外国籍スタッフの脱退一時金による一時帰国問題について
取引先の顧客に弊社から紹介した外国籍スタッフがいますが、脱退一時金制度改正により、今のうち帰国しないと今後一時金もらえなくなる可能性があると認識され、一時金をもらうために退職して、一時帰国したことが起きました。
数名ほど一気に退職すると困りますし、でも止めるわけにはいかなく。。
困っています。本人から再入社したいとの相談もあります。
この場合、一時帰国させるしかないでしょうか?日本に住所なしで帰国したはずので、再入国する場合、どのような手続きが必要となりますか?
※脱退一時金取得するために出国したら、再度日本に入るなら、在留資格の新規申請しないといけない話もちらほら聞いていますが、これって明確に決まっていますか?
投稿日:2025/11/19 14:59 ID:QA-0160871
- TARAKIDAさん
- 東京都/その他業種(企業規模 10001人以上)
この相談に関連するQ&A
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1.大前提
【脱退一時金の制度改正で“急いで帰国しないと損”は本当か?】
外国籍の方が不安になっている理由は、2021~2024年にかけての
・「脱退一時金 → 年金通算制度への移行」
に関する広報の誤解が多いことが原因です。
正しくは
脱退一時金制度そのものが即廃止されるわけではない
“通算加入期間が10年以上あれば脱退一時金は不可”という制度が世界共通で進んでいる
日本でも将来的に脱退一時金縮小の方向はあるが、現時点で「今すぐ廃止」などの確定制度はない
つまり、
→「今帰らないと脱退一時金がなくなる」は、現時点では“完全な誤解”
であり、政府が「今年○月に廃止する」などの発表はありません。
2.一時金のために退職→帰国 → 再入社の問題点
退職して出国しないと脱退一時金は請求できない
これは制度上一切の例外がありません(法令上、出国後の請求のみ可能)。
よって本人が脱退一時金を希望する場合、
「出国しないと請求できない」は事実です。
3.退職 → 帰国した外国人が、再入国する場合
・ポイント
→「在留資格(ビザ)」が消滅するかどうかで対応が変わる
→ 再入国許可を取らずに出国した場合は 在留資格は消滅
つまり、基本的には
【再入国時は“新規の在留資格申請”が必要(原則)】
4.ケース別:帰国後の再入国可否
ケース1:退職して即帰国(再入国許可なし)
→ 在留資格は自動消滅(原則)
日本に戻るには:
(1)在留資格認定証明書交付申請(COE)
職種別に
- 技能実習
- 特定技能
- 技術・人文知識・国際業務
など、
元の職種に合った資格を会社側が“新規に”申請する必要があります。
(2)COEが許可されたら、海外の日本大使館でビザ申請
(3)日本に入国して就労開始
→ 完全に「新規入社扱い」になり、最低1〜3ヶ月程度必要
ケース2:退職・帰国前に「みなし再入国許可」を取って出国
(パスポート+在留カードで可能、申請不要)
→ これをしていれば
→ 在留資格は消滅しない
ただし問題
・退職している場合は「在留資格の活動要件」を満たさない
→ 入管が「資格該当性なし」と判断する可能性
一般論:
退職後14日以内に「活動外通報」をすると
入管は「求職滞在期間(30〜90日)」を付与する運用がある
その間に「新たな就職先」または「前職へ再入社」が可能
つまり、
退職した後すぐに再入社が決まっているなら
みなし再入国 + 14日以内に届出をして、再入社までの期間が短い場合
在留資格を維持したまま戻れる可能性はある。
ただし、
海外から入国審査官に「退職済」
日本国内の勤務実態がない
などが判明すると、
→ 入管判断で在留資格が失効扱い → 結局COE(新規)になる可能性が高い
実務では “退職して帰国したケースは、原則新規申請扱い” と考えるべき。
5.会社として「一時帰国させるしかないのか?」
法的に「脱退一時金を希望するなら帰国せざるを得ない」
これは制度上、会社が止めることはできない。
しかし、次の制度を説明することで
退職・帰国を思いとどまらせることができます。
6.実務で会社が取るべき“止めるための説明”
外国籍スタッフには以下のように説明すると効果的です。
(1)脱退一時金は、5年以内に請求すれば良い
「今すぐ帰国する必要はない」
※請求期限:出国日の翌日から5年以内(2021年改正で延長済)
(2)脱退一時金を受け取ると、日本の年金通算(10年要件)ができなくなる
→ 将来日本で長期就労する予定がある人は損
(3)退職→帰国→再入国には“新規在留資格申請”が必要
→ 2〜3ヶ月働けない、生活費がない
→ COE不許可リスクがある
→ 特定技能の場合は再入国に制限がある
(4)「脱退一時金より、日本での安定継続就労の方が有利」
実際、多くの外国人支援団体も同じ説明をしています。
7.まとめ(会社の対応方針として最適解)
(1)脱退一時金は今すぐ帰国しなくても請求可能(5年間)
→ 退職ラッシュ防止の最重要ポイント
(2)退職・帰国すると、ほぼ確実に「新規ビザ申請が必要」
→ 短期で戻ることは困難
→ COE不許可リスクあり
(3)再入社するなら「新規入管手続き」(COE)が必要
→ 在留資格の一貫性が途切れるため
(4)可能なら退職せずに就労継続するよう説明
→ これは合法かつ最も安全
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/11/19 18:30 ID:QA-0160902
相談者より
井上先生
ご丁寧に回答いただきありがとうございます。
追加で伺いたいですが、ミャンマー国籍の方達が持っている特定活動の在留資格ですが、同じ考え方でよろしいでしょうか?
この在留資格は就労上の条件はほぼなく、在留期限が切れない限り、就労先がなくても再入国は簡単にできるものでしょうか?なんとなく「特定技能」や「技術・人文知識・国際業務」より容易になっているかと思いますが。。
投稿日:2025/11/20 11:06 ID:QA-0160940大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
脱退一時金をもらうための条件は、日本に住んでいないことです。
つまり、一時金を受け取るために会社を辞めて日本を出国した時点で、
その人のビザ(在留資格)は無効になっています。
その為、もしまた日本で働きたいと思ったら、一度本国に帰ってから、
改めて新しいビザ(例えば、「技術・人文知識・国際業務」など)を申請し、
在留資格認定証明書を取り直す必要があります。
在留資格の取得に関しては当方も専門家ではありませんので、就労ビザなどを
専門的に扱う行政書士等の専門家へご相談されることをお勧めいたします。
投稿日:2025/11/20 09:05 ID:QA-0160926
相談者より
ご回答ありがとうございました。
投稿日:2025/11/20 13:38 ID:QA-0160958大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
追加のご質問にご回答申し上げます。
追加のご質問をいただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
考え方や規定等につきましては、ご説明申し上げました通りです。
追加のご質問
「ミャンマー国籍の方達が持っている特定活動の在留資格ですが、同じ考え方でよろしいでしょうか?
この在留資格は就労上の条件はほぼなく、在留期限が切れない限り、就労先がなくても再入国は簡単にできるものでしょうか?なんとなく「特定技能」や「技術・人文知識・国際業務」より容易になっているかと思いますが。」
につきましての最終の判断は、所轄の労働基準監督署および所轄の監督官庁が行うものと存じます。
つきましては、本ご質問は、所轄の労働基準監督署の監督官もしくは、所轄の監督官庁の責任者にご確認されることをお勧め申し上げます。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/11/20 11:14 ID:QA-0160941
相談者より
ご回答ありがとうございました!
投稿日:2025/11/20 13:34 ID:QA-0160957大変参考になった
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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