身元保証人・身元保証書の規定について
はじめて相談をさせていただきます。
ただ今就業規則の見直しを行っているのですが、入社に際しての提出書類の項に現状は「身元保証書」を定め、同時に「身元保証人」を定義する文言を記載しています。
こちらについて、現状は運用(保証書の配布・回収ならびに更新)が追い付いていないことから、今後は書類提出を義務付けないといった選択肢も含めて見直しを検討しております。
そこでおうかがいなのですが、このような「身元保証人」「身元保証書」を規定する就業規則は数年前の民法改正後も規定している企業が多数派なのかどうかといったことが知りたいと思っております。
弊社は未上場・小売業という業態となりますが、入社時に身元保証を義務付けている企業さまが具体的にどれくらいの割合でいらっしゃるのかを把握させていただき、社内検討の判断の参考にしたく考えております。ネットの情報では限界があり、ご担当されているケースなどからご意見をおうかがいできればと思いこちらに相談をさせていただきました。
どうぞよろしくお願いいたします。
投稿日:2022/03/07 11:36 ID:QA-0113057
- たいたいさん
- 東京都/販売・小売(企業規模 1001~3000人)
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
- 川勝 民雄
- 川勝研究所 代表者
身元の定義も明確とは言えない保証書の効用は疑問
▼身元保証の定め自体は、人権問題や個人情報と直接関り合いのあるものではありません。従い、就業規則から削除する必然性もありません。問題はその効用と必要性です。
▼身元保証法においては、保証人の保護、逆に言えば、会社の保証請求力には厳しい限界が設けられています。どういう損害が起こるか判らないものを保証させるのは、土台、無茶というものですだからです。入社時=保証日、という限り、保証できるのは、その時点の想定行為に限られます。
▼例えば、転勤で、海外を含む遠方勤務となった以降は、保証人の目は届かなくなりますし、新入社員で、職務責任、権限が大きくなれば、保証内容は、保証当時から大きく変質・拡大し、保証リスクも、保証人の知らないうちに変わってしまいます。
▼従って、会社は、これらの保証契約内容に変更があった場合は、その都度、保証人に遅滞なく通知しなければ責任を問えなくなります。そして、通知された保証人はそれ以後の契約を解除できることになっています。
▼実際に、人事異動の都度、社員全体に就いてその保証人に異動内容を通知している企業など皆無でしょう。元々、保証対象の「身元」の定義も明確とは言えない保証書に、(入社後、数年を除き)何時までも、依存するようなことは百害あって一利なしの感ありですが、如何でしょうか。
▼因みに、2017年5月に成立した「民法の一部を改正する法律」が20年4月1日から施行されました。この改正では,保証について新しいルールが導入されています。このパンフレットでは,法務省が保証に関する新しいルールについてそのポイントを説明しています。
参考サイト ☞ https://www.moj.go.jp/content/001254262.pdf
投稿日:2022/03/07 20:16 ID:QA-0113064
相談者より
この度はさっそくご回答をいただきありがとうございました。本来の目的、運用の負荷、効力などを勘案して引き続き検討してまいります。一度定めるとなかなかアップデートしづらい項目であることを再認識いたしました。
投稿日:2022/03/10 10:09 ID:QA-0113140大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、具体的な割合数値までは存じ上げませんが、「身元保証人」「身元保証書」に関しましては、殆どの会社で形骸化しているのが現状と思われます。
つまり、こうした保証人の指定及び保証書の提出をされましても、実際に届出される保証人の殆どは親ですし、当人が成年になった時点で保証の意義は概ね失せてしまいます。
加えまして、仮に当人に代わって損害賠償の請求をされるような事案が生じたとしましても、保証人の高齢化等による資力の関係で実効性を伴わない可能性が高くなるものといえます。
従いまして、一般的な身元保証人制度につきましては御社で特別な事情でもない限り廃止も含めた方向性で検討されるのが妥当といえるでしょう。
投稿日:2022/03/07 22:26 ID:QA-0113065
相談者より
さっそくご回答をいただきありがとうございました。現状も形骸化に近い運用となっていることもあり、今後の運用も含めた見直しが必要だと感じました。大変参考になりました。
投稿日:2022/03/10 10:11 ID:QA-0113141大変参考になった
人事会員からの回答
- オフィスみらいさん
- 大阪府/その他業種
2020年4月1日民法改正後の企業の状況については詳細はわかりかねますが、改正点としましては、身元保証書には損害賠償にあたっての極度額(限度額)の記載が義務化され、あらかじめ賠償額の上限を決めたうえで、就業規則や身元保証書への記載が義務可された一方で、それ以前のものについては、極度額の記載がなくても無効とはなりませんが、法で定められた期間を更新していない場合に限って無効になるということになったものです。
極度額の記載が必要になった以上、まずは支払い能力があるか否かがポイントになり、額によっては敬遠される可能性は多いにあり、あげくは保証人になってくれる人が現れず、優秀な人材を採用したにもかかわらず、結局のところ、提出書類の不備で採用を取り消さざるを得なくなったといった事態に発展すれば双方にとって不幸でしかなく、身元保証書自体の提出を求めないといった選択肢もあって然るべきでしょう。
投稿日:2022/03/08 09:14 ID:QA-0113073
相談者より
ご回答を頂戴しありがとうございました。
法改正に合わせた杓子定規な運用がもたらす弊害があるかもしれない、という別の観点からのアドバイスが大変参考になりました。
投稿日:2022/03/10 10:13 ID:QA-0113146大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
対応
統計などの有無は不明ですが、無限責任に近い重い責任は無効になるなど保証制度自体があまり意味がないため、廃止や形式的に行っているのが主流でしょう。
ダイバーシティなどさまざまなライフスタイルや家庭像が認められる中、従来のような固定的家族関係などに基づく制度をよしとするか、時代との整合を取るかなどは貴社の経営方針です。
投稿日:2022/03/08 10:38 ID:QA-0113077
相談者より
この度はご回答をいただきありがとうございました。慣例のように記載されている規程の項目であったため、今回の見直しを機に方針を含めて社内で認識を合わせられるようにしたいと思いました。
投稿日:2022/03/10 10:16 ID:QA-0113147大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
身元保証書が民法改正後、大幅に減ったというデータはないようです。
SNSによる損害賠償なども考えられますし、
損害賠償以外でも抑止効果、文字踊り身元保証といったことで、
会社を守るため、より重視している会社もあります。
一方、民法改正前から、規定には書いてあるけど、
もらってないといった会社もあります。
法的義務はありませんので、会社でご判断ください。
投稿日:2022/03/08 10:43 ID:QA-0113078
相談者より
ご回答くださいましてありがとうございました。業種や業態、企業方針ごとに重視するポイントが違うため、この規定に限らず自社内での方針を先に固める必要がありそうだと感じました。ありがとうございました。
投稿日:2022/03/10 10:18 ID:QA-0113148大変参考になった
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
問題が解決していない方はこちら
お気軽にご利用ください。
社労士などの専門家がお答えします。