環境を見据え、ポリシーを実践し、「覚悟」を持って施策をうっていくことが必要になるように思います。
いま改めて、人事という仕事、特に人が人を評価するということの難しさを感じています。私自身、何がよい評価なのか、未だに悩んでいます。企業はそういう矛盾を抱えながら、前に進んでいくわけです。そうした中で、人事のトップは大きな権限を持つ存在。だからこそ、覚悟を持ってその責務を果たすことが重要だと思います。
今後の本間さんご自身の目標や計画について、お聞かせください。
こうなっていたいというビジョンはありますし、そのためにはいろいろな経験を積み重ねなくてはならないと思いますが、基本的に私のキャリアに対する考え方は「プランドハプンスタンス理論」です。ですからいつ、どのようなことがあっても、それを受け入れる覚悟があります。だからこそ、今日「ヤフーで働いていて本当に良かった」と心底から言ってくれるような会社にする、それをまず第一に考えています。
最後に、企業で人事に携わる方たちに向けてメッセージをお願いします。
人事を担当するようになって、人事は人事部が行うものではないことを痛感しています。社員の「現場の人事力」があってこそ、社員は生き生きと働き、組織は強くなり、企業は厳しい競争を勝ち抜くことができます。だからこそ、人事の仕組みを作っていくのは、人事部ではなく「職場」であり、その主役は「社員」であるべきです。人事の仕事に就かれている方は、このことを決して忘れてほしくないと思います。
さまざまなジャンルのオピニオンリーダーが続々登場。それぞれの観点から、人事・人材開発に関する最新の知見をお話しいただきます。