10年後を見据え、既存の枠組みを超える
丸紅が取り組む
「人材」×「仕掛け」×「時間」の施策
丸紅株式会社 人事部 部長
鹿島浩二さん
「仕掛け」の取り組み:グループ内の300事業を見える化 事業を掛け合わせてアイデアを生む
続いて、「仕掛け」の取り組みについてお聞かせください。
最も特徴的なのは「ビジネスモデルキャンバス」というシステムです。丸紅グループの貴重な資産ともいえる約300のビジネスモデルを分解・整理し、社員なら誰でもイントラネットから簡単にアクセスできるようにしました。統一されたフレームワークによってそれぞれのビジネスモデルをデータベース化し、「見える化」したわけです。
弊社には多彩なビジネスモデルがありますが、違う本部、違う部署からは何をやっているのかがわかりづらいという課題がありました。どのような顧客・取引先を相手にどういった収益モデルで事業を行っているのかといった情報には、新たな事業へのさまざまなヒントが埋まっています。それらをワンクリックで参照できるようにしたことで、本部同士が枠を超えて新しい価値を生み出すきっかけにしてほしいと考えています。
現代社会の課題は複雑で、単一のビジネスモデルでは解決できないことも多くなっていますので、ビジネスモデルを掛けあわせるための「材料」が同じ社内にあることは、大きな強みだと考えています。ビジネスモデルキャンバスは、この強みを生かし、イノベーションに結びつけていくための仕組みです。
次に、アイディアを拾い上げていくための仕掛けとして打ち出したのが「アイディアボックス」と「ビジネスプランコンテスト」です。「アイディアボックス」はビジネスアイディアや業務改善案などをグループ社員が自由に投稿できる場で、これもイントラネット内にあります。出てきた案は、デジタル・イノベーション部が取りまとめて社内関係部署等につなぎます。
比較的カジュアルな「アイディアボックス」に対して、「ビジネスプランコンテスト」は実際に事業化できそうなアイディアをもとに、自分で挑戦してみたい人を対象としたオープンコンテストです。第一回には160件以上のエントリーがありました。評価は社内だけでなく、外部のベンチャーキャピタルや起業家の方なども交えて行っています。現在、最終選考に12案が残っており、優秀なプランには会社が資金・人員を提供してスタートアップさせる予定です。
また、こうしたイノベーティブなことを考えるヒントを、会社からも提供していこうというのが「イノベーションセッション」や「イノベーションサロン」です。いずれもスタートアップや新ビジネスに強い企業などから講師を招いて、新規事業の発想法や立ち上げ方を学んでもらう研修、ワークショップを行っています。これも自発的な希望者に参加、受講してもらう形になります。
ビジネスモデルキャンバス | 丸紅グループの約300のビジネスモデルを分解・整理し、イントラネットで公開。 |
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アイディアボックス | ビジネスアイディアや業務改善案などを自由に投稿できるサイトを開設。 |
ビジネスプランコンテスト | 事業化できそうなアイディアを募るオープンコンテスト。 |
イノベーションセッション/イノベーションサロン | スタートアップや新ビジネスに強い企業などから講師を招いて、新規事業の発想法や立ち上げ方を学んでもらう研修・ワークショップ |
「時間」の取り組み:就業時間の15%を、新規ビジネス創出にあてる
最後の「時間」ですが、これはどういった取り組みでしょうか。
時間に関する取り組みの代表的なものが、「15%ルール」です。これは、社員個人の意思により、就業時間のおよそ15%を新規ビジネスの創出などに向けた活動にあてられる制度。誤解してほしくないのは、労働時間を増やして新規ビジネスのための業務にあたらせるものではない、ということです。活動時間をつくるためにも、全社的に業務や会議を効率化する、業務改善プロジェクトを進めています。これまで100%の時間をかけていた仕事を85%の時間で終え、捻出した時間をイノベーティブな仕事にあてて欲しいと考えているのです。
制度の利用は義務ではなく、自分の時間をどう使うかはあくまでも個人の意思にゆだねています。利用する場合には、上司の承認などは特に必要ありません。「やります」という報告をするだけで大丈夫です。
15%ルール | 社員個人の意思により、就業時間のおよそ15%を新規ビジネスの創出などに向けた活動にあてられる制度。 |
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業務改善プロジェクト | 資料作成・会議の削減など、社内業務の全面的見直しを行う。 |